jfunuレクチャー・シリーズ 9 環境と平和 より包括的なサステイナビリティを目指して

武内和彦 編

「環境・開発」と「平和」を「未来共生」の観点から現在、地球上に存在する重大な課題を統合的に捉え、未来へバトンタッチするため人類と地球環境の持続可能性を総合的に探究する。(2014.10.20)

定価 (本体2,000円 + 税)

ISBN978-4-87791-261-1 C3036 153頁

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目次

著者紹介

<執筆者・編者紹介>

武内和彦
1974年東京大学理学部地理学科卒業、1976年同大学院農学系研究科修士課程修了。東京大学アジア生物資源環境研究センター教授等を経て、1997年より2012年まで同大学院農学生命科学研究科教授。2005年東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)副機構長、2008年より国際連合大学(UNU)副学長、2009年より2012年まで同サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)所長を併任。2012年より東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長。2013年より国際連合大学(UNU)上級副学長、国際連合事務次長補、中央環境審議会会長(自然環境部会長、総合政策部会長)、食料・農業・農村政策審議会委員(会長代理、畜産部会長)などを兼任。
最近の著作: 「地球持続学のすすめ」(岩波ジュニア新書、2007年)、「サステイナビリティ学」(全5巻、共編著、東京大学出版会、2010・11年)「世界農業遺産」(祥伝社新書、2013年)、「日本の自然環境政策」(共編著、東大出版会、2014年)など。
大島賢三
原子力規制委員会委員。
元国連事務次長(人道問題担当)、元オーストラリア大使、元国連大使、元独立行政法人国際協力機構(JICA)副理事長。

1967年外務省入省、アジア局審議官、経済協力局長、総理府国際平和協力(PKO)本部事務局長等を歴任。フランス、インド、オーストラリア、アメリカ等の大使館勤務。

星野俊也
大阪大学総長補佐(国際問題担当)兼国際公共政策研究科長。元日本政府国連代表部公使参事官。日本国際連合協会理事、日本国際連合学会理事、国連UNHCR協会理事等を兼任。在米日本大使館専門調査員、日本国際問題研究所主任研究員などを経て現職。米プリンストン大学及び米コロンビア大学客員研究員、中国・内蒙古大学客員教授、豪ウーロンゴン大学客員研究員など歴任。上智大学卒業、学術修士(東京大学)、国際公共政策博士(大阪大学)。
ヴェセリン・ポポフスキー
現在、国連大学のサステイナビリティと平和研究所のシニア・アカデミック・プログラム・オフィサーとして、平和と安全保障、国際法、人権、グローバル・ガバナンスの分野で研究開発、教育、研究発表を行っている。共編書としては、International Criminal Accountability and the Rights of Children(Hargue Academic Press, 2006); World Religions and Norms of War(UNU Press 2009); Democracy in the South(UNU Press 2010); Human Rights Regimes in the Americas(UNU Press 2010); Blood and Borders(UNU Press 2011)等があり、また、ガバナンスにおける現代の傾向と刷新についての三部作Engaging Civil Society、Building Trust in Government、Cross-Border Governance(UNU Press 2011)を完成している。その他、リチャード・フォーク氏(Richard Falk)との共編による作品Legality and Legitimacy in Global AffairsがOxford University Pressから出版。さらに、学術書・に多くの論文や章節を発表し、介入と国家主権に関する国際委員会(ICISS/International Commission on Intervention and State Sovereignty)同委員会の報告書「保護責任(Responsibility to Protect)」の共同執筆、並びに、普遍的管轄権のプリンストン原則(2001年刊行)という国際的な二つの取り組みに関与した。

<総合司会者紹介>

杉村美紀
上智大学総合人間科学部教育学科教授。学術交流担当副学長。専門は比較教育学、国際教育学。
博士(教育学・東京大学)1985年お茶の水女子大学文教育学部卒業、1992年東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学後、外務省専門調査員、国立教育政策研究所客員研究員、広島大学教育開発国際協力センター客員研究員を経て2002年より上智大学文学部専任講師、総合人間科学部教育学科専任講師、同准教授を経て現在に至る。2014年より学術交流担当副学長。静岡県留学生支援戦略研究会座長(2009~2010年)、United Nations University(UNU)Alumni Association代表幹事(2011年~現在)、国連大学協力会助成諮問委員会委員(2011年~現在)、日本学生支援機構留学生交流事業実施委員会委員(2013年~現在)等を務める。また研究代表者として、科学研究費補助金研究(基盤研究B)による国際共同研究「人の国際移動と多文化社会の変容に関する比較教育研究」(2011~2014年)、同補助金研究(挑戦的萌芽研究)「災害後の復旧・復興に資する持続可能な地域と教育の再生モデルの比較研究」(2014~2016年)を実施している。
主要業績: 『マレーシアの教育政策とマイノリティ: 国民統合のなかの華人学校』(東京大学出版会、2000年、単著)、『東アジア共同体の構築3: 国際移動と社会変容』(岩波書店、2007年、共著)、『比較教育研究何をどう比較するか』(上智大学出版、2011年、共訳書)、The Function of Regional Networks in East Asian Higher Education, in John N.Hawkins, Ka Ho Mok, and Deane E.Neubauer, Higher Education Regionalization in Asia Pacific: Implications for Governance, Citizenship and University Transformation, Palgrave Macmillan, New York, 2012, pp.45-64.(共著)、『比較教育学の地平を拓く多様な学問観と知の協働』(東信堂、2013年、共著)、『日本に住む多文化の子どもと教育ことばと文化のはざまで生きる』(上智大学出版、2014年、共著)、『トランスナショナル高等教育の国際比較: 留学概念の転換』(東信堂、2014年、共著)など。

