jfUNUレクチャー・シリーズ 7 震災復興と生態適応 国連生物多様性の10年とRIO+20に向けて

武内和彦・中静透

三陸復興国立公園の活かし方、生態適応の課題、地域資源経営、海と田んぼからのグリーン復興プロジェクトなど、創造的復興を目指した提言を展開する。(2013.8.1)

定価 (本体2,000円 + 税)

ISBN978-4-87791-248-2 C1036 192頁

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目次

著者紹介

執筆者紹介

トルビョーン・ラーティ
持続可能なスウェーデン協会代表。「領域変更を伴うシステム解のチリにおける実践」プロジェクト・リーダー、Esam AB社の設立者・共同オーナー。
フィンランド国境近くのスウェーデン・エベルトーネオ生まれ。ウメオ大学大学院で経済、行政教育、都市計画を専攻。1990年、環境コンサルティング会社Esam ABを共同設立し、エコビレッジ、都市住宅、廃棄物処理、建築材再利用などのプロジェクトに尽力した。ウメオ大学に加え、スウェーデン農業科学大学で非常勤教授として教鞭を取った。2001年8月には、ロバーツフォシュ市においてユニークなプロジェクト(2020年までに石油使用を止め、2050年までに完全に持続可能な街にすること)に携わった。ロバーツ・フォシュ・プロジェクトは、今ではケニアからチリまで世界中のさまざまな場所に広がっている。主な著書に「The Natural Steps For Communities: How Cities And Towns Can Change to Sustainable Practice」(2004)、「How to Change Worlds」(2011)。
藤井克己
岩手大学学長。
東京大学大学院農学系研究科修士課程修了。農学博士(土壌物理学)。1974年より東京大学農学部助手、1984年より岩手大学農学部講師、1997年より岩手大学農学部教授、2005年より国立大学法人岩手大学農学部長を経て、2008年6月より現職。
今村文彦
東北大学大学院工学研究科災害制御研究センター津波工学研究室教授。
東北大学工学部附属災害制御研究センター助教授、アジア工科大学院助教授、京都大学防災研究所巨大災害研究センター客員助教授を経て、現職。津波被害の軽減を目指した津波工学の分野で研究を進めている。特に、数値計算による津波予警報システムの開発や、太平洋での防災対策、津波避難行動などの研究を精力的に行っている。内閣府中央防災会議専門調査会委員、日本自然災害学会前会長、東日本大震災復興構想会議検討部会委員などを務める。
武内和彦
1974年東京大学理学部卒業、1976年同大学院農学系研究科修士課程修了。東京大学アジア生物資源環境研究センター教授等を経て、1997年より同大学院農学生命科学研究科教授。2005年より同サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)副機構長、2008年より国際連合大学副学長、2009年より同サステイナビリティと平和研究所所長。2012年より東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長。専門は、緑地環境学、地域生態学。持続型社会の構築を目指すサステイナビリティ学の創生に取り組んでいる。また、日本の里地里海や世界の伝統的な土地利用の再構築を目指すSATOYAMAイニシアティブにも関与している。著書には、「地球持続学のすすめ」(岩波書店、2007年)、「生態系と自然共生社会」(共編著、東京大学出版会、2010年)などがある。
鳥居敏男
環境省東北地方環境事務所所長。
1984年、環境庁(当時)入庁。富士箱根伊豆、瀬戸内海、釧路湿原国立公園などの現地事務所のほか環境省自然環境局計画課、野生生物課、生物多様性センターなどに勤務。2010年には名古屋で開催された生物多様性条約COP10に携わる。
榎本雅仁
農林水産省環境政策課長。
1983年東京大学法学部卒業後、農林水産省入省。1989年にはハーバード大学ケネディスクールで公共政策学修士を取得。その後構造改善局総務課調査官、大臣官房企画室調査官、大臣官房企画評価課調査官、在アメリカ合衆国日本国大使館参事官、大臣官房国際部国際経済課長、大臣官房国際部国際経済課長兼農林水産大臣特別補佐官(国際担当)、林野庁林政部企画課長、水産庁漁政部企画課長、農林水産技術会議事務局総務課長、北陸農政局次長、大臣官房環境バイオマス政策課長を務める。
風見正三
宮城大学事業構想学部教授、同大学地域連携センター副センター長。
博士(工学)、技術士(都市及び地方計画)。東京工業大学大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻博士後期課程修了。英国ロンドン大学大学院(LSE)等を修了。シンクタンク、総合建設会社のまちづくり部門等を経て現職。全国の都市再生、地域再生、環境共生のプロジェクトに関わりながら、持続可能な地域創造とコモンズの研究と実践に取り組んでいる。2006年度日本不動産学会・学会賞(論文賞)受賞。主な著書に「『明日の田園都市』への誘い」(彰国社)。
平川新
東北大学災害科学国際研究所所長。
東北大学大学院文学研究科修士課程修了。専門は江戸時代史。主な著書に「伝説のなかの神」、「紛争と世論」、「近世日本の交通と地域経済」、「開国への道」、「地域社会とリーダーたち」などがある。NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク理事長、仙台市史編纂専門委員長、文部科学省文化審議会専門委員、東北大学防災科学研究拠点代表なども務める。
中静透
東北大学大学院生命科学研究科教授。
森林総合研究所主任研究官、国際農林水産業研究センター主任研究官、京都大学生態学研究センター教授、総合地球環境学研究所教授を経て、現職。専門は森林生態・植物生態学で熱帯林や温帯林において、森林のうごき、樹木の生活史、生物多様性が維持されるしくみ、減少してゆく原因、減少することで失われる生態系サービスなどについて、いろいろな分野の研究者と共同で研究をおこなっている。著書に「森のスケッチ」「生物多様性はなぜ大切か」ほか。

