国際テロリズムに対する法的規制の構造: テロリズム防止関連諸条約における裁判管轄権の検討

安藤貴世
書影『国際テロリズムに対する法的規制の構造:』

国際法によるテロリズム規制枠組みとしてのテロリズム防止関連諸条約に注目し、裁判管轄権規定の成立過程を描き出すことにより、国際テロリズムの処罰の法構造がどのように形成されてきたかを明らかにする。(2020.4.7)

定価 (本体6,200円 + 税)

ISBN978-4-87791-303-8 C3032 415頁

目次

  • 序章
    • 第1節 本書の射程
      • 第1項 問題の所在
      • 第2項 本書の目的および問題意識
      • 第3項 本書の構成
      • 第4項 検討対象の限定、用語の統一
    • 第2節 国際テロリズムに対する法的規制に関する先行研究の整理
      • 第1項 国際犯罪の分類に関するもの
      • 第2項 国際テロリズムに対する法的規制全般に関するもの
      • 第3項 テロリズム防止関連諸条約に関するもの
      • 第4項 国際テロリズムに対する刑事管轄権に関するもの
      • 第5項 テロリズムの定義に関するもの
    • 第3節 まとめ
  • 第1章 国際テロリズムに対する法的規制の歴史と現状
    • 第1節 本章の課題および構成
    • 第2節 国際連盟・国際連合による法的規制
      • 第1項 国際連盟における取組み
      • 第2項 国際連合における取組み
    • 第3節 テロリズム防止関連諸条約による規制
      • 第1項 テロリズム防止関連諸条約の概要
      • 第2項 テロリズム防止関連諸条約の特徴
    • 第4節 包括的テロリズム防止条約の起草作業
      • 第1項 国際テロ特別委員会の再設置
      • 第2項 個別条約などにおけるテロリズムの定義
      • 第3項 インドによる草案作成
      • 第4項 条約草案における容疑者の処罰方式
      • 第5項 テロリズムの定義に関する議論
      • 第6項 起草作業におけるその他の論点
    • 第5節 まとめ
  • 第2章 航空機不法奪取防止条約(ハーグ条約)
    • 第1節 本章の課題および構成
    • 第2節 先行研究の整理
    • 第3節 条約の成立経緯
    • 第4節 裁判管轄権規定および訴追規定の概要
    • 第5節 容疑者所在国の裁判管轄権規定の解釈に関する学説の整理
      • 第1項 普遍的管轄権の設定を肯定する立場
      • 第2項 普遍的管轄権の設定に否定的な立場
      • 第3項 代理処罰主義的なものと捉える立場
      • 第4項 学説の対立状況
    • 第6節 直接利害関係国の裁判管轄権規定の起草過程
      • 第1項 法律小委員会
      • 第2項 法律委員会
      • 第3項 ハーグ外交会議
      • 第4項 管轄権競合の際の優先順位をめぐる議論
    • 第7節 容疑者所在国の裁判管轄権規定の起草過程
      • 第1項 容疑者所在国の裁判管轄権に関する各国提案
      • 第2項 各国提案への反応
    • 第8節 訴追規定の起草過程
      • 第1項 法律小委員会
      • 第2項 法律委員会
      • 第3項 ハーグ外交会議
    • 第9節 まとめ
      • 第1項 裁判管轄権の設定について
      • 第2項 普遍的管轄権の設定について
  • 第3章 国家代表等に対する犯罪防止条約
    • 第1節 本章の課題および構成
    • 第2節 先行研究の整理
    • 第3節 条約の成立経緯
    • 第4節 裁判管轄権規定および訴追規定の概要
    • 第5節 裁判管轄権規定の起草過程 ――絶対的普遍的管轄権の設定をめぐる議論
      • 第1項 ILCによる条約草案
      • 第2項 国連総会第六委員会における修正案 ――日本修正案第2A条
      • 第3項 ILC草案第2条、日本修正案・共同修正案第2A条に対する各国の見解
    • 第6節 裁判管轄権規定に関するその他の議論
      • 第1項 直接利害関係国の裁判管轄権規定の起草過程
      • 第2項 容疑者所在国の裁判管轄権規定の起草過程
    • 第7節 訴追規定の起草過程
      • 第1項 ILC草案第6条の概要
      • 第2項 ILC草案第6条をめぐる議論
    • 第8節 まとめ
  • 第4章 人質行為防止条約
    • 第1節 本章の課題および構成
    • 第2節 先行研究の整理
    • 第3節 条約の成立経緯
    • 第4節 裁判管轄権規定および訴追規定の概要
    • 第5節 直接利害関係国の裁判管轄権規定の起草過程
      • 第1項 西独草案における裁判管轄権規定
      • 第2項 フランス修正案 ――被害者国籍国の裁判管轄権
      • 第3項 オランダ修正案 ――強要の対象とされた国際機関の加盟国の裁判管轄権
    • 第6節 訴追規定の起草過程
      • 第1項 西独草案における訴追規定およびオランダ修正案
      • 第2項 訴追規定に対するオランダ修正案をめぐる議論
    • 第7節 まとめ
  • 第5章 海洋航行不法行為防止条約
    • 第1節 本章の課題および構成
    • 第2節 先行研究の整理
    • 第3節 条約の成立経緯
    • 第4節 裁判管轄権規定の概要
    • 第5節 裁判管轄権規定の起草過程
      • 第1項 3カ国共同草案における裁判管轄権規定
      • 第2項 特別準備委員会第1会期における議論
      • 第3項 特別準備委員会第2会期から外交会議までの議論
    • 第6節 被強要国の裁判管轄権が義務規定から任意規定へと変化した理由
    • 第7節 犯罪人引渡しの際の優先順位をめぐる議論
    • 第8節 まとめ
  • 第6章 国際刑事裁判所(ICC)とテロリズム
    • 第1節 本章の課題および構成
    • 第2節 先行研究の整理
      • 第1項 ICC規程の起草過程におけるテロリズムをめぐる議論に関するもの
      • 第2項 ICC規程成立後のテロリズムをめぐる議論に関するもの
    • 第3節 ICC規程の成立経緯
    • 第4節 テロリズムをめぐるICC規程草案の変遷
      • 第1項 ILCにおける議論
      • 第2項 アドホック委員会、設立準備委員会における議論
    • 第5節 国連総会第六委員会およびローマ会議における議論
      • 第1項 テロリズムを対象犯罪に含めることを支持する立場
      • 第2項 テロリズムを対象犯罪に含めることに反対する立場
      • 第3項 再検討メカニズムと条約犯罪除外の決定
    • 第6節 ICC規程の改正手続とテロリズムに関するオランダ改正案
      • 第1項 ICC規程の改正手続と2010年検討会議
      • 第2項 オランダ改正案の概要
      • 第3項 オランダ改正案に関する議論 ――2010年検討会議以前
      • 第4項 オランダ改正案に関する議論 ――2010年検討会議以降
    • 第7節 まとめ
      • 第1項 ICC規程の起草過程におけるテロリズムをめぐる議論について
      • 第2項 ICC規程成立後のテロリズムをめぐる議論について
  • 終章 結語
    • 第1節 テロリズム防止関連諸条約における容疑者処罰の法的構造
    • 第2節 テロリズム防止関連諸条約の保護法益
  • 主要参考文献・資料
    • I 一次資料
    • II 二次文献
      • (1) 外国語文献
      • (2) 日本語文献
    • 初出一覧
    • あとがき
    • 索引
    • 著者略歴

