早稲田現代中国研究叢書 5 中国の教科書に描かれた日本: 教育の「革命史観」から「文明史観」への転換

松田麻美子

中国の教科書に日本がどのように描かれてきたのかを、年代別に分析。中国の知識人による共産党の「正しい歴史観」から脱却するための努力が、教科書の対日記述をどう変化させたのかを検証する。(2017.3.17)

定価 (本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-87791-280-2 C3031

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目次

著者紹介

松田麻美子(MATSUDA MAMIKO)

早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程在学中 修士(国際関係学、中国戯曲文学)

外務省 課長補佐

まえがき

はじめに

日本では、中国で「反日教育」が行われていると指摘されている*1。中国で起こる日本に対するデモは、「反日教育」の結果だと指摘されている。これに対し、中国政府は愛国主義教育を行っているが、「反日教育」は行ったことはないと主張している*2。また、中国には「反日教育」を受けた覚えはないとする学生もおり*3、更に、子供のころは日本を憎んでいたが大人になってから逆になった*4、文化大革命以来、多くの中国人を惨殺してきたのは日本人ではない、中国の教科書は嘘つきだと考える中国人もおり、「反日教育」の崩壊も指摘されている*5

実際に中国の学校では、日本についてどのように教えられているのだろうか。中国の教科書には、日本はどのように描かれているのだろうか。そして、それは中国の政策の影響をどの程度受けているのだろうか。また、教科書に描かれた対日観は、実際に中国の人々にどのように受け止められたのだろうか。これが、本書の問題意識である。

第1節 問題の背景

教科書問題は、長期にわたり日中両国間の問題となってきた。1980年代から2000年頃までは、中国側が日本の教科書を非難する状況だったが、2000年以降、日本側でも中国の愛国主義教育が結果的に「反日教育」になっていると指摘する動きが現れてきた。

第1項 中国における愛国主義教育の強化

1980年代に中国共産党と政府から出された愛国主義運動関連の指示によると、当時の愛国主義運動は日本の侵略を強調するより、共産党及び社会主義の正統性を全面的に強調する内容だった*6

しかし、1989年の天安門事件の後、鄧小平自身が「この10年で最大の失敗は教育であった、これは思想政治教育について言っている」と語り*7、党・国家の指導により、愛国主義教育が強化される。1989年以降、党から一連の指示が出され、愛国主義教育は、中国の「和平演変」を企む敵対勢力の存在を前提に、アヘン戦争以降の帝国主義列強による陵辱を強調するものに変わっていく*8。1991年には、江沢民が、「小学生(幼稚園の子供でも良い)、中学生から大学生まで、中国近代史、現代史及び国情教育を行うべき」であり、「1840年のアヘン戦争以降の百年にわたり、中国人民が列強から陵辱を受けたことを、史実を挙げて説明」すること、「五四運動以降、中国共産党が誕生し、各族人民を指導して土地革命戦争、抗日戦争、解放戦争を経験し、新中国を建国し、中国人民が立ち上がったこと」を教育するよう求めた*9。これをうけて国家教育委員会から、「小中学校の中国近代、現代史及び国情教育強化のための全体綱要」が出され、歴史、地理、語文、思想政治を関連科目として指定し*10、各科目に対してそれぞれ近現代史、国情教育強化のための指示が出された*11

こうして実施された近現代史教育における「帝国主義列強」の中で、日本は「日中戦争で独立存亡の危機に中国を直面させ、他方でその日中戦争の中から中国共産党が覇権を握っていく」という「『正しい歴史』に密接にかかわる必要不可欠なキャラクター」であるといわれている*12。そして、中国は、日本政府は明治維新から終戦まで一貫して、資源が乏しい中で近代化を実現するため中国を侵略する計画を持っており、戦争は周到に計画されていたとする「戦争必然論」の立場を取っており*13、こうした思想が教科書にも貫かれている。1990年代に入り、こうした観点から近現代史教育が強化されることになった。

第2項 日本における中国の愛国主義教育に対する懸念

このような中国国内の動きに対し、日本では2000年頃から中国の愛国主義教育が「反日教育」ではないかと指摘されてきた。これに対し、日本政府は、中国は青少年の愛国主義教育を行っているのであり、必ずしも反日をあおるためのものではないと説明してきた*14, *15

しかし、2004年8月のサッカーアジアカップの際の中国の若者の抗議行動や、2005年春の日本の国連安保理常任理事国入りに反対するデモにより、日本政府の立場も変化する。日本政府は2004年以降、外務大臣、総理レベルで中国側に対し、歴史教科書の記述内容や抗日戦争記念館の展示のあり方につき、事実関係に疑問のあるもの、過度に刺激的なものがあり、愛国主義教育は行きすぎである旨指摘し*16, *17, *18、「南京大虐殺」記念館の具体的展示物の内容について申し入れを行った*19。また、日本側として、「平和と自由、民主主義を守り、世界の平和に貢献してきた戦後の日本の歩みを理解」して欲しいとの希望を中国側に伝えてきている*20

2006年12月に日中歴史共同研究がスタートし、歴史教科書や抗日戦争記念館の展示物に関する議論は、共同研究にゆだねられた。2010年に報告書が発表されたが、戦後部分は公開されず、中国側は愛国主義教育には反日の意図はないとするが、結果として反日の効果を持つという日本側の意見は公開されなかった*21。歴史共同研究に外部執筆委員として参加した川島真は、日中の歴史認識は「戦後部分にもより根源的な問題が残されている」との感想を述べている*22

