本書は、一九四八から六三年までの国際司法裁判所の判決と勧告的意見を取り上げた『国際司法裁判所判決と意見』第一巻、一九六四から九三年の判決・意見を収録した『同』第二巻の後を受けて、一九九四から二〇〇四年までの同裁判所の判決および意見を要約し、それに解説を加えたものである。
高齢化が進み、定年退職をする者が出てきたので、メンバーの肩書と研究会の会場は変わったが、判決および意見に対する本研究会のアプローチの方法は不変なので、本書に関する三つの注意点は、第一・第二巻の「はしがき」に書いた文を、ほとんどそのまま再録することにする。
(一)本書は、判決および勧告的意見の本文の紹介に主眼を置き、反対意見や分離(個別)意見は、必要に応じて「三研究」の中で言及するにとどめた。これは、頁数に制約があるという理由にもよるが、それ以上に、「横田博士の基本姿勢(『国際判例研究I』はしがき)を踏襲しよう」という意識によるところが大きい。
(二)しかし、判決および意見の紹介も、かならずしも、「本文」の「忠実な翻訳」に徹しているわけではない。本文のあちらこちらで触れられている「事実」は「一事実」にまとめてあるし、できるだけ分かりやすくするために、思い切って削除したり、順序を入れ換えたりしてある。
(三)本書の主たる狙いは、判決および意見を「批判」することにあるのではなく、「紹介」することにある。もちろん、「三研究」の中には、判決および意見に対して疑念を表明し、問題を提起している部分もあるが、それは、あくまでも、判決と意見の「客観的な位置づけ」を、読者により良く「理解」してもらうためにほかならない。その点にも、横田博士の基本姿勢(同前)が受け継がれている。
メンバーの地位の変化にともなう多くの困難にもかかわらず、本研究会が、これまで研究を続行してこられたのは、メンバー全員の努力と協力の賜物であることは言うまでもないが、中でも、会場の手配をしてくれた森喜憲、資料を配付し記録をとってくれた山村恒雄、そして、波多野が長期療養を余儀なくされた期間、運営に当たってくれた横田洋三の三氏に負うところが大きい。
また、本書の出版を、快く引き受けてくださっただけでなく、陰になり日向になりして後押しをしてくださった、国際書院の代表取締役である石井彰氏には、心からの謝意を表したい。
なお、本書は、日本学術振興会の平成一八年度科学研究費補助金「研究成果公開促進費」を受けて刊行されたことを、付記しておく。
二〇〇七年一月二八日
国際判例研究会のメンバー一同に代わって
波多野里望
廣部和也
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