『国連研究』第10号 国連研究の課題と展望

編者 日本国際連合学会

地球的課題に取り組み、国際社会で独自に行動する行為主体としても国連の活動をたどり未来を展望してきた本シリーズの10巻目の本書では、改めて国連に関する「研究」に光を当て学問的発展を期す。 (2009.6)

定価 (本体3,200円+税)

ISBN978-4-87791-195-9 C3032 309頁

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[執筆者紹介]

まえがき

序文

1998年10月22日に設立された日本国際連合学会は、1999年春に第一回研究大会を開催し、翌2000年3月に学会誌『国連研究第1号21世紀における国連システムの役割と展望』を発刊した。以後『国連研究』は毎年発行され、人道的介入、新たな脅威、民主化、持続可能な開発、平和構築など、国連が直面するさまざまな問題について、学会員を中心とした多くの研究者、実務家の論考を掲載してきた。記念すべき第10号となる本号では、これまでの国連研究の成果を総括し、今後の研究課題と展望を明らかにすることにより、より一層の国連研究の進展を目指し、「国連研究の課題と展望」という特集テーマを掲げた。

『国連研究第1号』の序文のなかで明石康理事長(当時)は、それまでの日本における国連研究は「国連が現実の国際政治のなかで果たすダイナミックな役割に十分な学問的洞察を加えない傾向があった」こと、また、戦後の日本外交は国連中心主義をその柱の一つとしてきたものの「それが学問的な成果とは必ずしも有機的な関係を持つことなく時が過ぎてきた」ことを指摘している。そして、本学会を設立した理由として、実務と研究の双方の観点から、総合的な考察を加えることの必要性を挙げ、「『学問的洞察に富み、かつ前向きで現実性のある、日本発の国連研究』を世界に発信していきたい」と述べている。

その後10年が経ち、国連研究の蓄積がなされてきたが、はたして「学問的洞察に富み、かつ前向きで現実性のある、日本発の国連研究」がなされてきただろうか。これが、本号の特集テーマ「国連研究の課題と展望」の基本的な問題認識である。

このテーマを考えるに当たって、問われなければならない二つの問題があるだろう。第1に、そもそも研究対象となる「国連とは何か」という国連の認識の問題である。そして第2に、「国連研究」とは何かという国連へのアプローチの問題である。

国連については、おもに、(1)加盟国の外交交渉の場(フォーラム)としての国連、(2)国際社会において独自に行動する行為主体(アクター)としての国連、(3)地球的課題を設定し、国際的規範を作り出し、加盟国がその規範を遵守するよう監視し、調整する、グローバル・ガバナンスに関与する国連、という三つの認識が存在するだろう。そして、それぞれの認識に基づいて、(1)と(3)では総会や安保理が、(2)では援助活動をおこなっている国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連開発計画(UNDP)などの国連機関が、具体的な研究対象となり、それらを研究することが「国連研究」と考えられてきた。また、(1)や(2)ではおもに国際政治学的なアプローチが、(3)ではおもに国際法学からのアプローチが取られてきたといえるであろう。

香西茂教授が「国際機構」学を、国際法学でもなく、国際政治学でもない、両者を併せ持つ第三の学問分野と考えたように、「国連研究」は、国際法学でもなく、国際政治学でもない、両者を併せ持つ研究でなければならないだろうし、日々(1)–(3)の機能を遂行しつつある国連の実態を動的に、複眼的に捉える学問でなければならないであろう。それが、明石教授が指摘する「国連のダイナミックな役割に学問的洞察を加える」ということであろう。

さて、これまでの『国連研究』9冊に掲載された論考のテーマを概観してみると、国連事務局、市民社会、持続可能な開発などの特集テーマ関連の論文を除くと、多くが安全保障問題関連の論考である。これは、国際の平和と安全の維持が国連の主要な目的であり、安全保障理事会が国連のなかでも最も重要な機関である、という事実に基づく当然の帰結ではあるだろう。しかし、国連の予算および人的資源規模では、経済社会問題に対する国連の取り組みも決して劣るものではないので、これらの分野における国連の活動に関する研究がもっとおこなわれても良いのではないかと思われる。

また、国連が取り組む問題の三本柱である安全保障、人権、開発は、相互に関連し、包括的な取り組みが必要とされているが、これらの問題を包括的に考察する研究はまだ十分ではないだろう。本学会の研究大会においても、これら三つの問題が別々のセッションにおいて議論されてきており、たとえば安全保障のセッションにおいて、開発問題の専門家が安全保障問題の専門家と意見を交わし、両者の立場から安全保障と開発との関連を包括的に検討するような取り組みは、まだあまり見られない。また、人間の安全保障、保護する責任、平和構築など、新たな概念、理念を国連は唱導してきたが、そのような新たな概念の明確化や、それが必要とされてきている国際社会の現状を学問的に分析することも十分とはいえないのではないだろうか。このように、国際社会の変容とそれに対応する国連の活動の変容の速度に、国連研究の深化の速度が追いついていないように感じられるのである。

さらには、アメリカに次いで2番目に国連に対して財政的貢献をおこなっている日本として、グローバル・ガバナンスに関与する国連がどのような存在であるべきか、どのような政策を取るべきかについて、主体的に政策提言をおこなうだけの「日本発の国連研究」はまだ十分におこなわれていないと思われる。

本号では、日本における国連研究を先導してきた香西茂教授、功刀達朗教授、横田洋三教授、佐藤哲夫教授、星野俊也教授の特集テーマに関する論考と、個別のテーマに関する5本の論考が掲載されている。本号が、日本における国連研究の深化の一助となることを期待している。

編集主任 秋月弘子

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