著者紹介

安藤貴世(あんどう・たかよ)

東京都出身。

1999年東京大学教養学部卒業。2001年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。専門分野は国際法。

2006年~2009年外務省アジア大洋州局北東アジア課に任期付職員として勤務。2009年日本大学国際関係学部助教、同准教授を経て、2016年より日本大学危機管理学部教授。

博士(国際関係)(日本大学)。法務省難民審査参与員を務める。

主要著書:

  • 『紛争と和解の政治学』(共著)ナカニシヤ出版、2013年
  • 『国際法で世界がわかる』(共著)岩波書店、2016年
  • 『国際法のダイナミズム』(共著)有斐閣、2019年

まえがき

序章

第1節 本書の射程

第1項 問題の所在

2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ事件が国際社会に与えた衝撃は計り知れないものであった。それ以降、国際テロリズムに対する法的規制の試みは一層の高まりをみせているものの、依然として我々はテロリズムの恐怖から逃れることができないでいる。たとえば、2013年1月にアルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントにおいて発生したイスラム系武装集団による人質事件では、日本人10人を含む多くの外国人が犠牲となった。また、2016年7月にバングラデシュのダッカにおいて武装集団がレストランを襲撃し、日本人7人を含む多数の犠牲者が生じた。他にも、2015年11月のパリ同時多発テロ事件や、スリランカにおけるキリスト教教会などを狙った2019年4月の連続爆破テロ事件など、テロリズムの事案は世界各地で後を絶たない。

米国同時多発テロ事件以降、テロリズムの発生地国である米国のみならず、国際社会全体が国際連合(以下、国連)の場を中心として国際テロリズムの規制に対する意識を高め、その対処を行ってきているが、国際テロリズムに対する国際法による規制の試みの歴史は古く、実に戦間期にまで遡る。すなわち、テロリズムが国際問題化した第一次世界大戦以降の戦間期から今日に至るまで、国際社会は国際テロリズムに対する法的な対処枠組みを様々に構築してきたのである。

戦間期に端を発する国際テロリズムに対する法的規制について議論する際にまず留意しなければならない点は、依然としてテロリズムに関する国際法上の定義が確立していないという現状である。第二次世界大戦後、国連の場で国際テロリズムが議論されるようになった直接的な契機は、1972年に発生したイスラエルのロッド空港乱射事件と、同年のミュンヘンオリンピックにおけるイスラエル選手人質殺害事件であり*1、特に国連総会においては「国際テロリズム」の定義をめぐる検討が開始された。さらに1996年には、1970年代に設置された「国際テロリズムに関する特別委員会」が、国連総会決議51/210(1996年12月17日)により再設置されるところとなり*2、包括的テロリズム防止条約の起草が進められた。しかしながら、依然としてテロリズムの定義に関しては合意に達しておらず、条約の採択には至っていない(2020年1月時点)。こうした点を主たる背景として、これまでのところ国際テロリズムに対する国際法上の包括的な規制は実現しておらず、その結果として、主に以下の2つの方法による規制枠組みが並存する形となっている。

第一の方法として、テロリズムの犯罪類型ごとに多数国間条約を作成するという、分野別の個別的な対処が挙げられる。すなわち、テロリズムの一般的・包括的定義が存在しないがゆえに、航空機の不法奪取(ハイジャック)などの航空犯罪や人質行為、核テロリズムなどといった、テロリズムの個別の犯罪類型ごとに条約を作成するという手法がとられてきた。こうした手法に基づき、国連やその他の国際機関により作成されたテロリズムに関する普遍的な多数国間条約の数は、国連テロ対策事務局(United Nations Office of Counter-Terrorism)のホームページによれば、条約の改正や、改正議定書も含め、これまでに19にのぼる(以下、テロリズム防止関連諸条約と総称する)*3

これらを採択年順に並べると以下のとおりとなる*4。すべて発効済みであり、このうち日本が締約国となっているものは(1)~(14)である(2020年1月時点)。なお括弧内の名称は条約の略称を示す。