第2節 教科書を研究する意義

愛国主義教育は、教科書のみで行われているわけではない。愛国主義教育は、マスメディアによる報道、ドラマ、映画、雑誌、新聞、インターネットなど、様々な媒体を通じて行われており、最近は特に、日本に対するマイナスの報道や「抗日神劇」といわれる抗日戦争に関するドラマや映画が問題視されている。かかる状況で、教科書を研究する意義は何だろうか。

第1項 共産党、社会主義体制維持のための思想教育

以下では、中国における教育及び教科書の役割を、中国国内で出された各種の指示、法令から見ていきたい。

改革開放が始まった1980年代以降、教育改革が求められ、遅れていた教育の制度化が進められていく*23。1983年には、鄧小平が北京の景山学校に「教育は現代化に向かい、世界に向かい、未来に向かうべきだ」(中文:教育要面向现代化,面向世界,面向未来)と揮毫し、これをきっかけに中国の教育界では教育改革に関する議論が始まった*24

1985年には、「中共中央の教育体制改革に関する決定」*25が出され、教育は社会主義の建設に奉仕すべきことが記載された。また、教科書に関連しては教育課程が古く、実践が伴っていないことが指摘された。1986年には、「中華人民共和国義務教育法」*26により、9年義務教育制度が定められた。同法には、義務教育は国の教育の方針を貫徹し、児童、青少年の徳、智、体の全面的な成長を確保し、社会主義建設のための人材の育成を行うべきであることが規定された(3条)。また、教科書について初めて法律上の規定が設けられ、国務院の教育主管部門が社会主義現代化建設の必要性に基づき義務教育制度、教育内容、課程の設置を決定し、教科書検定を行うとされた(8条)。

また、第一節で指摘したとおり、1991年の小学生から大学生まで近現代史教育を強化すべきとの江沢民の指示を受け、語文、歴史、地理、政治に対して近現代史教育強化のための具体的な指示が出された。1992年には国家教育委員会より「九年義務教育全日制小学、初級中学課程計画(試行)と24の学科の教学大綱(試用)の制定の通知」*27が出された。これには、教育の目標は、子供たちが「徳、智、体などの方面で活発かつ主体的に発達し、全民族の教養を高め、社会主義現代化建設の各レベル、各種の人材育成のために基礎を固める」とされ、初級中学の目標として、「祖国を愛し、人民を愛し、労働を愛し、社会主義思想と感情を愛し、弁証唯物主義、歴史唯物主義の基本的観点を初歩的に理解し、人民のために奉仕し、集団主義思想を初歩的に持つ」ことを挙げている。更に、政治、語文、歴史、地理において愛国主義教育を強化するとして、思想政治科目は「学生に中国共産党の指導を堅持し、社会主義の道を堅持する信念を初歩的に持たせること」、語文は「言語の理解と運用能力を高め、観察力と思考能力を高め、深い政治教育、思想教育、審美教育を受ける」、歴史は、「中国近現代史の重要事件と主要人物を重点的に学ぶことにより、学生に愛国主義教育、社会主義教育、国際主義教育を受けさせ、歴史唯物主義の基本的観点の初歩的な運用能力を持たせる」、地理は、「我が国地理に関する基本的な国情を理解し、人口、資源、環境等の基本的な国策を理解し、弁証唯物主義と愛国主義教育を受ける」とし、いずれも唯物主義や社会主義イデオロギーを身に着ける政治教育を教育の目標に挙げている。

1993年には、中共中央・国務院から「中国の教育改革と発展に関する綱要」*28が発表された。同「綱要」は、「中国の社会主義教育システムの主要な原則」として、第一に、「教育は社会主義現代化建設の基礎」であること、第二に、「党の教育に対する指導を堅持」すること、「徳、智、体を備えた社会主義の建設者と継承者を育成」すること、第三に、「教育が社会主義現代化に奉仕」すること、を列挙している。また、「正しい政治的方向を一番重要な位置」に置き、「社会主義の新人を育成し、愛国主義、集団主義、社会主義思想教育を拡大」し、「近現代史教育、国情に関する教育を強化」し、「中華民族の優秀な文化を継承・発揚」し、「学生に一切の搾取階級の腐った思想への抵抗」を強めさせ、中国の特色ある社会主義に対する信頼をはぐくませる、と記されている。教科書については、「国家が課程の設置と課程標準を定め、省、自治区、直轄市政府は教育計画と教材の選択及び地方が編集した教材の検定を行う権利を持つ」とされた。

1995年には、「中華人民共和国教育法」*29が制定された。同法には、「国家はマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、中国の特色ある社会主義理論の堅持という指導」のもと、「社会主義の教育事業を発展」させる(3条)、「教育は社会主義現代化建設に奉仕」し、「徳、智、体等が全面的に発展した社会主義事業の建設者と継承者を育成」する(5条)、「国は被教育者に対し愛国主義、集団主義、社会主義の教育」を行い、「理想、道徳、規律、法制、国防、民族団結」に関する教育を行う(6条)、「教育は中華民族の優秀な歴史文化の伝統を継承・発揚」し、「人類の文明の発展のすべての優秀な成果を吸収」すべき(7条)と規定し、社会主義的イデオロギーを改めて強調するとともに、世界文明から学ぶ姿勢も示した。

1996年には、「全日制高級中学課程計画(試行)」が制定され、教育の目標は、「祖国を熱愛し、人民を熱愛し、中国共産党を熱愛し、社会主義を熱愛し、正しい政治的方向を向き、正しい世界観、人生観と価値観を初歩的に持たせ、(中略)祖国の社会主義現代化建設に奉仕する精神を持たせる」とされた*30

