jfUNUレクチャーシリーズ 4 グローバル化した保健と医療 アジアの発展と疾病の変化

加来恒壽 編

地球規模で解決が求められている緊急課題である保健・医療の問題を実践的な視点から、地域における人々の生活と疾病・保健の現状に焦点を当て、社会的な問題にも光を当てる。 (2011.11.1)

定価 (本体1,400円 + 税)

ISBN978-4-87791-222-2 C3032 176頁

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目次

著者紹介

〈執筆者紹介〉

有川節夫
九州大学理学部卒業。同大学院理化学研究科数学専攻修士課程を修了。九州大学理学部附属基礎情報学研究施設教授、同研究施設長、九州大学大型計算機センター長、九州大学大学院システム情報科学研究科教授、九州大学評議員、九州大学附属図書館長、九州大学理事・副学長等を歴任し、2008年、九州大学総長に就任。
研究ならびに大学運営のかたわら、人口知能学会、情報処理学会をはじめとしたさまざまな学協会の役員を務めるとともに、文部科学省・科学技術・学術審議会委員等も務める。
受賞歴: 丹羽賞学術賞(日本学術センター)、人口知能学会業績賞、 Paper with Merit Award(PAKDD 2000)、電子情報通信学会 DEWS2002優秀論文賞、他、多数。
著書: PL/I入門(朝倉書店、1971)、オートマトンと計算可能性宮野悟共著(培風館、1986)、述語論理と論理プログラミング原口誠共著(オーム社、1988)
武内和彦
東京大学理学部卒業。同大学院農学系研究科修士課程修了。東京大学農学部助教授、同アジア生物資源環境研究センター教授などを経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻緑地創成学分野教授。東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)副気候長、国際連合大学副学長を併任。2009年1月から国連大学に新たに設立されたサステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)の所長を務める。
専門分野: 緑地環境学、ランドスケープエコロジー、サステイナビリティ学
受賞歴: 日本都市計画学会賞石川賞、農村計画学会賞、日本造園学会賞
水田祥代
九州大学医学部卒業。九州大学助教授・教授を経て、2004年、九州大学病院長、2008年、九州大学理事・副学長。学外においては、日本小児外科学会、日本外科学会、太平洋小児外科学会、アジア小児外科学会、日本小児がん学会、日本外科・代謝栄養学会、日本周産期・新生児学会等の会長、理事長を歴任。2010年、九州大学退職後、現在は学校法人福岡学園・福岡歯科大学常務理事。
専門分野: 環境生理学(含、体力医学・栄養生理学)、胎児・新生児医学、小児外科学
受賞歴: 大学勤務医福岡県医師会長賞、他
著書: 『輸液療法』(新外科学体系30A、小児外科I)、高カロリー輸液に伴う肝・胆道障害(へるす出版)、肥厚性幽門;狭窄症(小児の消化器疾患)
加来恒壽
九州大学医学部卒業。九州大学大学院博士課程(産婦人科学)を修了。九州大学助手・講師、ならびに九州大学医療技術短期大学部助教授・教授を経て、2002年より九州大学医学部保健学科教授。専門分野の研究以外にも、日本臨床検査医学会、日本婦人科腫瘍学会、他、多数の学会の理事・評議員を歴任するとともに、日本予防医学リスクマネージメント学会、日本臨床細胞学会大会、日本婦人科腫瘍学会、他、多くの学会・研究会・大会の座長・委員長を務め、さらには、学会誌・雑誌・著書の編集委員にも携わっている。
専門分野: 人体病理学、産婦人科学、婦人科主要学、臨床看護学
著書: 『卵巣腫瘍の手術、良性腫瘍』(新女性医学大系43婦人科腫瘍の手術療法/中山書店)、『臨床エビデンス婦人科学(組織診(コルポスコピーを含む))』〈分担執筆〉(メヂカルビュー社)『エクセルナース、検査編』〈分担執筆〉(メヂカルビュー社)、『子宮体部腫瘍改訂第2版婦人科腫瘍の臨床病理』〈共著〉(メヂカルビュー社)、『子宮腫瘍病理アトラス』〈分担執筆〉(文光堂)
尾身茂
自治医科大学卒業。世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局にて感染症対策部長、等を務める。在任中、ポリオ根絶事業を指揮し、 WHO目標の2000年より3年も早く達成するという功績を持つ。その後、第5代 WHO西太平洋地域事務局長を歴任し、現在は、自治医科大学地域医療学センターにおける公衆衛生学教授、 WHO執行理事、ならびに、政府新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長を兼務。
専門分野: 公衆衛生学、地域医療、感染症、国際保健
受賞歴: ベトナム名誉国民賞、第37回小島三郎記念文化賞、2004年慶応義塾大学特選塾員、ラオス人民民主共和国・国民栄誉賞、Polio Eradication Champion(小児麻痺根絶チャンピオン)賞。
著書: Omi.S. Polio Eradication: Western Pacific Region(WHO2000)、 Omi. S. SARS: How a global epidemic was stopped(WHO2006)『SARSいかに世界的流行を止められたか』(財団法人結核予防会)、『パンデミック(H1N1) 2009 ―わが国の対策の総括と今後の課題―』公衆衛生 Vol.74(8)医学書院