  • (1) 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約(東京条約、1963年署名、1969年発効)
  • (2) 航空機の不法な奪取の防止に関する条約(ハーグ条約、1970年署名、1971年発効)
  • (3) 民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(モントリオール条約、1971年署名、1973年発効)
  • (4) 国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約(国家代表等に対する犯罪防止条約、1973年採択、1977年発効)
  • (5) 人質をとる行為に関する国際条約(人質行為防止条約、1979年採択、1983年発効)
  • (6) 核物質の防護に関する条約(核物質防護条約、1980年署名、1987年発効)
  • (7) 1971年9月23日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書(モントリオール条約補足議定書、1988年署名、1989年発効)
  • (8) 海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(海洋航行不法行為防止条約、1988年署名、1992年発効)
  • (9) 大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書(大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書、1988年署名、1992年発効)
  • (10) 可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約(プラスチック爆薬探知条約、1991年署名、1998年発効)
  • (11) テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約(爆弾テロ防止条約、1997年採択、2001年発効)
  • (12) テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約(テロ資金供与防止条約、1999年採択、2002年発効)
  • (13) 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロリズム防止条約、2005年採択、2007年発効)
  • (14) 核物質の防護に関する条約の改正(核物質防護条約改正、2005年採択、2016年発効)
  • (15) 海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の改正議定書(海洋航行不法行為防止条約の改正議定書、2005年署名、2010年発効)
  • (16) 大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書の改正議定書(大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書の改正議定書、2005年署名、2010年発効)
  • (17) 国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約(北京条約、2010年署名、2018年発効)
  • (18) 航空機の不法な奪取の防止に関する条約の追加議定書(北京議定書、2010年署名、2018年発効)
  • (19) 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約を改正する議定書(東京条約の改正議定書、2014年署名、2020年発効)

第二の方法としては、国連の枠組み、すなわち総会や安全保障理事会(以下、安保理)の決議などによる国際テロリズムの規制・対処が挙げられる。国連総会では、1972年に初めて国際テロリズムの問題が審議されて以降、1970年代後半から1980年代終わりに至るまでほぼ毎年国際テロリズムの防止措置に関する総会決議が採択されてきた*5。また安保理は、米国同時多発テロ事件の翌日に採択された同攻撃を非難する安保理決議第1368号(2001年9月12日)*6をはじめ、テロ資金供与の防止に関する一般的義務を定める安保理決議第1373号(2001年9月28日)*7など、テロリズムに関連する決議を相次いで採択してきた*8

これら第一と第二の対処方法はいずれも、依然として議論の収束の見通しが立たないテロリズムの定義の問題を敢えて避けつつ、国際テロリズムに対する法的規制の枠組みを構築している点に特徴がある。本書は、こうした国際テロリズムに対する二方面からの対処のうち、特に前者の枠組み、すなわちテロリズムの個別の犯罪類型ごとの普遍的な多数国間条約の作成に着目するものである。

一連のテロリズム防止関連諸条約のうち、最初に作成された、「航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約」(1963年、以下、東京条約)と同条約の改正議定書(2014年、以下、東京条約の改正議定書)、さらに管轄権に関する規定を有さない「可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約」(1991年、以下、プラスチック爆薬探知条約)を除く条約はいずれも、二元的構造に基づく裁判管轄権規定を有する点で共通している。すなわち、条約が規定する犯罪行為に対して直接的な利害関係を有する締約国(以下、直接利害関係国)に対し、犯罪行為についての自国の裁判管轄権を設定するため、必要な措置をとる義務を課す、または設定を許容するとともに、仮に犯罪行為に対しいかなる直接的な利害関係を有さなくとも、容疑者が自国の領域内に所在し、その身柄を領域内で拘束する締約国(以下、容疑者所在国)に対し、当該国が直接利害関係国に容疑者を「引き渡さない場合」に、犯罪行為についての自国の裁判管轄権を設定するため、必要な措置をとる義務を課すという管轄権規定である。

さらにこれらの条約は、容疑者所在国の裁判管轄権規定を前提として、容疑者所在国に対し、容疑者を「引き渡さない場合」には、訴追のため自国の権限のある当局に事件を付託する義務を課しており、これは「引き渡すか訴追するか(aut dedere aut judicare)」原則と称される。こうした二元的構造に基づく裁判管轄権規定および「引き渡すか訴追するか」原則は、一連のテロリズム防止関連諸条約の中で最も古い東京条約の次に作成された「航空機の不法な奪取の防止に関する条約」(1970年、以下、ハーグ条約)において初めて設定されたものである。さらに、それ以降に作成されたテロリズム防止関連諸条約においても、プラスチック爆薬探知条約と東京条約の改正議定書を除いて、基本的にこの容疑者処罰の構造が踏襲されている*9

このうち、テロリズム防止関連諸条約において裁判管轄権の設定が義務づけられる、または許容される直接利害関係国に目を向けると、ハーグ条約以降、順次その範囲が拡張されてきた点が注目される*10。管轄権行使に関する国際法の諸原則のうち、犯罪行為との何らかの直接的な連関を根拠に行使される管轄権の諸原則としては、犯罪行為が自国の領域内で行われたという犯罪行為との領域的連関を基礎とする「属地主義」、犯罪行為が自国の国籍を持つ者により行われたという犯罪行為と容疑者との国籍的連関を基礎とする「能動的属人主義」、犯罪行為により自国の国籍を持つ者が被害をこうむったという犯罪行為と被害者との国籍的連関を基礎とする「受動的属人主義」、犯罪行為により自国の重要な国家法益が侵害されたという連関を基礎とする「保護主義」がある。これらは順に、テロリズム防止関連諸条約において、犯罪が行われる領域国(以下、犯罪行為地国)、容疑者国籍国、被害者国籍国、犯罪が何らかの行為を行うこと又は行わないことを強要する目的で行われる場合の強要の対象とされた締約国(以下、被強要国)により行使される管轄権の諸原則であるが、一連のテロリズム防止関連諸条約のうち「人質をとる行為に関する国際条約」(1979年、以下、人質行為防止条約)の成立を以て、直接利害関係国の裁判管轄権として、これら4つの諸原則に基づく管轄権がすべて規定されることとなった。ただし、このうち、従来から非常に議論の多い受動的属人主義に基づく被害者国籍国の管轄権は、「自国が適当と認めるときは」裁判管轄権を設定する義務を負うという形式により、任意規定として人質行為防止条約において初めて導入されている。また、保護主義に基づく被強要国の管轄権は、人質行為防止条約では、被強要国に対し裁判管轄権を設定する義務を課すという義務規定として設定されていたものの、その後に作成された「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(1988年、以下、海洋航行不法行為条約)においては、裁判管轄権の設定を許容するという任意規定へと変化している。