1999年の「中国国務院の教育改革の全面的深化と素質教育の促進に関する決定」*31においても、教育の目的として「中華人民共和国教育法」と同様の内容が繰り返されている。

また、2000年の「全日制普通高級中学課程計画」においては、本「計画」が各教科の教学大綱と教科書を編纂するための基本的根拠となるとしたうえで、教育目標を「社会主義祖国を熱愛し、中国共産党を守り、中国歴史と国情を理解し、国家と民族に責任感を持ち、正しい世界観、人生観、価値観を持たせる」としている。

以上から総括すると、教育の目標は、江沢民が2001年に述べたとおり、「社会主義現代化事業」に奉仕する人材の育成、「青少年に対する愛国主義、集団主義、社会主義思想教育の強化、青少年の正しい世界観、価値観、人生観の保持」であり*32、教科書は、そのための思想工作のツールに他ならない。

なお、胡錦濤政権の時代には、教育における思想工作の要素は薄められている。2010年に中共中央及び国務院が「国家の中長期にわたる教育改革と発展に関する計画綱要」*33を発表したが、思想工作に触れた部分は全70項目のうち1項目しかなく、教育改革の目標を社会の進歩、国力の強化、人材の強化とし、教育に対する国の投資の強化、システムの充実化等の実務的な内容が主であった。学生への思想工作に触れた1項目の内容は、社会主義の核心的価値*34の教育システムへの浸透、マルクス主義の中国化の成果の強調、正しい世界観、価値観の樹立、党の指導、社会主義制度への信頼の樹立、愛国主義を核心とする民族精神と改革・創造を核心とする時代の精神を育成する、とこれまでの内容を踏襲している。同綱要に関する温家宝のスピーチも極めて実務的な内容であり、思想工作的内容はほとんど無い*35。胡錦濤の同綱要に関するスピーチも思想工作に触れているものの、これまでの教育における党の指導と思想工作に関する既定路線を提起したのみであった*36。後述するが、この時期の教科書の内容も、こうした政権の流れを受けて、思想工作的な要素は薄まってきている。

また、2012年の習近平政権成立後、教育に関する大きな政策は出されていない。2013年11月の第18期中央委員会第3回全体会議のコミュニケでは、教育については、民間資本の投入、規制緩和等の実務的な内容が主となっていた*37。しかし、2014年5月、教育部長の袁貴仁は「社会主義の核心的な価値観を教材、授業、頭に入れ込む」*38と発言した。また、2014年5月、習近平国家主席は、「少年、児童のころから社会主義の核心的な価値観の種を彼らの心に育てなければならない」*39と述べ、更に同年9月には「経典となる古代の詩と散文が教科書から削除されるのに賛成しない、『脱中国化』は悲しいことである。これらの経典を子供たちの頭に埋め込み、中華民族の文化的な遺伝子としなければならない」とし、上海の小学校1年生の教科書から古代詩8首が削除されたことを批判した*40。更に、2015年には「中華人民共和国教育法」が改定され、第5条に「教育を受ける者に対し社会主義の核心的価値観に関する教育を強化する」との文言が加えられた*41。また2015年には改定作業中の高校歴史教科書の「課程標準」の初稿がインターネット上に掲載されたが、これは唯物史観、思想工作がより強調されている*42。今後、習近平政権の下で教科書の内容がどのように変化するのか注目される。

共産党の指導を維持し、愛国心をもち、社会主義の現代化を実現するための人材を育成する教科書において、日本はどのような位置づけなのだろうか。

第2項 テレビ番組、報道、映画などのベースとなる教科書の内容

前述のとおり、90年代に入り、一連の指示が出され、教育の現場において近現代史、国情教育が強化されていくが、宣伝部門、新聞、出版、映画、文化関連部門も、中国の近現代史、国情教育を主な任務とするように指示が出されている。

たとえば、前述の1991年8月27日の「小中学校の中国近代、現代史及び国情教育の強化に関する全体綱要」は、「宣伝部門、新聞、出版、映画、文化等関連部門も中国の近現代史、国情教育を主な任務」とし、「歴史記念館を建設して学生に開放」し、「図書、写真集、歌、演劇、映画、テレビ番組など、学生の需要に合うものを計画的に製作」するよう求めた*43。同時に、文物を通じて愛国主義と革命の伝統に関する教育を行うよう通知も出されている*44。1993年9月には、優秀な映画を使って全国の小中学校で愛国主義教育を実施するよう通知が出され、小中学生が見るべき映画も指定された*45

1994年8月20日には、党中央から「愛国主義教育実施綱要」*46が制定された。同「綱要」制定に際し、党中央では1993年4月から調査を行い、広範な議論を行っている*47。調査を受けて、同「綱要」制定前の4月に開催された党中央宣伝部と統一戦線部による意見調整のための座談会では、本「綱要」は、「拝金主義、西洋崇拝の思想が蔓延」し、「特に青少年の近現代史に対する理解が不足」している状況に対するもので、「綱要」は「愛国主義教育を各方面に広げ、実行力を上げ、ルートを多様化させるもの」であると指摘されている*48。すなわち、党中央は、1991年以降に各教科で強化された近現代史教育の効果が不十分であると考え、学校の授業以外の場へ近現代史教育の場を拡大させようとしたのである。他方で、同「綱要」が求めた愛国主義教育の内容は、前述の「小中学校の中国近代、現代史及び国情教育の強化に関する全体綱要」とほぼ同じであり、国防教育、国家安全教育が加えられた程度であった*49。「綱要」は、学校教育に対しては、91年の「小中学校の中国近代、現代史及び国情教育の強化に関する全体綱要」の内容の実施を求めたに過ぎなかったが、愛国主義教育の実施の場を学校以外の社会全体へ、各機関、企業、郷村、基層単位、居民委員会、工会、共青団、婦女連、家庭に広げ、さらに、愛国主義教育基地の建設や、新聞、出版、ラジオ、テレビなどの様々なメディアで愛国主義教育を宣伝するように求めた。愛国主義教育の実施主体が、学校から社会全体に拡大された。