モハメド・サレー・モハメド・ヤシン
1980年ケバングサーン・マレイシア大学(Universiti Kebangsaan Malaysia; UKM)医学部の医療細菌学および免疫学科の講師としてキャリアをスタート。カンジダ症、スペルジルス症、クリプトココシスなどのさまざまな細菌疾病に関わる実験診断装備の製作にも携わる。
また、同大学(UKM)の医療細菌学科ならびに免疫学科の学科長(1985年)、および、同医学部の大学運営担当副学部長(1990年)の任務をはじめとした数々の管理責務を経験。さらに、マレーシアにバイオ・メディカル・サイエンス関連の教育課程を創設したいという彼の願いが叶い、マレーシアで最初の保健関連科学学部(Faculty of Allied Health Sciences(FAHS))の創設を実現する。1992年には、医療細菌学の教授に任命され、保健関連科学学部(FAHS)の創設者となる(1992年~1995年)。その後、開発業務担当の副学長代理(1995年~2000年)に任命され、2000年9月に学生事務担当の副学長代理を辞任した。また、同大学のトップ・マネジメント時代に培った多くの経験をもって、2003年5月~2006年8月の間、同大学(UKM)の副学長を務める。その時、彼は、 UKMの『国際的な広がりをもった国立大学』というモットーに相応しく、同大学の人々に、 RIQ(Research, Internationalization, and Quality/研究・国際化・質の良さ)というスローガンを掲げて課題に取り組むことを奨励した。
現在は、2007年3月1日に創設され、マレーシアのクアラルンプールに拠点を置く『国連大学グローバル保健国際研究所』の研究所長(創設ディレクター)として勤務している。この研究所は、人間の健康に関する重要課題の研究、人材の育成、そして、知識の普及を活動目標としている。
受賞: 教育の発展ならびに社会に対する貢献に対して、 Dato s Setia Negeri Sembilan (DSNS)賞、ならびに、 Panglima Setia Mahkota(PSM)賞を受賞。
永淵正法
九州大学医学部卒業。九州大学大学院医学研究科修了後、米国 NIH留学。唐津赤十字病院内科副部長、福岡逓信病院内科医長、九州大学医療技術部短期大学部教授、九州大学医学部教授を経て、現在、九州大学大学院医学研究院保健大学部門検査技術科学分野・病態情報学講座教授。また、日本糖尿病学会評議員、日本臨床ウイルス学会常任幹事、日本感染症学会西日本地方会理事を併任。長年、ウィルス、免疫、糖尿病というテーマで研究を続けている。
専門分野: 感染症、糖尿病
受賞歴: 第1回日本感染症学会北里柴三郎記念学術奨励賞(2002年)
著書: 『糖尿病治療ハンドブック』(編集代表。2010年/医学出版)
林純
東邦大学医学部卒業。九州大学医学部第1内科、北九州市立門司病院、福岡逓信病院を経て、九州大学病院の総合医療部立ち上げに参加。現在、九州大学大学院医学研究院臨床医学部門感染環境医学部教授、および九州大学病院環境医学分野および総合診療科教授。九州大学病院病院長補佐、臨床教育研修センター長、感染制御部部長を兼務。研究のみならず、臨床と教育にも尽力。
専門分野: 肝炎ウイルス、 HILV-1、感染症と動脈硬化、 AIDS、レトロウイルス、インフルエンザ、持続感染と生活習慣病の疫学的/臨床的研究、院内感染
著書: 主要原著論文『A Comparison of the Original and Generic Drugs』(General Medicine)、他
樗木晶子
九州大学医学部卒業。九州大学大学院医学研究科博士課程、米国メイヨ・クリニック訪問研究員を経て、九州大学医学部付属病院循環器内科の助手・講師を経て、九州大学大学院医学研究院保健学部門教授。九州大学総長特別補佐、男女共同参画共同室長を兼務。
専門分野: 循環器内科学、循環生理学、臨床看護学
著書: 『甲状腺機能亢進症における心房細動の治療』他、主要原著論文多数
平田伸子
九州大学医療技術短期大学部看護学科卒業。さらに、大阪赤十字助産婦学校卒業し、大阪赤十字病院に勤務。その後、福岡県立看護専門学校助産学科長、九州大学医療技術短期大学部助教授を経て、九州大学医学部保健学科教授。現在、九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学部教授。その他、学外において、県や市などの男女共同参画に関する多くの委員を兼務。
専門分野: 助産学、ウイメンズ・ヘルス
受賞歴: 福岡県知事賞、日本助産師会会長賞、福岡県看護協会長賞、等、多数。
喜多悦子
奈良県立医科大学医学部卒業。奈良医大在職中に JICA(現国際協力機構)専門家として北京の中日友好病院で臨床検査、小児科の指導にあたる。後厚生労働省現国立国際医療研究センターへ移籍後、1988年、日本初の紛争地への人材派遣としてパキスタンのペシャワールへ。ユニセフスタッフとしてアフガン難民への保健医療支援をおこなう。1997年からは WHO本部に勤務し、アフガニスタン、コソボ、ルワンダ等、紛争国の保健医療政策の策定と実施に関与する。
2001年、日本赤十字九州国際看護大学教授、及び早稲田大学大学院アジア太平洋研究センター客員教授。2005年より現職の日本赤十字九州国際看護大学学長に就任。国際舞台で活躍する看護師などの人材育成に力を注いでいる。
専門分野: 国際保健、紛争医学
受賞歴: エイボン女性大賞、国際ソロプチミスト千嘉代子大賞、第36回医療功労賞、他。
著書: 『開発と健康 ―ジェンダーの視点から』(共著/有斐閣選書)