また、二元的構造に基づく裁判管轄権規定と「引き渡すか訴追するか」原則の基盤とも言える容疑者所在国の裁判管轄権規定に関しては、これが普遍主義に基づくものであるか、すなわち普遍的管轄権を設定したものであるか否かという点をめぐり、学説上様々な見解が存在している。普遍主義に基づく管轄権とは、先に述べた管轄権行使に関する諸原則と異なり、犯罪行為との間に直接的な連関を要しない管轄権行使原則であり、「いかなる国の裁判所であれ、自国領域の外で行われた犯罪で、その容疑者あるいは被害者の国籍の面でも、自国国益にもたらす被害の面でも、自国とは関係の無い犯罪について、個々人を裁判にかける能力」を意味する*11。つまり、管轄権行使の対象とされる犯罪行為と訴追国との間に、他の管轄権行使原則(属地主義、能動的・受動的属人主義、保護主義)においてみられるような連関が無くとも、すべての国に当該犯罪行為の容疑者に対する管轄権の行使が認められるとする原則である。

さらに、国際テロリズムに対する国際法の側面からの対処という観点からは、以下の点も見逃すことができない。国際テロリズムに対する法的規制の端緒は戦間期に見い出されるが、国際連盟によるテロリズムに対する取組みの1つとして作成された「国際刑事裁判所の創設に関する条約」(1937年)では、国際刑事裁判所におけるテロリズムの容疑者の訴追が規定されていた。本条約は結局発効に到らず、また、史上初の常設の国際的な刑事法廷たる国際刑事裁判所(International Criminal Court、以下、ICC)の設立は、「国際刑事裁判所に関するローマ規程」(以下、ICC規程)の採択(1998年)、さらに同規程の発効(2002年)を以てようやく実現したが、ICC規程の当初の草案では、テロリズムをICCの対象犯罪とする旨規定されていた。しかしながら最終的な成案においては、テロリズムはICCの対象犯罪から除外され、各国国内裁判所における訴追という従来からの処罰方式が維持されることとなったのである。

第2項 本書の目的および問題意識

これらの点を念頭に本書は、一連のテロリズム防止関連諸条約における国際テロリズムの対処枠組み、具体的には条約が規定する犯罪行為を犯した容疑者の訴追・処罰に関する規定に焦点を当て、国際テロリズムに対する法的な、すなわち国際法による規制について検討するものである。今日では国際テロリズムに対し、「引き渡すか訴追するか」原則が確立していること、さらに本原則は、直接利害関係国と容疑者所在国とに分化した二元的構造に基づく裁判管轄権規定を前提とするものであることに鑑み、本書では、そうした二元的構造に基づく裁判管轄権規定の成立経緯および構造、テロリズム防止関連諸条約において裁判管轄権が設定された直接利害関係国の範囲の拡張過程、さらに容疑者所在国の裁判管轄権が規定された経緯と「引き渡すか訴追するか」原則の構造といった点を明確化することを目的とする。換言すれば、本書の目的は、テロリズム防止関連諸条約における容疑者処罰の基盤たる裁判管轄権規定、さらに「引き渡すか訴追するか」原則を設定する訴追規定の法的構造を明らかにすることにより、テロリズムの容疑者に対する国際的な包囲網が張り巡らされ、容疑者の訴追・処罰を確保するシステムが構築されていく過程を描き出すことにある。

上記の諸点を明らかにすべく、本書では、一連のテロリズム防止関連諸条約のうち、特に4つの条約、すなわち、ハーグ条約、「国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約」(1973年、以下、国家代表等に対する犯罪防止条約)、人質行為防止条約、海洋航行不法行為防止条約を取り上げ、各条約の裁判管轄権規定の起草過程について分析・検討を行う。これら4つの条約を抽出した理由としては、それぞれの条約の裁判管轄権規定の起草過程において、テロリズムの容疑者の訴追・処罰の構造を明らかにするうえで非常に示唆的な議論が行われたことが挙げられる。

まず、ハーグ条約、国家代表等に対する犯罪防止条約、人質行為防止条約の裁判管轄権規定の起草過程において、特に裁判管轄権を有する締約国の拡張に関連し、普遍的管轄権の導入をめぐる重要な議論が行われた。ハーグ条約では、条約が規定する犯罪行為との間に直接的な利害関係を何ら有さない容疑者所在国の裁判管轄権が初めて規定されることとなったが、起草過程に携わった国々がこれを普遍的管轄権を設定したものと認識していたかが論点となる。また、国家代表等に対する犯罪防止条約の草案段階では、直接利害関係国、容疑者所在国といった区別を設けず、すべての締約国に対し等しく裁判管轄権を設定する義務を課すという、いわゆる「絶対的な」普遍的管轄権が設定されていたが、結局こうした一元的な構造を有する管轄権規定は採択されるに至らなかった。さらに人質行為防止条約の草案段階では、国際機関が強要の対象となった場合、その加盟国たる締約国に対し裁判管轄権を設定する義務が課されており、国連などを念頭に置いた場合、普遍的管轄権に準ずる管轄権の導入が意図されていたが、これも採択には至らなかった。

また、先に述べたとおり、テロリズム防止関連諸条約のうち人質行為防止条約において、従来から非常に議論の多い受動的属人主義に基づく管轄権が初めて規定された。さらに、海洋航行不法行為防止条約では、人質行為防止条約において義務規定として設定されていた保護主義に基づく被強要国の裁判管轄権が任意規定へと変化している。

そのうえで本書では、ICC規程の起草過程に注目し、ICCとテロリズムとの関係についても検討を行う。国際テロリズムに対する国際法による規制という観点から、1990年代以降の国際刑事法分野の発展を象徴するICCの設立に際して、テロリズムの容疑者を国際的な刑事法廷で訴追するという国際連盟期に端を発する動きが再び生じたものの、結局テロリズムがICCの対象犯罪となり得なかった点について、その背景・理由を明らかにすることを射程とする。