まえがき

はじめに

本書は、2012年2月16日に、国連大学、東北大学および(公財)国連大学協力会の共催によって、東北大学の片平さくらホールにおいておこなわれたシンポジウム『グローバルセミナー東北震災復興と生態適応~国連生物多様性の10年とRIO+20に向けて~』の記録です。

2011年3月11日に発生した東日本大震災により甚大な被害を受けた地域の復興は、国際的な関心事となっています。津波から人命を守る防潮堤の早期復元、インフラの整備、復興住宅の建設など、街づくり計画が急ピッチで進められていますが、そこに住む人々の願いは「営みの復興」にあります。世界有数の漁場および農地を保有する東北地域の豊かさは生物多様性により支えられてきました。その回復を促すことが、より確かで持続可能な復興に欠かせません。またこれらの自然の恩恵による歴史的、文化的価値は大きく、この地域の人々の暮らしと街づくりの根幹となっていました。

そこで本シンポジウムでは、まず初めに基調講演者としてスウェーデンを環境先進国へと導いた立役者の一人であるトルビョーン・ラーティ氏を招いて、持続可能な復興の原則についてお話しいただきました。ラーティ氏は、ご自身が中心となって取り組んだスウェーデンや他の国々におけるエコ自治体運動について詳しく紹介し、その実践経験からこの運動を推進するためのコンセプトを述べた上で、東北地方の将来展望について言及されました。

続く課題提起では、岩手大学の藤井克己学長、東北大学大学院の今村文彦教授、国連大学の武内和彦副学長よりそれぞれの専門の立場から、被災状況を細かく分析しつつ、従来のシステムを見直した上で社会の多様性を活かした仕組みづくりや新たな視点による津波対策と街づくり、里山里海の再生を通じて自然共生社会と結び付いた震災復興のあり方などが提案されました。

さらに第3部のパネルディスカッションでは行政の方の参加も交え、復興へ向けた取り組みの進捗状況や今後の施策が報告されたほか、コミュニティを主体とした地域資源経営や歴史文化をめぐる多様性の危機など多角的な観点から震災復興と生態適応というテーマに考察を加えています。

震災から復興への道程は長期にわたり粘り強い支援と多くの関係者の英知が必要とされます。本書が、都市計画、防災、土木建築、産業復興にかかわる企業や学術関係者をはじめ自治体、NPO/NGO、一般市民の皆様へ分かりやすい話題を提供し、復興に向けた提言の一助となることを願ってやみません。

本書の出版にあたっては、(公財)国連大学協力会の森茜事務局長および(株)国際書院の石井彰社長に大変ご尽力をいただきました。心より感謝いたします。

編者 武内和彦

中静透

索引

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