jfUNUレクチャー・シリーズ 8 人間の安全保障 新たな展開を目指して

武内和彦・松隈潤 編

人間の安全保障概念の国際法に与える影響をベースに、平和構築、自然災害、教育開発の視点から、市民社会を形成していく人間そのものに焦点を当てた人材育成の必要性を論ずる。(2013.11.18)

定価 (本体2,000円 + 税)

ISBN978-4-87791-254-3 C3031 133頁

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目次

人間の安全保障の概念が国際法に与える影響 ……松隈 潤

著者紹介

〈執筆者・編者紹介〉※編者

松隈潤:

東京外国語大学総合国際学研究院教授。

東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻博士課程単位取得退学(学術修士)。

1986-1987年、国際飢餓対策機構(NGO)職員、1989-1992年、外務省専門調査員(在連合王国日本大使館)、1992-2009年、西南学院大学専任講師、助教授を経て教授(1998年、外務省専門調査員: 国際連合日本政府代表部)。

1996-1997年、タフツ大学フレッチャー法律外交大学院リサーチ・アソシエイト、1997-1998年、ケンブリッジ大学国際学研究センター客員研究員、

2002-2003年、マックス・プランク比較公法・国際法研究所客員研究員、

2006年、ジョージタウン大学ロー・センター国際経済法研究所客員研究員。

日本国際連合学会理事。

最近の著作には(著書)『人間の安全保障と国際機構』(国際書院、2008年)、『国際機構と法』(国際書院、2005年)、(論文)'Legitimacy of Economic Sanctions: An Analysis of Humanitarian Exemptions Sanctions Regimes and the Right to Minimum Sustenance' in Hilary Charlesworth and Jean-Marc Coicaud(eds.), Fault Lines of International Legitimacy, Cambridge University Press, 2010などがある。

ヴェセリン・ポポフスキー

現在、国連大学のサステイナビリティと平和研究所のシニア・アカデミック・プログラム・オフィサーとして、平和と安全保障、国際法、人権、グローバル・ガバナンスの分野で研究開発、教育、研究発表を行っている。共編書としては、'International Criminal Accountability and the Rights of Children' (Hargue Academic Press, 2006); 'World Religions and Norms of War' (UNU Press 2009); 'Democracy in the South' (UNU Press 2010); Human Rights Regimes in the Americas' (UNU Press 2010); 'Blood and Borders' (UNU Press 2011)等があり、また、ガバナンスにおける現代の傾向と刷新についての三部作 'Engaging Civil Society'、'Building Trust iNGOvernment'、'Cross-Border Governance' (UNU Press 2011)を完成している。その他、リチャード・フォーク氏(Richard Falk)との共編による作品 'Legality and Legitimacy in Global Affairs' を Oxford University Press から出版。さらに、学術書に多くの論文や章節を発表し、介入と国家主権に関する国際委員会(ICISS/International Commission on Intervention and State Sovereignty)同委員会の報告書「保護責任(Responsibility to Protect)」の共同執筆、並びに、普遍的管轄権のプリンストン原則(2001年刊行)という国際的な二つの取り組みに関与した。

東大作

東京大学大学院総合文化研究科准教授

1993年から2004年までNHK報道局ディレクター。企画制作した主なNHKスペシャルに、「我々はなぜ戦争をしたのか、ベトナム戦争・敵との対話」(放送文化基金賞受賞)、「犯罪被害者をどう守るのか」「憎しみの連鎖はどこまで続くか、パレスチナとイスラエル」「核危機回避への苦闘、韓国・米朝の狭間で」「イラク復興、国連の苦闘」(世界国連記者協会賞受賞)等。2004年よりカナダのブリテイッシュ・コロンビア大学大学院修士・博士課程。2008年にアフガニスタンと東ティモールで現地調査を行い国連PKO局からレポートを出版。提案した「アフガンでの新たな和解プログラムの設置」は実現に至る。その後、2009年12月より一年間、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)和解・再統合チームリーダーとして、「アフガン平和と和解プログラム」新設に携わる。2011年1月より現職。著書に「我々はなぜ戦争をしたのか」(岩波書店・平凡社ライブラリー)「犯罪被害者の声が聞こえますか」(講談社・新潮文庫)「平和構築、アフガンと東ティモールの現場から」(岩波新書)など。

杉村美紀

上智大学総合人間科学部教育学科教授、専門は比較教育学・国際教育学。

1992年東京大学大学院教育学研究科単位取得満期退学。1998年博士(教育学)(東京大学より取得)

外務省専門調査員、国立教育研究所(現国立教育政策研究所)研究協力者、広島大学教育開発国際協力研究センター客員研究員を経て2002年より上智大学文学部教育学科専任講師、2007年より同総合人間科学部教育学科准教授。この間、学外での主な活動として学習院大学東洋文化研究所客員研究員(2004年~2010年)、静岡県留学生支援戦略研究会座長(2009年―2010年)、早稲田大学グローバルCOEシニアフェロー(2010年~2011年)、聖心女子大学(2006年度)、学習院女子大学(2007年度~2011年度)および東京大学非常勤講師(2009~2011年度)を兼任。

現在、科学研究費補助金研究による国際共同研究プロジェクト「人の国際移動と多文化社会の変容に関する比較教育研究」(2011~2014年度)ならびにトヨタ財団研究助成による国際共同研究プロジェクト「紛争後のスリランカ平和構築と持続的発展に関する高等教育・人材育成のあり方とは―「マレーシア・モデル」との比較分析を通じた国際共同研究―」(2011~2013年)の研究代表者を務めている。