これを受けて、前述の1995年に制定された「中華人民共和国教育法」は、学校のみならず、図書館、博物館、歴史文化の古跡、革命記念館は学生を優遇すべきであり、ラジオ、テレビ局も教育的番組を編集し、思想、文化、科学的な教養を深めさせるよう求めている(50条)。

江沢民も、「教育部門のみならず、思想宣伝部門、政治法律部門、全党、全社会も努力しなければならない」*50と述べている。こうして、1990年代以降、教科書のみならず、テレビ、新聞、映画等の全分野において、青少年に対して愛国主義教育が展開されるようになった。すなわち、教科書に要求された内容を基礎とする報道、ドラマ、映画等の作成が求められており、教科書の内容が報道、ドラマ、映画のベースを提供しているといえる。教科書に描かれた対日観が党・政府の原則的な対日観を代表しているといえる。

第3項 日中関係の文脈での教科書の研究の必要性

前述のとおり、2004年から2006年にかけて、日本の国会においても抗日戦争記念館の展示物や中国の教科書の記載内容について議論され、過度な愛国主義教育の弊害を中国側に指摘するよう求められた*51。日本政府も、中国の教科書の調査の必要性を認めている*52。また、そうした中で2006年に日中歴史共同研究が立ち上げられ、2010年に報告書が発表された。日韓の歴史共同研究では、教科書に関する議論が行われた。日中の歴史共同研究の第二期がスタートするならば、教科書の具体的な内容に関する議論も検討されるだろう。本稿は、中国の教科書が80年代以降日本をどのように描いてきたのかという議論の基礎を提供することができる。

第3節 既存の研究との関連

日本において、中国の教科書の対日記述に関する研究は相当の蓄積がある。

第1項 中国の教科書の対日記述の変遷に関する研究

古代史については、唐の時代の中国文化の日本への影響、元、明の倭寇が記載されるのみであった、近代以前の日本は中国から大きな影響を受けて国家を形成したとの位置づけがなされていると指摘されている*53

近現代史については、王雪萍は、歴史のみならず、語文、政治も含めた教科書の対日記述を文字数、項目数、全体の割合をもって分析し、次のとおり指摘している。80年代は日本に関する戦争等のマイナスの記述が量的に減少し、戦後の日中友好、経済発展等が紹介され、最もバランスのとれた対日記述であった。90年代に入り、戦争関連の記述が増え、厳しい内容となった。7、80年代は、抗日戦争は、国共内戦にいたるまでのものとの位置づけで、国民党による統治に対する批判が主であった。86年までの歴史教育において、日本の侵略行為に対する批判はあまり前面には出ていなかったが、87年以降、90年代に入り、日本の具体的な侵略行為、占領地の統治に対して詳細な説明が行われるようになった*54

90年代に入り教科書において日中の戦争が強調された原因については、日本における教科書問題や総理の靖国神社参拝、政治家の発言の影響とする意見から*55, *56, *57、日中戦争は中国の「政治カード」となり、共産党の正統性、一党独裁堅持の理論的根拠となったことを指摘する意見がある*58, *59。他方で、詳細な説明は中国を侵略、圧迫した帝国主義全体に対するもので、日本だけを対象としていない*60、文字数は増えているが割合は下がっており、日本の存在は相対化され、「反日教育」を目指したものではない*61、反日感情の高揚に危機感を覚えた中国政府は90年代に入ってから極力反日感情を抑える政策をとっている*62等の指摘がなされている。また、抗日戦争における国民党の役割が再評価されるようになり、中国国民が一致団結して残虐な日本軍と戦ったように描かれるようになった。「南京大虐殺」も、「国民党の片面抗戦の失敗」との位置づけから、日本の戦争犯罪の中心的な存在として取り上げるようになったとも指摘されている*63

2000年以降は、教育における負担軽減の流れを受け、日本軍の暴行に関する記述は減り、内容は簡略化されたと指摘されている*64。これをもって、中国の教科書は、日本でイメージされている日本軍による残虐行為のオンパレードではないとの意見もある*65。また、予想に反して中国の教科書が「従軍慰安婦」と「731部隊」をほとんど取り上げていないとも指摘されている*66。一方で、「南京大虐殺」等の写真が掲載され、実証性を強調するようになったのも事実である*67。また、歴史認識問題が現在の問題として教科書化されはじめ、中学の歴史教科書には日本の中学生宛に「南京大虐殺」に関する手紙を書かせ、日本の軍国主義の罪状をあばき、中国が侵略に反対し、平和を熱愛していることを説明するよう求める記載もあり、戦争中の日本の残虐行為を認めない現在の日本という取り上げ方が始まっているとも指摘されている*68

他方で、2000年以降は、古代の日本と戦後に関する割合が増え、古代から現代までの日本をバランスよく紹介し、対日世論の悪化を歴史教育から歯止めをかけようとする政府の方針が示されているとも指摘される*69