なお、本書において、テロリズム防止関連諸条約のうち特に上記の条約を取り上げ、その裁判管轄権規定について検討するにあたり、さらにICC規程の起草過程におけるテロリズムの議論について検討するに際し、以下のような問題意識が存在する。ハーグ条約は、以後のテロリズム防止関連諸条約において引き継がれた二元的構造に基づく裁判管轄権規定を初めて設定したことから、テロリズム防止関連諸条約における容疑者処罰システムの原型としての位置づけを有する。対して、裁判管轄権を一層拡張すべく、国家代表等に対する犯罪防止条約の起草過程において、すべての締約国に等しく裁判管轄権を設定するという絶対的普遍的管轄権の導入が提案されたものの、採択に到らず、ハーグ条約と同様の形式の裁判管轄権規定がそのまま引き継がれた。また、人質行為防止条約の起草過程において提案された絶対的普遍的管轄権に準ずる裁判管轄権も、導入に到らなかった。

ここで指摘し得るのは、こうした一連の議論の背景を貫く要素として、テロリズム防止関連諸条約により保護される法益の構造や性質の変化が見い出されるのではないかという点である。これらの条約により保護される法益は、条約が規定する犯罪行為の容疑者の訴追・処罰を通して実効的に確保されるのであり、換言すれば、テロリズム防止関連諸条約に規定された容疑者処罰のための裁判管轄権の構造において、条約が体現する法益が集約されているとも言える。

こうした点に鑑み、本書は、上記のテロリズム防止関連諸条約を取り上げ、その裁判管轄権規定の起草過程を検討することを通し、裁判管轄権の拡張過程を分析するとともに、最終的には、裁判管轄権の一層の拡張が試みられた背景にある条約の保護法益の質的な変化、またはその兆しを描き出すことを試みるものである。さらにこの点と併せ、ICCの対象犯罪からテロリズムが除外された背景・理由を明らかにすることは、ICC規程の起草過程においてテロリズムがいかなる性質を有する国際犯罪として捉えられていたのか、テロリズムにより侵害される法益とはいかなるものか、さらには国際犯罪の類型においてテロリズムはいかなる位置づけを有するのかという論点にも連なるものであり、以下ではこのような問題意識を念頭に検討を進める。

第3項 本書の構成

本書の構成は以下のとおりである。まず本章の次節において、国際テロリズムに対する法的規制に関する先行研究について整理する。

第1章では、議論の前提として、国際テロリズムに対する法的規制の歴史と現状について扱う。戦間期に端を発する国際テロリズムの法的規制の歴史について、国際連盟期と国連設立以降に分けて概観したうえで、これまで作成されたテロリズム防止関連諸条約の概要と、これらに共通する特徴を挙げる。さらに、テロリズムの定義をめぐる議論について、国連における包括的テロリズム防止条約の起草作業も含め、これまでの動向を把握する。

第2章では、一連のテロリズム防止関連諸条約において、二元的構造に基づく裁判管轄権規定および「引き渡すか訴追するか」原則を最初に設定し、テロリズムの容疑者の処罰方式に関し以後のテロリズム防止関連諸条約の原型とも言えるハーグ条約を取り上げる。同条約の裁判管轄権規定および「引き渡すか訴追するか」原則の成立経緯を明らかにするとともに、「引き渡すか訴追するか」原則の基盤たる容疑者所在国の裁判管轄権規定が普遍的管轄権を設定したものであるか否かという論点についても、学説の対立状況を含め検討する。

第3章では、テロリズム防止関連諸条約のうち、国連の場において最初に作成された条約である国家代表等に対する犯罪防止条約を取り上げる。本条約も、二元的構造に基づく裁判管轄権規定を有する点においてはハーグ条約との間に特段の相違はないが、草案段階では、すべての締約国に対し裁判管轄権を設定する義務を課すという一元的な構造を有する裁判管轄権規定が設定されていた。この点に焦点を当て裁判管轄権規定の起草過程を検討することにより、「絶対的な」普遍的管轄権とも称される一元的な構造を有する裁判管轄権規定が退けられ、ハーグ条約と同様の二元的構造に基づく裁判管轄権規定が設定されるに至った背景・理由を明確にする。

第4章では、人質行為防止条約について検討する。人質行為防止条約では、被害者国籍国の裁判管轄権の他に、被強要国、容疑者たる無国籍者の常居所国の裁判管轄権も新たに規定され、直接利害関係国たる締約国の範囲が大いに広がった。他方で、草案段階で規定されていた、強要の対象とされた国際機関の加盟国の裁判管轄権、すなわち普遍的管轄権に準ずる管轄権の導入は実現せず、裁判管轄権を有する締約国の範囲が必ずしも拡張の一途を辿ったわけではない。こうした点を念頭に、人質行為防止条約における裁判管轄権規定の起草過程を検討し、どのような経緯・議論を経て、被強要国の裁判管轄権が規定され、他方で、強要の対象とされた国際機関の加盟国の裁判管轄権が退けられるに至ったのかを明らかにする。

第5章では、海洋航行不法行為防止条約を取り上げ、その裁判管轄権規定の起草過程について、特に被強要国の裁判管轄権規定に焦点を当て検討を行う。具体的には、人質行為防止条約において義務規定として設定されていた被強要国の裁判管轄権、すなわち保護主義に基づく管轄権が、本条約の管轄権規定において任意規定として設定されることとなった背景・理由を明確にする。

第6章では、ICCとテロリズムとの関係について考察する。まずICC規程の草案段階でICCの対象犯罪として規定されていたテロリズムが最終的な成案において対象犯罪から除外された背景・理由、さらに、同規程の改正作業に際してテロリズムに関していかなる議論がなされたかという点を明らかにする。

終章では、結語として、本書で取り上げたテロリズム防止関連諸条約の裁判管轄権規定の成立経緯、特に裁判管轄権を有する締約国が拡張していく過程の分析・検討に基づき、テロリズム防止関連諸条約の容疑者処罰の法的構造について総括する。さらに、第6章のICCとテロリズムとの関係に関する検討も踏まえ、テロリズム防止関連諸条約により保護される法益の性質や、国際犯罪の類型におけるテロリズムの位置づけについて検討し、本書のまとめとする。