まえがき

編者はしがき

本書は、2012年11月22日に、国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU ISP)と(公財)国連大学協力会の共催によっておこなわれた「ジュニア・フェロー・シンポジウム2012『環境と平和~より包括的なサステイナビリティを目指して~』」の記録を書物の形にまとめたものです。

ジュニア・フェロー・シンポジウムは、国連大学の大学院ならびに人材育成コースの修了生(約1,700人)に対し、地球的課題に関する新知識の取得の機会を提供するとともに、彼らに情報交流の場を提供するために、国連大学と国連大学協力会が2006年より実施してきたプログラムです。2007年からは、基調講演およびパネル・ディスカッションを公開シンポジウムとして広く一般の方々にも提供する形で実施してきました。さらに、2010年からは国連大学に開設された大学院の在学生も参加し、国連大学の修了生ならびに現役大学院学生のネットワークの構築にも役立っています。

2012年のシンポジウムでは、「環境と平和~より包括的なサステイナビリティを目指して~」と題し、従来、ともすると分離された形で議論されがちだった「環境・開発」と「平和」を、“サステイナビリティ”の観点から統合的に捉えることによって、人類と地球環境の持続性を総合的に探求することを主題としました。

このシンポジウムで、私たちは、“サステイナビリティ”という考え方によって、現在、地球上に存在する重大な問題をどのように解決できるかを検討しました。東日本大震災という未曾有の自然災害とそれがもたらした原子力発電所の事故は、こうした考え方を適用するに値する大きな問題であると考えられます。すなわち、自然災害や原子力発電所事故からの復興プロセスにおいては、持続可能な開発を通じて平和な社会を構築するという考え方が欠かせません。

また、こうした考え方は、開発途上国をはじめ、世界各地・各国においても大変重要なことであることは言うまでもありません。私は2012年6月、通称Rio+20と呼ばれる国連環境開発会議に出席しましたが、そこでは、持続可能な開発や貧困削減の文脈におけるグリーン経済が討議されました。討議には、各国政府や国連機関にとどまらず、NGO、マイノリティグループなどさまざまなステークホルダーが参加し、一定の成果をあげることができました。国連大学では、さまざまなステークホルダーがパートナーシップを形成し、地球的課題の解決に向けて貢献できるような取り組みへの支援を今後とも続けていきたいと考えています。

その点で、本書に収められたシンポジウムの内容は、非常に有意義だと思います。基調講演者に大島賢三氏を迎えましたが、大島氏は、2012年9月~2014年9月まで原子力規制委員会委員を務められ、元国連事務次長・元JICA副理事長・元オーストラリア特命全権大使等のハイレベルのご経験を有する方です。大島氏には、地球温暖化などの影響により、近年、多発化と激甚化が予測される自然災害を取り上げながら、それらと国連を中心とするさまざまな国際的な取り組み、国際協力の現状について考察を進めるとともに、災害発生直後の緊急時の救助・救援活動についての制度や仕組み、原則やルール、その問題点や課題、さらに緊急時を脱した後の復旧・復興に向けての活動、災害リスクを軽減するための防災・減災などの関連事項について、国際的視点に立って講演をおこなっていただきました。併せて、自然災害が原発事故を誘発した福島原発事故について、多くの教訓が得られることを論じていただきました。

続くショートスピーチでは、星野俊也大阪大学国際公共政策研究科長が「未来共生」という観点からの報告をおこないました。そこでは、未来志向で人々が互いの文化的・社会的な多様性を尊重し合い、国家間においても相互の利害を調整し合い、より良い共生社会を築いていくという新たな視点が、サステイナブルな形での平和構築にとって重要であるとの問題提起がなされました。

また、ヴェセリン・ポポフスキー国連大学サステイナビリティと平和研究所上級学術官は、「環境と平和」や「環境と紛争」は緊密な関係性を有するものであり、環境の安全保障は国連の懸念事項の一つとなり、同時に、平和維持活動の一部となっていることを指摘しました。

さらに私は、「環境」と「平和」はいずれも国連が担う地球的課題であると述べ、国連大学の戦略計画では、自然科学中心の「環境と持続可能な開発」、社会科学中心の「平和とガバナンス」の二つのプログラムを統合し、サステイナビリティと平和をテーマに文理融合の立場から世界のサステイナビリティ学を先導しようとしていると述べました。

第3部のパネル・ディスカッションでは、基調講演とショートスピーチで提起された課題をベースに、ODAの果たすべき役割、文化的な多様性維持のためのグローバルな視点とローカルな視点の整合性、復興へ向けた取り組みの進捗状況や今後の施策が報告されたほか、コミュニティを主体とした地域資源経営や、歴史文化をめぐる多様性の危機など多角的な観点から環境と平和というテーマが論じられました。

東日本大震災からの復興、とりわけ自然災害を契機とした原子力発電所事故からの復興には、長い道のりを要すると考えられ、それを支える長期にわたり粘り強い支援と多くの関係者の英知が必要とされます。

本書が、都市計画、防災、土木建築、産業復興、および人間の安全保障に関わる学術関係者をはじめ自治体、企業、NPO/NGO、一般市民の皆様へ分かりやすい話題を提供し、復興と防災に向けた提言の一助となることを願って止みません。

最後に、本書の出版に当たっては、(公財)国連大学協力会の森茜常務理事兼事務局長および(株)国際書院の石井彰社長に大変ご尽力をいただきました。心より感謝いたします。

編者

国連大学上級副学長 武内和彦

索引

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