日本・中国からみた朝鮮半島問題

宇野重昭・別枝行夫・福原裕二 編

課題を歴史的・世界的視野からとらえ、軍事的視点より政治的視点を重視し、理念的方向を内在させるよう努めた本書は、大胆な問題提起をおこなっており、今後の朝鮮半島問題解決へ向けて重要なシグナルを送る。 (2007.3)

定価 (本体3,200円 + 税)

ISBN978-4-87791-169-0 C1031 302頁

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目次

著者紹介

宇野重昭 (うの・しげあき)
島根県立大学総合政策学部教授、同大学学長。専門は、東アジア国際関係史、国際関係論、北東アジア地域研究。社会学博士 (東京大学)。主要著書として、『北東アジア地域研究序説』 (国際書院、2000年)、『深まる侵略 屈折する抵抗 1930-40年代の日・中のはざま』 (研文出版、2001年)、『北東アジア研究と開発研究』 (国際書院、2002年)、『北東アジアにおける中国と日本』 (国際書院、2002年)、『中国における共同体の再編と内発的自治の試み 江蘇省における実地調査から』 (国際書院、2005年) などがある。
沈丁立 (Shen Dingli)
中国復旦大学国際関係教授、国際問題研究院常務副委員長、アメリカ研究センター副センター長。理学博士 (復旦大学)。1997年にEisenhower Fellowshipを得る。2002年国連事務総長アナンの第二任期戦略計画顧問を担当。主要著書として、共編 『現実主義とアメリカ外交政策』 等計六冊の文集。Nucler Deterrence in the 21st Century (China Security, 2005)、Iran's Nuclear Ambition Tests Bejing's Wisdom (Washington Quarterly, 2006) などがある。
郭定平 (Guo Dingping)
中国復旦大学国際関係、公共事務学院教授、日本研究センター副センター長。法学博士 (復旦大学、東京大学)。主要著書として、『多元政治』 (香港三聯書店、1994年)、『政党と政府』 (浙江人民出版社、1998年)、『韓国政治転換研究』 (中国社会科学出版社、2000年)、『上海の統治と民主』 (重慶出版社、2005年) などがあり、学術論文は 「戦後日本外交政策決定過程における政党の地位と役割」 など、数10編にのぼる。
福原裕二 (ふくはら・ゆうじ)
島根県立大学助手 (現在は、島根県立大学総合政策学部助教授、北東アジア地域研究センター長補佐)。専門は、東アジア国際関係史、朝鮮半島の政治・外交。博士 (学術) [広島大学]。主要著書として、『東北亜地域人権体制構成推進』 (韓国統一研究院、2005年)、「北東アジアの中の北朝鮮」 (宇野重昭編 『北東アジア学創成に向けてII』 2005年)、「日韓会談資料目録」 (島根県立大学北東アジア地域研究センター 『北東アジア研究』 第10号、2006年) などがある。
石 源華 (Shi Yuanhua)
中国復旦大学国際問題研究院教授 (博士指導担当)、韓国朝鮮研究センター長。中国 「中外関係史」 副会長、韓国 「国史編纂委員会」 特別招聘委員等。東京大学、立教大学等で客員教授、・客員研究員を歴任。専門は、中国周辺外交、北東アジア国際関係、朝鮮半島の歴史と現状。主要著書として、『冷戦後の朝鮮半島問題』、『緩和と合作:東北亜国際関係30年』、『中華民国外交史』、『韓国反日独立運動史論』、『陳公博伝記』 などがある。
秋月 望 (あきづき・のぞみ)
明治学院大学国際学部長。専門は、朝鮮近現代史 (韓・中・日関係史)。主要著書として、『韓国百科』 (大修館書店、第二版2002年)、「朝清境界問題にみられる朝鮮の 『領域観』 『勘界会議』 後から日露戦争期まで」 (『朝鮮史研究会論文集』 第40集、2002年)、「日本文化の韓国への開放がもたらすもの」 (王清一編 『在日コリアン文化と日本の国際化』 新幹社、2005年) などがある。
添谷芳秀 (そえや・よしひで)
慶應義塾大学法学部教授。国際政治学博士 (ミシガン大学)。専門は、東アジア国際政治、日本外交論。主要著書として、『日本の 「ミドルパワー」 外交』 (筑摩書房、2005年)、『日本の東アジア構想』 (慶應義塾大学出版会、2004年)、Japan's Economic Diplomacy with China,1945–1978 (Oxford: Oxford University Press, 1998)、『日本外交と中国 1945-1972』 (慶應義塾大学出版会、1995年) などがある。
今岡日出紀 (いまおか・ひでき)
島根県立大学総合政策学部教授、同大学総合政策学部長 (現在は、同大学副学長)。専門は、開発経済学、アジアの経済発展。主要著書として、『海洋資源開発とオーシャン・ガバナンス 日本海隣接海域における環境』 (国際書院、2004年)、『援助の評価と効果的実施』 (アジア経済研究所、1998年)、Models of The Malaysian Economy, A Survey (Malaysian Institute of Economic Research K. L., 1990) などがある。
別枝行夫 (べっし・ゆきお)