なお、上記について検討する際の手法としては、本書で取り上げるテロリズム防止関連条約の草案を起草・審議した国際機関の一次資料、例として、国連やその他の国際機関の諸委員会、諸会議、作業部会などにおける各国政府代表の発言などを収録した議事録、条約草案に関するコメンタリーなどを検討し、それぞれのテロリズム防止関連条約における裁判管轄権規定の成立過程を鮮明に描き出すことにより、国際テロリズムの処罰の法的構造が如何にして形成されたかを明らかにする。また、ICCとテロリズムをめぐる論点についても、特にICC規程の起草過程におけるテロリズムに関する議論に焦点を当て、ICC規程の草案を起草・審議した国連のもとでの諸委員会および諸会議の議事録といった一次資料の検討を行う。

第4項 検討対象の限定、用語の統一

本書では国際テロリズムに対する法的規制のうち、テロリズムの個別の犯罪類型ごとの対処を目的として、国連やその他の国際機関により作成された普遍的な、すなわち国際社会全体に妥当する多数国間条約を検討対象とする。したがって、たとえば欧州評議会により採択された「テロリズムの防止に関するヨーロッパ条約」(1977年)、「テロリズムの防止に関する欧州評議会条約」(2005年)などの地域的な枠組みにおける条約については扱わない*12。また、本書は私人により行われるテロリズムを検討対象とし、国家テロリズムに関しては検討対象から除外する。本書において検討対象から除外する国家テロリズムとは、具体的には、アラブ・アフリカ諸国が主張するところの、植民地主義や人種主義を実行する国家自体が行う行為、すなわち国家機関によるテロリズム行為を指すものとする*13

また本書で用いる用語に関しては、以下のように統一する。本書が検討対象とするテロリズム防止関連諸条約では、条文原文(英語)の“jurisdiction" という語の公定訳として「裁判権」という語があてられている。ただし、これは刑法学での用語法とは異なり、条約の条文における“jurisdiction" は、自国の刑事法の場所的適用範囲、すなわち刑事管轄権を意味するものである*14。また、本書が検討対象とする条約の条文における刑事管轄権とは、裁判管轄権を意味するものであることから*15、本書においては、条約の条文を直接引用する場合や先行研究において言及されている場合を除いては、「裁判権」という用語は用いず、「裁判管轄権」または「管轄権」という用語を用いる。また、テロリズムの定義に関しては、国連における長期におよぶ議論にもかかわらず未だに合意に達していないことも含め第1章において扱うが、「国際テロリズム」とはテロリズム行為が二以上の国家(犯罪行為地国、容疑者国籍国、被害者国籍国、被強要国、容疑者所在国など)に関わる場合を意味する*16。なお、先行研究や国連などにおける議論、さらに本書で検討する条約の起草過程では、「テロリズム」の他に、「テロリズム犯罪」、「テロリズム行為」、「国際テロ行為」など、様々な用語が用いられているが、先行研究や一次資料を引用する場合には、各資料における表現に基づき原文に忠実に表記し、それ以外の場合には基本的に「テロリズム」という用語で統一する。

*1: 初川満「国際社会とテロ規制措置」初川満(編)『テロリズムの法的規制』信山社、2009年、30頁。イスラエルのロッド空港乱射事件(1972年5月)では、イスラエルのテルアビブ近郊にあるロッド国際空港において、3人の日本人テロリスト(日本赤軍)により空港の乗降客28人が殺害された。また、ミュンヘンオリンピックにおけるイスラエル選手人質殺害事件(同年9月)では、ミュンヘンオリンピック開催期間中、パレスチナ人の一団がイスラエル選手村を襲い、選手やコーチなどイスラエル選手団11人が殺害された。

*2: UN Doc. A/RES/51/210(adopted on 17 December 1996). なお本決議に基づき再設置された「国際テロリズムに関する特別委員会」(国際テロ特別委員会)の活動については、本書第1章第4節を参照のこと。

*3: United Nations website, Office of Counter-Terrorism, International Legal Instruments, https://www.un.org/counterterrorism/international-legal-instruments (最終閲覧日: 2020年1月20日). 国連テロ対策事務局は、国連総会決議71/291(UN Doc. A/RES/71/291(adopted on 15 June 2017))に基づき設立された。

*4: これらの条約の概要および特徴については、本書第1章第3節を参照のこと。

*5: 植木俊哉「国際テロリズムと国際法理論」『国際法外交雑誌』第105巻第4号、2007年、5-6頁。

*6: UN Doc. S/RES/1368(adopted on 12 September 2001).

*7: UN Doc. S/RES/1373(adopted on 28 September 2001).

*8: テロリズムに関する総会決議、安保理決議については、本書第1章第2節第2項(1)を参照のこと。

*9: テロリズム防止関連諸条約に共通する特徴としての裁判管轄権規定および訴追規定については、本書第1章第3節第2項を参照のこと。

*10: 裁判管轄権を有する直接利害関係国の範囲の拡張の詳細については、本書第1章第3節第2項(2)(1)を参照のこと。

*11: 最上敏樹「普遍的管轄権論序説―錯綜と革新の構造」坂元茂樹(編)『国際立法の最前線藤田久一先生古稀記念』有信堂、2009年、5頁。最上が引用している定義は、アムネスティ・インターナショナルによるものである。Amnesty International, Universal Jurisdiction: The duty of states to enact and implement legislation, Index number IOR 53/003/2001, Chapter One II-E: Universal jurisdiction and the aut dedere aut judicare rule, p.13, https://www.amnesty.org/download/Documents/128000/ior530032001en.pdf (最終閲覧日: 2020年1月20日).