任意学習項目で日本の戦後の発展について触れる教科書もあるが、「課程標準」に規定がないため、全く取り上げていない教科書から簡単に取り上げているもの、日本による謝罪、和解の努力、経済協力まで取り上げたもの、戦後の民主化、日本の規律、犠牲的精神、学習意欲の高い労働者をたたえるもの、政治的影響を拡大する戦後日本の戦略と軍事費の増大を描く教科書もあり、幅があると指摘される*70, *71。02年の上海教育出版社の教科書は、日本の戦後の歩みを特に詳しく紹介しており、地方でのこうした取り組みが全国に広がるのかどうか、注目されている*72

また、05年の「反日デモ」の原因について、教科書の記述内容の変化に原因を求める分析もある。王雪萍は、日本の対中侵略の説明について、80年代までは資本主義と封建勢力が結合した権力集団が責任を持つとしてきたが、90年代以降、階級を分けて日本国内の矛盾を説明する内容がなくなり、戦争責任を日本という国全体に帰するようになり、一部の軍国主義者と一般国民を区別する方法をやめた。よって、「反日デモ」の矛先は日本政府、資産階級のみならず、一般国民にも向けられたと分析する*73

第2項 中国の教科書の対日記述への指摘

日中双方の学者より、中国の教科書の対日記述について、以下のとおり指摘されている。

  • 1 戊戌の変法のように、中国の革命に日本の影響があったこと、辛亥革命における日中の交流等、日中関係の多面性に着目することが必要*74
  • 2 日本を過小に位置づけ、いかに残虐でいかに悪いことばかりやってきたかということを強調することによって、共産党のイメージをアップさせることを目的としている*75。日本の侵略戦争の後に、戦後日本社会の発展を紹介している。戦後の日本の各界で戦争を反省したこと、平和憲法、民主化、国内の政党、国民間の意見対立は記述されず、平和のための努力の過程についての紹介が少なく、戦前と戦後の日本の重要な相違が明らかでない。こうした紹介がもっと必要*76, *77。また、政治大国指向、軍事費増大、国際協力名目の軍事費膨張、右翼勢力の台頭、閣僚の靖国参拝、歴史教科書問題が強調され、日本が「危険な国家」との認識を与えてしまう*78、戦後の日本や対中ODAの紹介がない現状では、「反日教育」と受け止めざるを得ない*79
  • 3 日本による中国侵略の起因について、経済危機とファシズムの台頭で説明したが、当時の主要国は同じ危機にあったのに、なぜ日本だけが軍国主義・ファシズムに乗り出したのか説得力がない*80
  • 4 戦争の被害の事実は単に対日に限定されたものではなく、反日を目的としたものではなかった。しかし、歴史的事実における日本の占める重さと80年代以降歴史認識問題をめぐって中国側で蓄積された日本による被害の事実は、愛国主義教育における日本の比重を高め、日本は共産党の正統性を主張する最も効果ある存在となった。現在では、日本に対する悪感情を利用しようとする政権の意図を否定することはできない*81

以上のとおり、これまでの先行研究のほとんどは、一部の歴史教科書の日本に関する一部の記述しか分析していない。例外は王雪萍であり、王は1950年代以降の歴史、語文、政治の教科書における対日記述の全ての内容につき、文字数という量的な面から分析を行ったが、分類は古代史、近現代史、戦争に関するもの、友好交流に関するものといった簡潔な分け方を行っており、具体的に日本についてどのように記述されているのか詳細は明らかではない。

第4節 分析の枠組み

第1項 研究の仮説

以上より導き出された本稿の仮説は,以下のとおりである。

  • 第一の仮説: 中国の教科書の対日記述は、共産党が抗日戦争を戦って新中国を建設し、初めて人民を国の主人にしたという党の「正しい歴史観」を強調し、共産党の正当性を維持するための思想工作である。中国の教育において、日本は重要なキャラクターで、日中の戦争の記述の分量も多い。
  • 第二の仮説: 中国の教科書は、日本に対する悪感情を利用しようとする政権の意図のもとに、日本を悪く描いている。
  • 第三の仮説: 中国の教科書は、共産党のコントロールの下で作成されている。
  • 第四の仮説: 価値観の形成される多感な青少年の時期に学ぶ教科書の対日記述は、中国の人々の対日観の形成にとり、大きな影響力を持つ。
第2項 分析の方法

第1章においては、教科書における対日記述の背景として、中国の教科書をめぐる現状を整理する。

第2章においては、中国の中学・高校の教科書における対日記述の文字数及び内容がどのように変化してきたのか分析を行う。91年の江沢民の近現代史、国情教育強化に関する指示を受けて、実際にその対象とされた科目、すなわち、歴史、地理、政治、語文の教科書を対象にした。年代は、日本で入手可能な80年代以降とした。具体的には、教科書の目次、索引、絵、写真、注釈などを除いた本文部分(要約、本文の小文字を含む)の中で、日本に関する部分を抽出し、その文字数を算出し、記述の内容を分類した。文字数を数える際に、数字は1桁で1文字とし、符号も1文字とした。第一の仮説、日中の戦争の分量の多さを検証する。

第3章においては、年代別の歴史教科書の抗日戦争の記述内容の変遷を整理し、内容の変化がどのような背景で起こったのか分析し、第二の仮説である日本に対する悪感情を利用する政権の意図の有無を検証する。