武内和彦

1974年東京大学理学部地理学科卒業、1976年同大学院農学系研究科修士課程修了。東京都立大学助手、東京大学農学部助教授、同アジア生物資源環境研究センター教授を経て、1997年より同大学院農学生命科学研究科教授。2005年東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)副機構長、2008年より国際連合大学(UNU)副学長、2009年より同サステイナビリティと平和研究所(UNUISP)所長を併任。2012年より東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長。日本造園学会会長、中央環境審議会委員(自然環境部会長、循環型社会計画部会長)、食料・農業・農村政策審議会委員(会長代理、畜産部会長)などを兼任。

人と自然の望ましい関係の再構築を目指して、アジア・アフリカを主対象に研究教育活動を展開。最近では、持続型社会の構築を目指す俯瞰的な科学としての地球持続学(サステイナビリティ学)の世界的な拠点形成に向けて奔走している。また、日本の里地里山の再生を目指すとともに、伝統的な土地利用の再構築に向けた世界の多様な取り組みとの連携を目指すSATOYAMAイニシアティブにも深く関与している。

専門分野: 緑地環境学、地域生態学、地球持続学。

最近の著作: 「地球持続学のすすめ」(岩波ジュニア新書、2007年)、「サステイナビリティ学」(全5巻、共編著、東京大学出版会、2010・11年)など。

まえがき

編者はしがき

本書は、2011年12月16日に、国連大学サステイナビリティと平和研究所および(公財)国連大学協力会の共催によって、国連大学のウ・タント国際会議場においておこなわれたジュニアフェローシンポジウム2011『人間の安全保障―新たな展開を目指して―』の記録です。

ジュニア・フェロー・シンポジウムは、国連大学が従来実施してきた各種人材養成コースの修了生(1,500人を超える)に対し、グローバルイシューに関する新知識の取得機会を提供するとともに、彼らの情報交流の機会を提供するために、国連大学と国連大学協力会が2006年より実施してきたものです。2007年からは、公開シンポジウムとして、基調講演とパネルディスカッション形式のシンポジウムと情報交流をおこなっており、2010年からは国連大学に開設された大学院プログラムの大学院生も参加することになったこともあって、修了生ならびに大学院生のネットワークの構築にも役立っています。

今回のジュニア・フェロー・シンポジウムのテーマとなった「人間の安全保障」という考え方は、1994年、国連開発計画(UNDP)が「人間開発報告書」において、より良い国際開発を実現するためには、国家の安全保障のみならず個々の人間の安全を守ることこそ重要であると提起したことによって、国際社会で初めて公に取り上げられたものです。この中で、人間の安全保障は、飢餓・疾病・抑圧等の恒常的な脅威からの安全確保と、日常の生活から突然断絶されることからの保護の2点を包括的な概念であるとされました。

しかし、人間の安全保障の概念は、開発途上国における生存条件の問題や国家間紛争によってもたらされる欠乏や恐怖の問題のみならず、最近では、国際テロや国際犯罪、地球温暖化、巨大自然災害など、国家としての枠組みを超えた問題が人間の安全に及ぼす脅威をも対象とするようになるなど、先進諸国も含めた地球規模の問題に適応できる概念としてクローズアップされるようになっています。

このような近年における人間の安全保障をめぐる状況を踏まえ、このシンポジウムでは、人間の安全保障の概念に対する多様な観点からのアプローチを試み、人間の安全保障について新たな展開を探ることとしました。

シンポジウムは第1部の基調講演と第2部のパネルディスカッションの2部構成としました。最初の基調講演では、松隈潤東京外国語大学大学院教授が「人間の安全保障の概念が国際法に与える影響」と題して講演を行いました。この講演では、2010年3月の国連事務総長報告書に示された「人間の安全保障」概念を基礎に、同概念の適用は「国連の業務に追加的な層を加えるものではなく、国連の諸活動を補完し集中させる」ものであるとの認識のもと、同概念が国際法に対してどのような影響を与えており、また与える可能性があるのかが述べられました。同時に「人間の安全保障」の概念に関する理解については、未だ各国の間に大きな見解の相違が存在しているものの、「人間の安全保障」が法的な概念というよりも、政策志向の概念であることに鑑み、「人間の安全保障」概念を国連の諸活動において主流化することの意義は、国連を中心とした国際協力の枠組みの改善にこそあると論じました。

続くパネルディスカッションでは、ヴェセリン・ポポフスキー国連大学サスティナビリティと平和研究所上級学術官が、「人間の安全保障と自然災害の観点から」について論じ、当初は人間の安全保障の概念の範疇に含まれていなかった自然災害が、その枠組みに取り込まれていくこととなった経緯や要因について言及しました。引き続いて東大作東京大学准教授が「人間の安全保障の平和構築の観点から」について論じ、東ティモールやアフガニスタンなど紛争地域での現場体験を交えながら人間の安全保障と平和構築の関連を述べました。さらに杉村美紀上智大学教授が「人間の安全保障と教育開発の観点から」というテーマで論述し、国家がこれまで担ってきた安全保障から市民社会を形成していく人間そのものに焦点を当てて人材を育てていくべきであると強調しました。このように、パネルディスカッションでは、多角的な観点から「人間の安全保障」の問題に迫りました。

会場からは、各講演者やパネリストに対して多くの質問や意見が積極的に投げかけられ、「人間の安全保障」に関して、議論をよりいっそう深めることができました。本書では、その質疑応答の模様も収録しています。

本書を通して、「人間の安全保障」が専門家や研究者のみならず、一般市民の日常生活にも密接なかかわりがあるテーマであることを理解し、この問題に関して、さらに関心を深めていただければ幸いです。

なお、本書の出版に当たっては、(公財)国連大学協力会の森茜事務局長および(株)国際書院の石井彰社長に大変ご尽力をいただきました。心より感謝申し上げます。

編者 武内和彦

松隈潤

索引

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