*12: その他に、テロリズムの規制を目的とする地域的な条約として、米州機構(OAS)における「国際的に保護される者に対するテロ行為の防止および処罰に関するOAS条約」(1971年)や「テロリズムに対する米州条約」(2002年)、アラブ連盟における「テロリズムの防止に関するアラブ条約」(1998年)、イスラム諸国会議機構(OIC)における「国際テロリズムと戦うイスラム諸国会議機構条約」(1999年)、アフリカ統一機構(OAU)における「テロリズムの防止および撲滅に関するOAU条約」(1999年)などがある。初川、前掲注1、50-61頁。

*13: 西井正弘「大規模国際テロと国際法」『国際問題』第505号、2002年、4頁。

*14: 江藤淳一「国際テロリズムに対する刑事管轄権―アメリカの立法―」『比較法』第28巻、1990年、178頁。

*15: 裁判管轄権は司法管轄権とも呼ばれる。

*16: 江藤、前掲注14、178-179頁。

索引

  • あ行
    • アキレ・ラウロ号事件 63, 258, 260, 262
    • アドホック委員会(人質行為防止条約)224, 229, 230, 234, 238
    • アパルトヘイト 47, 80
      • ―アパルトヘイト条約 302
      • ―アパルトヘイト犯罪 303, 312
    • アレクサンダル1世 44
    • イスラム諸国会議機構(OIC) 88
    • エンデベ空港事件 116
    • 欧州評議会 23
    • 欧州連合(EU) 85
    • オサマ・ビン・ラディン 69
  • か行
    • 外国性をもつ犯罪 25
    • 海賊行為 120, 123, 176
    • 海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(海洋航行不法行為防止条約) 13, 62, 256, 261
    • 海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の改正議定書(海洋航行不法行為防止条約の改正議定書) 14, 64
    • 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロリズム防止条約) 14, 71, 81
    • 核物質及び原子力施設の防護に関する条約 61
    • 核物質の防護に関する勧告 60
    • 核物質の防護に関する条約(核物質防護条約) 13, 59, 72
    • 核物質の防護に関する条約の改正(核物質防護条約改正) 14, 61
    • 可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約(プラスチック爆薬探知条約) 13, 15, 66
    • 慣習国際法 120, 129, 302, 317, 336
    • 旗国 64, 76, 115, 256, 273
      • ―旗国主義 115, 148
    • 起訴便宜主義 80, 145
    • 義務的管轄権 76, 85, 138, 142, 258, 267, 270
    • 旧ユーゴスラヴィア 298
    • 刑事管轄権の域外適用に関するハーバード草案 276
    • コア・クライム 290, 310, 318, 319, 336, 367
    • 航空機着陸国 75, 130-132, 136, 269
    • 航空機賃借人所在国 75, 134, 135
    • 航空機登録国 51, 52, 75, 115, 130, 131, 136, 137
    • 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約(東京条約) 13, 15, 50
    • 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約を改正する議定書(東京条約の改正議定書) 14, 15, 52
    • 航空機の不法奪取(ハイジャック) 12, 52, 53, 115, 117
    • 航空機の不法な奪取の防止に関する条約(ハーグ条約) 13, 15, 52, 111, 116
    • 航空機の不法な奪取の防止に関する条約の追加議定書(北京議定書) 14, 54
    • 拷問等禁止条約 253, 305
    • 国際運輸労連(ITF) 137
    • 国際海事機関(IMO) 62, 255
    • 国際刑事管轄権に関する作業部会 298, 299
    • 国際刑事裁判所(ICC) 17, 289
      • ―国際刑事裁判所設立に関するアドホック委員会(アドホック委員会) 298, 307
      • ―国際刑事裁判所設立に関する準備委員会(設立準備委員会) 298, 307
      • ―国際刑事裁判所(ICC)の締約国会議 323, 332
    • 国際刑事裁判所に関するローマ規程(ICC規程) 17, 289, 298
      • ―国際刑事裁判所規程の草案に関する作業部会 298, 300
    • 国際刑事裁判所の創設に関する条約(1937年) 17, 45
    • 国際刑事法 19, 25
    • 国際原子力機関(IAEA) 59
    • 国際航空運送協会(IATA) 135
    • 国際社会全体の利益 180, 367, 369
    • 国際人道法 72, 83
    • 国際定期航空操縦士協会連合会(IFALPA) 142
    • 国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約(国家代表等に対する犯罪防止条約) 13, 57, 165, 172
    • 国際テロリズム 24
    • 国際テロリズムと戦うイスラム諸国会議機構条約 90
    • 国際テロリズムに関する特別委員会(国際テロ特別委員会) 12, 46, 48, 67, 80
    • 国際テロリズムを廃絶するための措置に関する宣言 47, 81
    • 国際犯罪 25, 289, 301, 336, 367
    • 国際法違反の犯罪 25, 367, 372
    • 国際法協会(ILA) 142
    • 国際民間航空機関(ICAO) 50, 111, 165
    • 国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約(北京条約) 14, 56
    • 国際連合(国連) 11, 14, 46, 80, 165, 235, 328, 334
      • ―国連安全保障理事会(安保理) 14, 47
      • ―国連国際法委員会(ILC) 166, 291
      • ―国連総会 12, 14, 46, 170, 224, 297
      • ―国連総会第六委員会(総会第六委員会) 81, 171, 178, 182, 190, 225, 229, 298, 310
      • ―国連テロ対策委員会(CTC) 47
      • ―国連テロ対策事務局 12
    • 国際連合要員及び関連要員の安全に関する条約 307
      • ―国連要員等に対する犯罪 307, 309
    • 国際連盟 17, 44
    • 国家代表等に対する犯罪防止条約 13, 57, 165
    • 固定プラットフォーム 65
  • さ行
    • 罪刑法定主義 316
    • シージャック 63, 260
    • 自衛権 47
    • 自決権(民族自決権) 89, 90
    • 集団殺害犯罪(ジェノサイド) 290, 302, 307
      • ―集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド条約) 297, 302
    • 自由の戦士(freedom fighters) 49, 89
    • 受動的属人主義 16, 219, 220, 230
    • ジュネーヴ諸条約 59, 302
    • ジュネーヴ諸条約の追加議定書 59, 90
    • 条約犯罪 290, 303, 304, 309, 311, 320, 337
    • 条約法に関するウィーン条約 91
    • 植民地主義 23, 49, 90
    • 諸国の共通利益を害する犯罪 25, 339, 367, 371, 372
    • 人道に対する罪(人道に対する犯罪) 290, 302, 307, 313, 321