第4章においては、地方の歴史教科書の抗日戦争及び戦後の日本の記述量及び内容を分析し、第三の仮説,教科書が党のコントロール下にあるかどうか検証する。

第5章においては、中国の人々へのインタビュー調査の結果を整理し、教科書が意図した「対日観」が実際に、中国の人々にどのように受容されたのか、どの程度影響力があったのか、第四の仮説である教科書の大きな影響力が成立するか検証する*82

第3項 添付資料

インタビュー調査の結果の詳細については、別添資料を添付する。

〈注〉

*1: たとえば、「日本人小学生の放った言葉に中国人家族が絶句、『われわれの愛国主義教育は間違っていた!』―中国メディア」『レコードチャイナ』2014年1月13日配信http: //www.recordchina.co.jp/a81672.html(2014年9月19日アクセス) 「小学校から刷り込まれる中国『反日教育』の驚愕現場」『東スポweb』2014年9月19日 http: //www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/313572(2014年11月8日アクセス) 石平「『日本で稼いだ金はいらない』政府の洗脳はここまで浸透した~中国共産党の反日・愛国教育」『SAPIO』2006年12月13日 「中国反日教育のスゴすぎる教科書内容『日本は野蛮な怪獣』」『女性自身ホームページ』2012年9月27日配信http: //jisin.jp/news/2556/4809/(2014年11月8日アクセス)

*2: 2004年11月9日 参議院外交防衛委員会 西宮外務省アジア大洋州局審議官発言http: //kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/161/0059/16111090059005.pdf(2015年9月20日アクセス)

*3: 「反日教育?う~ん、受けた覚えがないんですが… 日中若者ディスカッション」『日経ビジネスオンライン』 2012年12月10日 http: //business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121205/240617/?rt=nocnt(2014年11月8日アクセス)

*4: 「子供のころは骨の髄まで日本を憎んでいたけど、大人になってからはまったく逆になった―中国ネット」『レコードチャイナ』 2014年4月16日http: //www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86589(2014年11月8日アクセス)

*5: 石平「ほころびはじめた反日教育」『産経新聞』2013年8月15日 http: //sankei.jp.msn.com/world/news/130815/chn13081508040000-n1.htm (2014年11月8日アクセス)

*6: 木下恵ニ「中国の愛国主義教育」『岐路に立つ日中関係』(晃洋書房 2012年)122頁

*7: 邓小平「在接见首都戒严部队军以上干部时的讲话」1989年6月9日『党建』(1989年Z1期)

*8: 前掲木下「中国の愛国主義教育」126頁

*9: 「江泽民总书记致信李铁映何东昌强调进行中国近代史现代史及国情教育使小学生中学生大学生认识人民政权来之不易,提高民族自尊心和自信心」『人民日报』(1991年6月1日)

*10: 国家教育委員会「中小学加強中国近代、現代史及国情教育的総体綱要」(1991年8月27日)课程教材研究所『20世纪中国中小学课程标准教学大纲汇编; 历史卷』(人民教育出版社2001年)

*11: 「中小学語文学科思想政治教育綱要(試行)」1991年8月 课程教材研究所『20世纪中国中小学课程标准教学大纲汇编课程(教学)語文卷』(2001年人民教育出版社) 「中小学思想政治学科国情教育纲要」1991年10月 『思想政治科教学』(1991年第10期) 「中小学歴史学科思想政治教育綱要」1991年8月课程教材研究所『20世纪中国中小学课程标准教学大纲汇编课程(教学)歴史卷』(2001年,人民教育出版社) 「中小学地理学科国情教育纲要(试用)」1991年8月课程教材研究所『20世纪中国中小学课程标准教学大纲汇编地理卷』(2001年、人民教育出版社)

*12: 川島真「日中間の歴史共同研究みた歴史教科書問題」『歴史認識共有の地平―独仏共通教科書と日中韓の試み』明石書店、2009年、173-174頁)

*13: 「日中歴史共同研究 中国側報告書」『外務省ホームページ』 〈http: //www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/pdfs/rekishi_kk_c.pdf〉(2014年12月20日アクセス)

*14: 2000年4月12日 参議院国際問題に関する調査会 中江元中国大使発言 『国会議事録検索システム』〈http: //kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=10380&SAVED_RID=1&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=8&DOC_ID=3608&DPAGE=1&DTOTAL=2&DPOS=2&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=15020〉 (2014年12月21日アクセス)

*15: 2002年5月31日 衆議院外務委員会 川口外務大臣発言 『国会議事録検索システム』 http: //kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=10380&SAVED_RID=2&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=8&DOC_ID=5985&DPAGE=1&DTOTAL=1&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=18081 (2014年12月21日アクセス)

*16: 2004年11月9日 参議院外交防衛委員会 町村外務大臣発言 『国会議事録検索システム』http: //kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=10380&SAVED_RID=5&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=323&DPAGE=1&DTOTAL=3&DPOS=3&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=18913 (2014年12月21日アクセス)

*17: 「日中外相会談」(2005年5月7日)『外務省ホームページ』 〈http: //www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_abe/cn_kr_06/china_gaiyo.html〉(2014年12月20日アクセス)

*18: 「日中首脳会談」(2006年9月28日)『外務省ホームページ』 〈http: //www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_machimura/asem7_05/jc_gai2.html〉 (2014年12月20日アクセス)

*19: 2007年5月11日 衆議院内閣委員会 伊原アジア大洋州局参事官発言 『国会議事録検索システム』http: //kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=10380&SAVED_RID=3&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=3282&DPAGE=1&DTOTAL=1&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=18534 (2014年12月21日アクセス)