まえがき

編者はしがき

本書は、2010年7月29日に九州大学医学部百年講堂で開催された「グローバル化した保健と医療――アジアの発展と疾病の変化」というシンポジウムの記録です。

保健医療問題が国境を越えて拡がり、発展途上国か先進国かを問わず、一地域の人々の健康・医療・公衆衛生の問題が瞬く間に地球規模の問題へと拡大され、これらの問題について、地球規模の連携と協力なしに解決することはできない時代となりました。このような保健・医療・公衆衛生の問題は、近年、国際保健(グローバル・ヘルス)と称され、緊急に解決すべき人類共通の課題として、国連のミレニアム開発目標にも取り上げられています。国連ミレニアム開発目標は8つの目標を掲げていますが、そのうち、「乳幼児死亡率の削減」、「妊産婦の健康改善」、「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止」と、3つの目標が保健医療問題そのものです。これに、「極度の貧困と飢餓の撲滅」、「ジェンダー平等と女性の地位向上」等、健康と切っても切れない目標を入れると、なんと、8つの目標中5つが保健医療問題です。すなわち、保健・医療の問題が、一国内、一地域内の問題にとどまらず、地球規模で解決が求められている緊急課題であることを如実に示している証です。

本書は、第1部「基調講演」、第2部「ショートスピーチ」、および第3部「パネルディスカッション」で構成されています。

国連大学の国際グローバル保健研究所(UNU-IIGH)は、このような状況のなか、2006年に国連大学とマレーシア政府との協定によって設立された研究所で、人類の健康問題に関する研究や能力開発、知識の普及を使命としています。とくに、開発途上国の人々を対象とする保健サービス政策の枠組みおよび管理活動の開発とその強化、疾病の予防と健康増進への支援に取り組んでいます。

本シンポジウムでは、この研究所の初代所長であるモハメド・サレー・モハメド・ヤシン博士を基調講演者の一人に迎えました。ヤシン氏は、マレーシア大学で副学長を務められた方ですが、微生物学・免疫学の研究者でもあり、豊富なデータに基づいて、持続可能な健康のための取り組み、特に、アジア太平洋地域における取り組みのシナリオと挑戦について紹介しています。講演のなかで、ヤシン氏は、このような取り組みにもかかわらず、増大する脆弱性に触れ、この問題の深刻さに警鐘を鳴らしています。

もう一人の基調講演者は、自治医科大学教授・世界保健機関(WHO)執行理事の尾身茂博士です。尾身氏は、慶応大学法学部卒業後に医学を修められた方で、地域医療に根ざした感染症対策の実践家としても著名です。1991年に WHOの西太平洋地域事務局(Western Pacific Regional Office)に入り、1991年から2009年まで WHO-WPROの事務局長を勤められました。ポリオ(急性灰白髄炎)撲滅を WHO目標である2000年より早く、西太平洋地域で達成したことは高く評価されています。本シンポジウムにおいても、実践的な観点から、地域における人々の生活と疾病や保健の現状に焦点を当て、グローバル・ヘルスを取り巻く社会的な問題にも視点を当てています。

さて、ここ九州の地は、2000年の九州・沖縄G8サミットにおいてグローバル・ヘルスがアジェンダとして取り挙げられたことを契機に、この問題への人々の関心も高まり、また、日本列島のなかで最もアジアに近いということもあり、アジア地域との連携と関係のなかで感染症や保健の問題へ取り組む機運が生まれつつあります。

本書の第2部「ショートスピーチ」においては、そのような観点から、九州大学の研究者と地元の看護大学の実践家から「感染予防 ――ワクチン戦略に関する提言」「B型肝炎から見たアジアとのつながり」「循環器病の予防 ――生活習慣病を中心に」「ジェンダーの視点から見た性感染症」「先進国型医療から途上国のプライマリー・ヘルスケアへ」等、特色あるスピーチが展開されています。

本書が、グローバル・ヘルスについて、医療関係者に限らず、多様な研究者、行政、 NPO、一般市民のいずれの立場の方々にも分かりやすい話題を提供し、この問題について再考の機会となることを願っています。

なお、第1部のモハメド・ヤシン氏の基調講演は英語でなされたものであり、その翻訳は、小川尚子さん(国連大学協力会職員)が担当し、翻訳の校閲は私がおこないました。

また、本書の出版に当たっては、(公財)国連大学協力会の森茜事務局長、および(株)国際書院の石井彰社長に大変ご尽力をいただきました。心より、感謝申しあげます。

編者 加来恒壽

索引

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