    • 侵略犯罪 290, 297, 302, 307, 324, 329, 331
    • 政治犯罪 68, 131, 136, 147
    • 政治犯不引渡しの原則 131, 147
    • 世界主義 122
    • 戦争犯罪 290, 307
    • 属地主義 16, 186, 189, 192, 219
    • 訴追するか引き渡すかの義務事件 32, 253
  • た行
    • 大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書(大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書) 13, 64
    • 大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書の改正議定書(大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書の改正議定書) 14, 66
    • 代理処罰主義 119, 124, 125, 152, 245
    • 中国国際航空機ハイジャック事件 116
    • 通貨偽造罪 276
    • テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約(爆弾テロ防止条約) 13, 67
    • テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約(テロ資金供与防止条約) 13, 69, 81, 82, 89
    • テロリズムの防止及び処罰に関する条約(1937年) 45, 82
    • テロリズムの防止に関するアラブ条約 316
    • テロリズムの防止に関する欧州評議会条約 23
    • テロリズムの防止に関するヨーロッパ条約 23
    • テロリズム防止関連諸条約 12
    • 東京条約 13, 15, 50, 74, 115, 130 , 145
    • 東京条約の改正議定書 14, 15, 52
    • 特別準備委員会(海洋航行不法行為防止条約) 261, 266, 268, 274
    • 奴隷貿易 176
  • な行
    • 内乱罪 276
    • 二元的構造に基づく裁判管轄権規定 15, 54, 74, 111, 118, 166, 179, 367
    • 任意的管轄権 76, 85, 140, 143, 258, 267, 268, 270
    • 能動的属人主義 16, 193, 219
  • は行
    • ハーグ外交会議 116, 134, 137, 142, 146
    • ハーグ条約 13, 15, 52, 73, 77, 78, 111, 183, 302
    • ハイジャック 52, 53, 115-117, 120, 187
    • 爆弾テロ防止条約 13, 67, 81
    • パレスチナ解放戦線(PLF) 63, 260
    • 犯罪行為地国 16, 75, 124, 189, 192
    • 犯罪人引渡し 68, 124, 131, 256, 273
      • ―犯罪人引渡条約 146, 260
    • 被害者国籍国 16, 75, 220, 230, 258, 266, 268
    • 被強要国 16, 75, 220, 234, 256, 258, 266, 268, 270, 276
    • 引渡請求 122, 124, 128, 197, 200, 235, 239, 256, 273
    • 「引き渡すか訴追するか」原則 15, 78, 79, 111, 114, 119, 144, 198, 238, 253, 273, 302, 305, 315
    • 非同盟諸国 85, 90
    • 人質をとる行為に関する国際条約(人質行為防止条約) 13, 58, 220, 225, 270
    • 普遍主義 16, 112, 119, 125, 176, 219
    • 普遍的管轄権 17, 18, 112, 119, 125, 138, 140, 143, 151, 177, 180, 235, 243, 302, 305, 365
      • ―「准普遍的」管轄権 121, 124, 166, 183, 188
      • ―「真の」普遍的管轄権 121, 123, 152, 166, 245
      • ―「制限的な」普遍的管轄権 166, 187, 245
      • ―「絶対的な」普遍的管轄権、絶対的普遍的管轄権 19, 152, 166, 175, 201, 244
    • プラスチック爆薬探知条約 13, 15, 66, 74
    • フランス革命 44
    • 米国同時多発テロ事件 11, 47, 54, 56, 69, 71, 341
    • 北京議定書 14, 54
    • 北京条約 14, 56
    • 包括的テロリズム防止条約 80, 84, 86, 328, 330, 334
    • 補完性の原則 290, 336
    • 保護主義 16, 219, 220, 256, 266, 272, 276
    • 保護法益 20, 367
  • ま行
    • マネー・ロンダリング 70
    • 麻薬等の不正取引 176, 297, 307, 312
      • ―麻薬等の不正取引の防止に関する国連条約 305
    • ミュンヘンオリンピックにおけるイスラエル選手人質殺害事件 12, 46, 224
    • 民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(モントリオール条約) 13, 54
    • 民族解放闘争 49, 59, 89, 224
    • 無国籍者の常居所国 75, 220, 227, 229, 266, 268
    • モントリオール条約 13, 54, 183, 192
    • モントリオール条約補足議定書 13, 61
  • や行
    • 薬物犯罪 290, 303, 306
    • 容疑者国籍国 16, 75, 193
    • 容疑者所在国 15, 16, 53, 74, 77, 79, 111, 118, 119, 125, 137, 145, 151, 177, 186, 196, 198, 200, 237, 239, 245, 256, 273, 365, 366, 368
    • ヨーロッパ犯罪人引渡条約 145
  • ら行
    • 臨検 64
    • ルイ=バルトゥ 44
    • ルワンダ 298
    • ローマ会議(1998年) 291, 298, 310, 320
      • ―ローマ会議の最終文書 321, 323, 325
    • ロッカビー事件 66
    • ロッド空港乱射事件 12, 46
    • ロベスピエール 44
  • A~Z
    • aut dedere aut judicare 15, 79
    • BCN兵器 56, 64
    • CTC 47
    • EU 85
    • freedom fighters 49, 89
    • IAEA 59, 71
    • IATA 135
    • ICAO 50, 53, 54, 61, 66, 111, 116, 129, 165, 185
    • ICC 17, 289
    • ICC規程 17, 289, 322
      • ―ICC規程の改正に関する作業部会(改正作業部会) 323, 328, 333, 335
      • ―ICC規程の検討会議(2010年検討会議) 290, 322, 325, 328
      • ―ICC規程の検討会議に関する作業部会(検討会議作業部会) 326, 328, 331
      • ―ICC規程の検討会議に関する事務局作業部会(検討会議事務局作業部会) 326, 328, 331
      • ―ICC規程の再検討メカニズム 320, 322
    • IFALPA 142
    • ILA 142
    • ILC 166, 170, 175, 177, 291, 297, 299
    • IMO 62, 65, 256, 260
    • ITF 137
    • OIC 88, 90
    • PLF 63, 260
    • safe havens 79, 175