島根県立大学総合政策学部教授、北東アジア地域研究センター長。専門は、日本政治外交史、日中関係史、政治過程論。主要著書として、『北東アジアにおける中国と日本』 (宇野重昭編、国際書院、2002年)、『アジアの中の日本と中国 友好と摩擦の現代史』 (山川出版社、1995年)、『20世紀の中国 政治変動と国際契機』 (東京大学出版会、1994年)、「日本の歴史認識と東アジア外交 教科書問題の政治過程」 (島根県立大学北東アジア地域研究センター 『北東アジア研究』 第3号、2002年) などがある。

【訳者・付録作成者紹介】

三品秀憲 (みしな・ひでのり)
学術振興会特別研究員。第1章を担当。
福士由紀 (ふくし・ゆき)
一橋大学大学院博士課程。第3章を担当。
坂部晶子 (さかべ・しょうこ)
島根県立大学総合政策学部助手。第1部質疑応答、第2部質疑応答、補論(1)を担当。
野中健一 (のなか・けんいち)
島根県立大学北東アジア地域研究センター助手。付録を担当。

まえがき

はしがき――シンポジウムとその成果出版について

島根県立大学長 宇野重昭

書店で面白そうなタイトルの本を手にして「○○シンポジウムの成果」といったような文字を目にすると、“ああまたか”と元のところに戻してしまうことが多い。というのは、そこには研究書としては密度の低い、その時々の時事解説的な講演記録が、ばらばらに並べられているのではないかという先入観があるからであろう。

そこでわれわれは、当初から朝鮮問題に関し独特のテキストとなるような出版物を目指した。同時に巻末には基本的な年表・関連資料を思い切って多く収録した。これが、この島根県立大学と中国復旦大学合同シンポジウム (2006年1月) の記録である。

そして事前の学術的打ち合わせと交流の機会に、焦点を絞って、繰り返し意見交換を行った。このため、北朝鮮の核問題の権威である沈丁立教授は、アメリカを訪問する際、途中わざわざ東京から島根に回られ、北朝鮮の核開発に対する科学的分析を提示された。また、復旦大学の朝鮮問題研究の責任者である石源華教授は長期間島根県立大学に滞在され、貴重な学術的問題を提起された。他方、島根県立大学側の研究者も、復旦大学をたびたび訪問して意見を交換した。こうした交流のなかで、今回のシンポジウムは、時間をかけて準備されたものである。

本書の特徴としては、三点だけを挙げたい。第一は、日中双方の研究者とも、現時点における北朝鮮問題に強い関心を持ちながら、可能なかぎり歴史的に長期的な視点から朝鮮問題を考えようとしていることである。また、第二は、世界的視野から、とくに国際政治的視点から、朝鮮半島問題のあり方を、幅広くとらえようとしていることである。そして、第三に、沈教授が主張されたことであるが、広い意味における戦略的視点から問題点を把握しようとしていることである。この場合の戦略は、軍事的視点より政治的視点を重視し、同時に理念的方向を内在させるよう努力したものである。

当然われわれは、韓国・北朝鮮の研究者とも、朝鮮半島をめぐる国際関係を論じたいと考えていた。しかし、現在のところ、北朝鮮と日本の関係は、われわれ研究者の期待に反して、友好裡には進んでいない。そこでわれわれは、復旦大学の国際問題研究院の友人たちが持つ朝鮮半島に関する関係・知識に多くを期待した。今後は、われわれ自身の独自の研究分野も開拓していきたいと願っている。

現在、島根県立大学では北東アジア地域研究センターが活動しており、その中で日韓・日朝交流史研究会が朝鮮研究を推進している。そして朝鮮問題で学位を取得した福原裕二助教授が活動の中心となり、今回も本書の編集の大半を担当した。また、本学の弱点を専門家の応援でカバーしたいと願い、秋月望教授、添谷芳秀教授に来学していただいた。今後は島根県立大学自身においても朝鮮問題に関する研究者の層を厚くしていきたいと考えている。

なお、シンポジウムの学術書としての編集の場合には、「開会の挨拶」を省略することがよくあるが、一つにはシンポジウムの背景を知っていただくため、また一つには協力してくださった方々に謝意を表するため、あえて当時おこなわれた内容のままで巻頭に収録した。また、編集に際しては、本書の出版を快く引き受けてくださった国際書院の石井彰社長から貴重なアドバイスをいただいた。記して感謝の意を表したい。

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