九州大学大学院法学研究院・准教授(国際政治学・アジア政治論)
英国エセックス大学政治学部博士課程修了(Ph.D. in Ideology and Discourse Analysis)、神戸大学大学院国際協力研究科・助教、オックスフォード大学セントアントニーズコレッジ・客員研究員、ケンブリッジ大学アジア中東学部・客員研究員
愛知県立大学日本文化学部・准教授(日本近現代史・東アジア地域研究)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(博士(学術))
天理大学国際学部・准教授(比較政治学・現代台湾政治)
神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程修了(博士(政治学))
山口県立大学国際文化学部・准教授(比較政治学・韓国政治・国際関係論・日韓関係) 北韓大学院大学校(韓国)・招聘教授
ソウル大学校社会科学大学政治学科博士課程修了(Ph.D. in Political Science)
中国社会科学院文学研究所・教授
吉林大学卒業、政治学博士(東京都立大学)、一橋大学大学院社会学研究科客員教授。
アダム・ミツキェヴィチ大学東洋学研究科・准教授(政治学・市民社会)
九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、政治学博士(ポーランド科学学士院)
九州大学グリーンアジア国際リーダー教育センター・助教(国際政治学・環境政治)
九州大学大学院法学府博士後期課程単位取得退学、佐賀大学・長崎県立大学・福岡教育大学・福岡国際大学・福岡工業大学、非常勤講師
本書は日本・中国・韓国・台湾等の事例研究を通じて、北東アジアにおける市民社会の展開を検討し、「アジア市民社会」としての投企と紐帯を詳らかにするという問題意識に立脚している。この問題に回答するために、本書では「アジアにおける市民社会(Civil Society in Asia/in Asian countries)」と「アジア市民社会(Asian Civil Society)」という2つの視角からアプローチしている(詳しくは序章を参照)。すなわち、前者はそれぞれの国家の枠内における市民社会形成を問題とした一国研究的な視点であり、後者は国家を越えた東アジアにおけるトランスナショナルな市民社会の相互作用を課題としている。また、「アジアにおける市民社会」とはそこに如何なる「投企」が存在し得るのかという課題でもあり、「アジア市民社会」はアジアという地域の「紐帯」を問題としている。無論、こうした対置は厳密に区分できるものではなく相互に連関し合っているが、原則として本書第I部・第II部は、この2つの問題意識に対応している。
簡単に本書の内容を俯瞰してみよう。本書はII部構成をとっており、第I部では中国・台湾・韓国等の北東アジアの国々の市民社会論をとりあげ、第II部では日本の市民社会論を考察課題としている。第I部は次の4章から成っている。まず第1章(與那覇潤)は東アジアの市民社会論の動向を俯瞰したうえで、中国化をキーワードにしながら「東洋的民主政」の意義と限界を論じている。第2章(松本充豊)は台湾を事例とし、総統選挙に関わるデモクラシーのあり方を検討している。第3章(浅羽祐樹)は韓国の大統領選に着眼し、市民社会と市民の位相を掘り下げている。また補論(孫歌)は、講演を書き起こしたものであるが、中国における市民社会を事例として、中国における公民社会と市民社会の関係を捉えながら、東アジアにおいて市民社会を考えることの鋭い問題提起となっている。
続いて第II部は日本の事例をとりあげた以下の3章から成っている。第4章(ベアタ・ホボロビッチ)は沖縄のジュゴン保護運動を事例とし、とくに日本の市民運動と東アジアの地域市民社会との紐帯を論じている。第5章(渡邉智明)は福岡を中心とした九州地域のNGO活動に着眼し東アジア市民社会への道程を論じている。第6章(大賀哲)は福岡市における国際交流政策を分析対象とし、国際化政策の中で市民社会が如何に位置付けられ、その中で地域(region)や地方(local)といった言説がどのように定位されてきたのかを検討している。すなわち、第I部は「アジアにおける市民社会」とは如何なる「投企」であるのか、それは西洋型市民社会とどのように異なるのかという問題設定であり、第II部はそこから「アジア市民社会」という「紐帯」を考えていく上での、国家と市民社会との関係を分析上の課題としている。
本書の成り立ちについても簡単に触れておこう。本書は2008年度から2010年度にかけて九州大学において開催した「アジア市民社会公開シンポジウム」の研究成果の一部である。当初、シンポジウムは東南アジアを含めた東アジア全域を対象としていたが、2009年度以降は北東アジア――とりわけ日本、中国、韓国、台湾――に対象を絞って、市民社会の比較研究を行なってきた。本書はこのうち、北東アジアの市民社会論に関連する章を所収したものである。尤も、地理的区分としては「北東アジア」を対象としているが、その問題意識は必ずしもそこに止まり得るものではないから、実際に各章の議論は北東アジアの個別事例を出発点としつつも、「東アジア」全体の市民社会形成を念頭に置いている場合もある。
3年度に亘って国内外から第一線の研究者をお招きし大変充実したシンポジウムを行なうことができ、関係各位に深く感謝する次第である。貴重な玉稿をお寄せくださった先生方はもちろんのこと、学内外のゲストの先生方には心より感謝申し上げたい。とくにウクリット・パトマナン(Ukrist Pathmanand)、シャムスル・ハディ(Syamsul Hadi)、アレキサンダー・チャンドラ(Alexander Chandra)、鈴木佑司、田中豊治、三牧聖子、土肥勲嗣、勝間田弘、若畑省二、原清一、石川捷治、韓相煕、施光恒、高木彰彦、大野俊、小川玲子の各先生方にはご多用のところご足労を頂き深謝に堪えない。シンポジウムでは忌憚のない意見交換が行なわれ、それぞれの研究視角を掘り下げていく上で、非常に有意義であった。
また、シンポジウムの開催にあたっては九州大学大学院法学研究院リサーチコア(2008年度~2010年度)、学術振興野村基金(2009年度)、九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト(2010年度)から助成を受けた。関係各位に厚く御礼申し上げる。なお、2011年度中に御入稿いただきながら、編者の怠慢により刊行が遅れてしまったことをこの場を借りて深くお詫びする次第である。本書の刊行に際して国際書院の石井社長には並々ならぬ御尽力を頂いた。記して感謝の意を表したい。
2013年2月
大賀哲
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