東アジアにおける公法の過去、現在、そして未来

高橋滋, 只野雅人 編

グローバル化の世界的潮流のなかで、東アジア諸国における法制度の改革、整備作業の急速な進展を受けて、(1)西洋法の継受の過程、(2)戦後の経済発展のなかでの制度整備、(3)将来の公法学のあり方を模索する。 (2012.3.16)

定価 (本体3,400円 + 税)

ISBN978-4-87791-226-0 C3032 357頁

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目次

著者紹介

執筆者紹介

高橋滋(たかはし・しげる)

一橋大学大学院法学研究科教授

代表著作

只野雅人(ただの・まさひと)

一橋大学大学院法学研究科教授

代表著作

石村修(いしむら・おさむ)

専修大学法務研究科教授

代表著作

尹龍澤(いん・りゅうたく)

創価大学大学院法務研究科教授

代表著作

呉東鎬(ご・とうこう)

中華人民共和国・延辺大学法学院教授

代表著作

阪口正二郎(さかぐち・しょうじろう)

一橋大学大学院法学研究科教授

代表著作

周作彩(しゅう・さくさい)

流通経済大学法学部教授

代表著作

周蒨(しゅう・せい)

一橋大学大学院法学研究科博士課程

代表著作

人見剛(ひとみ・たけし)

立教大学大学院法務研究科教授

代表著作

松平徳仁(まつだいら・とくじん)

帝京大学法学部専任講師

代表著作

山田洋(やまだ・ひろし)

一橋大学大学院法学研究科教授

代表著作

葉陵陵(よう・りょうりょう)

熊本大学大学院社会文化科学研究科教授

代表著作

まえがき

はしがき

グローバル化の世界的潮流のなかで、東アジア諸国における法制度の改革、整備の作業が、急速に進展している。それは、憲法・行政法等の公法学の領域においても例外ではない。そのなかで、東アジア各国の公法学は、西洋諸国のみならず、東アジア地域の他の国の立法・理論の動向に対して、応分の関心を払わざるをえない状況が生じている。

例えば、社会主義国家である中国の憲法学においても、経済の発展、各国との経済・文化面での交流の深化等の影響もあり、「法の支配」や「立憲主義」等の基本価値を共有することの重要性が認識され、西欧諸国のみならず、日本・韓国・台湾の憲法学の動向には、深い関心が払われている。さらに、日本・韓国・台湾・中国の間において、国境を越えた学会・研究会が組織され、欧米の憲法理論の研究についての交流にとどまらず、各国の憲法理論・判例等の相互交流が本格的におこなわれ始めている。このような事情は、行政法も同様であり、日本・韓国・中国・台湾の行政法研究者が参加する東アジア行政法学会が1995年に発足してからすでに20年近くが経過し、各国の行政法制度・理論の交流は着実に進展している。行政に係る法制度の整備は中国においても急速に進展しているし、日本・韓国・台湾において、行政手続、情報公開、行政不服審査・行政訴訟制度等の制定・改革等の際に、西欧諸国のみならず、東アジア諸国の立法例が比較考察の対象とされた例は増えてきている。

さらに、各国の行政法制度においては、グローバル化の影響を受けて、新自由主義的改革が共通して進められ、規制改革や国営企業等の行政サービスの民営化が不可避の課題となりつつも、そのなかで、国民の生命・健康を保障し、ユニバーサル・サービスの水準をいかに確保すべきか等、共通の法的課題に直面している。

以上、述べてきたように、東アジア諸国の公法学が、他国の法制度と理論を参照し合い、学問的交流を深めてきたことには、相応の理由があるのであって、中国をはじめとする東アジア諸国の経済発展と法制度整備の進展に鑑みるならば、この傾向は、今後、さらに強まっていくことが予想される。

もっとも、日本、韓国・中国・台湾の法制度は、それぞれ独自の成立と発展の過程をもち、相互に異なる歴史・経済・文化の基盤の上に成り立っている。そうである以上は、相互理解・交流を表面的なものでなく、本格的なものとするためには、各国における近代的な法制度の導入と発展の過程についての史的分析を欠かすことはできない。そのような比較考察を通じ、自国、すなわち、われわれであれば日本の西洋法継受のあり方の再検討に、新たな視点を設定することも可能となろう。

本書は、このような問題意識から、日本、中国、台湾等の東アジア諸国の公法学について、①近代化における西洋法の継受の過程、②戦後の経済発展のなかでの制度整備、そして、③将来を見据えた公法学のあり方の三つの観点から、日本、韓国、中国、台湾の研究者が分析を加える11篇の論文を収めた論文集である。この論文集に掲載される論文を各人が執筆するに際しては、一橋大学大学院法学研究科に事務局を置き、2008年4月から2011年2月まで延べ11回にわたって研究会を開催し、報告と討論とをおこなう形を採用した。一橋大学の外から、とくに、九州等の遠方より参加され、報告・討論に加わっていただいた先生方に、事務局を代表してここに厚くお礼を申し上げたい。

なお、本研究は、2006年度から5年間にわたって一橋大学大学院法学研究科が実施したアジア研究教育拠点事業「東アジアにおける法の継受と創造東アジア共通法の形成に向けて」(日本学術振興会)の一環として実施されたものである。また、本書の刊行に際しては、一橋大学の学長戦略経費より助成を受けた。本研究会の運営と本書の刊行は、これらの助成なくしてはおこないえなかったものであり、ここに関係者各位に対し、厚くお礼を申し上げる次第である。

本書が、ダイナミックに変動している東アジアにおける公法理論の発展や法制度の改革にささやかながらも貢献することができれば幸いである。

2011年12月

高橋滋

只野雅人

索引

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