*20: 2006年10月11日 参議院予算委員会 安倍総理発言 『国会議事録検索システム』 http: //kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=10380&SAVED_RID=6&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=2763&DPAGE=2&DTOTAL=25&DPOS=21&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=21413 (2014年12月21日アクセス)

*21: 北岡伸一「『日中歴史共同研究』を振り返る」『外交フォーラム』261号、2010年4月

*22: 川島真「日中間の歴史共同研究から見た教科書問題」『歴史認識共有の地平―独仏共通教科書と日中韓の試み』(明石書店、2009年)174頁

*23: 陳如行『中国普通高中教育発展報告』(中国教育研究院 2012年)83頁

*24: 「按照“三个面向"改革高等教育」『人民日报』1984年5月6日 「全国教育学术讨论会认为要以“三个面向"为指导加速普通教育改革」『人民日报』1984年8月2日

*25: 「中共中央关于教育体制改革的决定」『人民日报』1985年5月2日

*26: 「中华人民共和国义务教育法」『人民日报』1986年4月12日

*27: 「关于印发《九年义务教育全日制小学,初级中学课程计划(试行)和24个学科教学大纲(试用)》的通知」1992年8月6日课程教材研究所『20世纪中国中小学课程标准教学大纲汇编课程(教学)计划卷』人民教育出版社、2001年

*28: 「中共中央国务院印发《中国教育改革和发展纲要》」『人民日报』1993年2月27日

*29: 「中华人民共和国教育法」『人民日报』1995年3月22日

*30: 「关于印发全日制普通高级中学课程计划的通知」1996 13号国家教委基础教育司1996年3月26日『20世纪中国中小学课程标准教学大纲汇编课程(教学)计划卷』课程教材研究所2001年

*31: 「中共中央国务院关于深化教育改革全面推进素质教育的决定」『人民日报』(1999年6月17日)

*32: 「关于教育问题的谈话(2000年2月1日)江泽民」『人民日报』(2000年3月1日)

*33: 「国家中长期教育改革和发展规划纲要(2010-2020)」『人民日报』(2010年7月30日)

*34: 『新華網』によると、社会主義の核心的価値とは、国家レベルでは富強、民主、繁栄、和諧、社会レベルでは自由、平等、公正、法治、公民レベルでは愛国、敬行、誠信、友善。http: //www.xinhuanet.com/politics/hxjzg/ (2016年8月12日アクセス)。日本では、イデオロギー分野の引き締めは強まっており、掲げられた民主や自由も、党を脅かさない範囲での「中国式」であり、中国社会の反応はおしなべて冷ややかと指摘されている(「中国、「価値観」キャンペーン 「富強」「愛国」12項目、機関紙一斉に掲載」『朝日新聞』朝刊、2014年2月14日)。

*35: 「强国必强教强国先强教」『人民日报』(2010年9月1日)

*36: 「在全国教育工作会议上的讲话」『人民日报』(2010年9月9日)

*37: 「授权发布中共中央关于全面深化改革的若干重大问题的决定」『新华网』http: //news.xinhuanet.com/politics/2013-11/15/c_118164235.htm (2014年1月17日閲覧)

*38: 「语文教材也是德育蓝本」『人民日报』(2014年5月22日)

*39: 「习近平:让社会主义核心价值观种子在少年儿童心中生根发芽」『人民日報』(2014年5月31日)

*40: 「人民日报评论习近平批评去中国化是在批评谁」『人民日報』(2014年9月10日)

*41: 「全国人大常委会关于修改《中华人民共和国教育法》的决定」『人民日報』(2015年12月28日)

*42: 普通高中歴史研制組『最新普通歴史課程標準(初稿)』2015年10月21日http: //blog.sina.com.cn/s/blog_9312d2890102w79g.html (2016年7月3日アクセス)ただし、歴史資料の尊重、歴史的事実と歴史の叙述は異なることを理解させることも、目標に掲げている。詳細は補論を参照ありたい。

*43: 前掲「中小学加强中国近代,现代史及国情教育的总体纲要」

*44: 「中共中央宣传部,国家教委,文化部,民政部,共青团中央,国家文物局关于充分运用文物进行爱国主义和革命传统教育的通知」『法律教育網』1991年8月28日http: //www.chinalawedu.com/news/1200/22598/22615/22800/2006/3/ma69301443351213600222836-0.htm (2015年1月2日アクセス)

*45: 「中宣部,国家教委,广播电影电视部,文化部关于运用优秀影视片在全国中小学开展爱国主义教育的通知」1993年9月13日 『法易網』http: //law.148365.com/267981.html (2015年1月2日アクセス)

*46: 「中共中央关于印发爱国主义教育实施纲要的通知」『中国改革信息庫』1994年8月20日 http: //www.reformdata.org/content/19940822/5814.html (2015年1月2日アクセス)

*47: 「中宣部邀请有关部门负责人座谈征求对《爱国主义教育实施纲要》意见」『人民日報』1994年5月8日

*48: 「爱国主义教育要落到实处 中宣部统战部召开座谈会,就《爱国主义教育实施纲要》征求党外人士意见」『人民日報』1994年4月13日

*49: 「愛国主義実施綱要」の「三、爱国主义教育的重点是青少年16」

*50: 「关于教育问题的谈话(2000年2月1日)江泽民」『人民日报』2000年3月1日

*51: 2004年11月9日 参議院外交防衛委員会、2005年2月24日衆議院安全保障委員会、2005年3月4日参議院予算委員会等

*52: 2006年4月25日 衆議院決算行政監視委員会 町村外務大臣発言 『国会議事録検索システム』http: //kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=34507&SAVED_RID=1&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=1174&DPAGE=1&DTOTAL=5&DPOS=2&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=34851 〔2014年12月23日アクセス〕

