本書は、2007年4月11日に東京の国際連合大学で行われた「より良い世界に向かって~国際社会と法の支配~」という表題の講演会およびパネルディスカッションの記録である。
本書はこの催し物の構成に従い、「開会」、「第一部・講演」、「第二部・パネルディスカッション」、の三つの部分から成っている。
開会は、講演に先立つハンス・ファン・ヒンケル国連大学学長および小松一郎外務省国際法局長の開会の辞から成り、二人の話をテープから起こして収録した。
第一部・講演は、ロザリン・ヒギンズ国際司法裁判所所長による「国際司法裁判所(ICJ)と法の支配」 ("The International Court of Justice and the Rule of Law") と題する、講演のために用意された英文のペーパーを訳・編者が日本語に訳した。第二部・パネルディスカッションは、訳・編者が司会をした4人のパネリストによる「国際社会における法の支配と市民生活」と題するパネルディスカッションの記録で、日本語の発言はそのままテープから起こしたもの、英語の発言は同時通訳の日本語からテープ起こししたものである。
テープ起こしの部分は、話し言葉であるため、また、同時通訳を介しての日本語であるため、そのままでは理解できない部分があったので、司会を務め議論の中身をある程度把握している訳・編者の責任で若干手を加え編集した。本来だと各発言者に最終原稿をチェックしてもらう必要があるが、英語の発言者については日本語訳のチェックをしてもらうことがそもそも不可能であり、また議論の流れを考えると、発言者ごとにチェックした場合前後の関係が途切れるおそれもあるため、あえて訳・編者の文責で編集させていただいた。一冊の書物にするためにこのような方式をとったことについて、発言者の方々のご理解とご寛容をお願いしたい。
この講演会とパネルディスカッションは、外務省、国際連合大学、(財)国連大学協力会の三者が主催し、日本経済新聞社が共催し、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会の三者の後援、および日本司法書士会連合会、(社)商事法務研究会、(財)国際民商事法センター、(財)安達峰一郎記念財団の四者の協賛を得て実現したものである。ご協力に対して関係各位に深く感謝申し上げる。
この催しは、とかく専門化しがちな国際法、法の支配、国際司法裁判所といったテーマが、グローバル化が急速に進展する今日の世界において、市民生活にも大いに関係するようになってきたことを踏まえて、一般の人にも関心を持ってもらい、理解を深めてもらうことを目指して企画された。当日の参加者は講演とパネルディスカッションを通して、国際法や国際司法裁判所が身近に感じられたのではないかと想像するが、さらに本書を通して、読者にも国際法や国際司法裁判所が市民の日常生活に深い関わりがあるということを理解し、関心を持っていただければ、まことに幸いである。
なお、本書の出版に当っては、(財)国連大学協力会の森茜事務局長、および(株)国際書院の石井彰社長に大変ご尽力いただいた。心より感謝申し上げる。
2008年2月20日
訳・編者 横田洋三
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