*53: 並木頼寿「中国教科書の世界・日本像」『日本の教育と社会 第6巻 歴史教科書問題』(日本図書センター、2007年)284頁

*54: 王雪萍「教科書から見る対日認識―中国と台湾の教科書の比較」(慶應大学修士論文、2001年)

*55: 家近亮子「歴史認識問題」『岐路に立つ日中関係―過去との対話・未来への模索』(2007年、晃洋書房)21頁

*56: 弓削俊洋「『大虐殺』という記憶の証明―歴史教科書における南京事件」『中国・台湾における日本像』(東方書店、2011年)67-69頁

*57: 斎藤一晴「歴代の歴史教科書における記述内容の変化」『中国歴史教科書と東アジア歴史対話』(花伝社、2008年)218-221頁

*58: 前掲 家近亮子 「歴史認識問題」21頁

*59: 川島真「日中韓の歴史共同研究からみた教科書問題」『歴史認識共有の地平―独仏共通教科書と日中韓の試み』(明石書店、2009年)174頁

*60: 王雪萍「時代とともに変化してきた抗日戦争像 1949-2005 中国の中国歴史教科書の『教学大綱』と教科書を中心に」『軍事史学』45号 (2011年)34-35頁

*61: 王雪萍「中国の教科書から見る分断した日本像と日中関係」『東亜』(2006年)5頁

*62: 劉傑「歴史認識はいかに国境を超えるのか」近藤孝弘編『東アジアの歴史政策―日中韓 対話と歴史認識』(明石書店、2008年)180-181頁

*63: 斎藤一晴「中国の歴史教科書の変遷とその方向性」『中国歴史教科書と東アジア歴史対話』(花伝社、2008年)179頁

*64: 武小燕「中国の学校教育における愛国主義教育の変容―政治・歴史・語文に見られる価値志向の分析―」『中国研究月報』第65巻12号 2011年12月 7頁

*65: 斎藤一晴「歴代の歴史教科書における記述内容の変化」『中国歴史教科書と東アジア歴史対話』(花伝社、2008年)210頁

*66: 別冊宝島編集部編『中国・韓国の歴史教科書に書かれた日本』(株式会社宝島社、2005年)

*67: 前掲 弓削俊洋「『大虐殺』という記憶の証明―歴史教科書における南京事件」78-79頁

*68: 茨木智志「歴史教科書にみる日中の相互認識」劉傑他編『国境を超える歴史認識 日中対話の試み』(東京大学出版会2006年)242-243頁

*69: 前掲 王雪萍「時代とともに変化してきた抗日戦争像」6頁

*70: クラウディア・シュナイダー「改革開放以降の中国における歴史教育」近藤孝弘編『東アジアの歴史政策―日中韓 対話と歴史認識』(明石書店、2008年)114頁

*71: 波多野澄雄「日中歴史共同研究―成果と課題」黒沢文貴、イアン・ニッシュ編『歴史と和解』(平文社、2011年)203頁

*72: 前掲 王雪萍「時代とともに変化してきた抗日戦争像」9頁

*73: 王雪萍「中国の歴史教育課程における階級闘争史観の変容―『教学大綱』と歴史教科書を手掛かりに」加茂具樹他編『中国 改革開放への転換―「1978年」を越えて』(慶応義塾大学出版会、2011年)94-95頁

*74: 前掲 並木頼寿「中国教科書の世界・日本像」285頁前掲 並木頼寿「中国教科書の世界・日本像」285頁

*75: 井沢元彦 金文学『逆検定 中国国定教科書―中国人に教えてあげたい本当の中国史』(祥伝社 2005年)19-20頁

*76: 歩平「中国の歴史教科書における戦争の歴史のとらえ方」『歴史学研究』899号(青木書店、2012年)71頁

*77: 前掲 王雪萍「中国の教科書から見る分断した日本像と日中関係」7、8頁

*78: 菊池一隆『東アジア歴史教科書問題の構図』(法律文化社、2013年)122頁

*79: 鳥海靖『日中韓露歴史教科書はこんなに違う』(扶桑社、2005年)198-199頁

*80: 王智新 「中国の歴史教育と歴史教科書―『反日』教育は事実か」『季刊中国』No80 季刊中国刊行委員会 2005年春季号31-32頁

*81: 前掲 木下恵二「中国の愛国主義教育」『岐路に立つ日中関係』128頁

*82: 本書の目的は、中国の教科書の記述内容の変化とその背景を検証することにあり、教科書の記述内容が歴史的事実に基づくか否かは検討の対象にしない。歴史的事実か否かの検証は、歴史の専門家の検証に委ねたい。また、中国の教科書の記載内容については、様々な議論があると承知するが、教科書の記載内容を忠実に表すため、日本の「侵略」、「ファシズム国家」としての日本、「中国を侵略する帝国主義国」としての日本など、そのまま用いた。中国の教科書の記述の中に天皇陛下に言及する箇所があるが、原文に忠実に訳出するためそのまま天皇と記載した。また、南京事件等についても、原文に忠実に訳出するため、「南京大虐殺」、○○における「虐殺」と記載する。いずれにせよ、筆者が中国側の記載内容を肯定しているわけではない。

索引

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