北東アジア学創成シリーズ 5 現代中国の社会ガバナンス: 政治統合の社会的基盤をめぐって
国内社会のグローバル化により、流動化、多元化する政治社会の統合をはかる社会ガバナンスの特徴と問題性を明らかにし、党・国家主導の中国型の国民国家建設、それと表裏一体をなす権威主義体制の行方を考察する。(2021.3.20)
定価 (本体4,200円 + 税)
ISBN978-4-87791-309-0 C3031 319頁
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- 序章 現代中国の社会ガバナンスと政治統合
- 1 問題の位相
- 2 現代中国の社会ガバナンスと政治統合をめぐる諸考察
- (1) 社会ガバナンス: グローバリゼーションと新たな政治統合の模索
- (2) 政治統合の分析枠組み
- (3) 現代中国の政治統合の独自性と普遍性: 北東アジア学創成の試みの文脈において
- 3 本書の構成
- 序章 現代中国の社会ガバナンスと政治統合
- 第1部 グローバリゼーションの制度化
- 第1章 社会主義市場経済体制における所有権改革と基層社会の変容: 物権法と転形期の政治社会
- はじめに
- 1 物権法の制定とその意義: 市場経済化の過程における「法治」建設
- 2 所有権をめぐる基層社会の諸動向
- (1) 基層社会の近代化
- (2) 基層社会における所有権問題の諸相
- 1) 都市における住宅の所有権問題: 業主委員会をめぐって
- 2) 農村地域における土地所有権問題: 土地収用をめぐって
- おわりに
- 第1章 社会主義市場経済体制における所有権改革と基層社会の変容: 物権法と転形期の政治社会
- 第2部 都市ガバナンス
- 第2章 基層社会の再編と党の役割: 都市の社区建設と政治・社会統合の試み
- はじめに
- 1 市場経済化の過程における基層社会の再編と党の役割: 政治文化論の視点から
- 2 社区建設の動向と党の役割: 山東省青島市の事例から
- (1) 社区建設の政策とその展開: 中央-地方関係の視点から
- (2) 青島市における党のリーダーシップと社区建設
- おわりに
- 第3章 都市の社区建設と社会管理: 山東省の事例を中心に
- はじめに
- 1 都市の社区建設と社会管理の展開
- 2 山東省における社区建設と社会管理: 事例調査を中心に
- (1) 調査地域の概観
- (2) 事例調査
- 1) 山東省青島市X社区
- 2) 山東省煙台市Y社区
- おわりに
- 第4章 都市における流動人口問題と社会ガバナンスのとりくみ: 北京市の事例を中心に
- はじめに
- 1 流動人口問題とその政策課題: 農民工の市民化に向けて
- 2 社会ガバナンスのとりくみと流動人口問題: 北京市を事例にして
- (1) 北京市における社会ガバナンスのとりくみ
- (2) 社区における流動人口問題
- おわりに
- 第2章 基層社会の再編と党の役割: 都市の社区建設と政治・社会統合の試み
- 第3部 農村ガバナンス
- 第5章 広西チワン族自治区における村民自治の制度化: 周縁地域における国民国家の再編
- はじめに
- 1 広西チワン族自治区の概況: 調査村における問題の位相
- 2 広西チワン族自治区における村民自治の諸相
- (1) 統治構造の溶解と村民自治の実践
- (2) 「村規民約」と村民自治
- (3) 村民自治の制度的発展: 「村民自治章程」を中心に
- (4) 党と村民委員会: 「両委聯席会議制度」とその政治的含意
- おわりに: 国民国家の再編過程における村民自治の諸相
- 第6章 農村地域におけるアクターと統治の再編: 「村官」政策の動向をめぐって
- はじめに
- 1 農村地域のアクターの多元化と農村統治の問題性: 非政治的・半政治的なエリートと大衆の流動化
- 2 「村官」政策の実施と統治構造の再編の試み: 江蘇省を事例にして
- (1) 「村官」政策の試み
- (2) 江蘇省における農村政策の展開: 「村官」政策の動向をめぐって
- (3) 「村官」政策の統治構造への影響とその課題
- おわりに: アクターからみた農村地域の統治構造
- 第5章 広西チワン族自治区における村民自治の制度化: 周縁地域における国民国家の再編
- 第4部 中国型「国民」統合の試みと対外政策へのインプリケーション
- 第7章 現代中国の国家建設と「公民社会」のガバナンス: 市民社会・ボトムアップ型国家コーポラティズム・人民社会をめぐって
- はじめに
- 1 近代化のプロセスと国家建設: 伝統との連続性と断絶性
- (1) 官僚制支配と国家・社会関係の諸相
- (2) 中国共産党の「領導」の権力観: 政治文化論の視点から
- 2 現代中国の政治社会の変容と「公民社会」という課題の顕在化: 市民社会、ボトムアップ型国家コーポラティズム、人民社会をめぐって
- (1) 都市の社区建設の諸動向
- 1) 「維権」と社区建設の変化: 「所有権」意識の浸透と市民社会の萌芽
- 2) 「社区協調理事会」とボトムアップ型国家コーポラティズム
- (2) 党・国家主導の統治改革と「人民社会」: 大衆路線を例にして
- (1) 都市の社区建設の諸動向
- おわりに: 「新常態」における「公民社会」の行方
- 第8章 「協商民主」の展開と国家ガバナンスの再構築: 基層社会の「民主懇談」、「郷賢参事会」を事例にして
- はじめに
- 1 「協商民主」をめぐる諸考察
- (1) 「協商民主」の概念と機能
- (2) 「協商民主」の普遍性と独自性
- (3) 「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」と手段としての「協商民主」
- (4) 非制度的な領域の存在と社会関係資本(social capital): 政治文化論の問題の系譜
- 2 基層社会における「協商民主」の多様な実践: 浙江省の事例を中心にして
- (1) 「民主懇談」(浙江省温嶺市): 市民参加の「民主決策」と協商型権威主義体制の再構築
- (2) 「郷賢参事会」(浙江省湖州市徳清県): 「農村エリート(郷村精英)」のリクルートと三位一体のガバナンスの試み
- おわりに
- 第9章 習近平政権における国内政治の諸動向と対外政策へのインプリケーション: 「人民」統合の過程を中心にして
- はじめに
- 1 中国外交と国内政治の関連性をめぐる諸論議: 対外的な積極化を契機として
- (1) 中国外交の積極化と国内政治の諸要因
- (2) 習近平政権の対外政策と国内政治の動向
- 2 習近平政権における大衆路線と国内政治の諸動向: 党・国家主導の「人民」統合の過程を中心にして
- (1) 習近平政権における大衆路線の政治過程
- (2) 大衆路線と党・国家による政治的、社会的ガバナンスの再編の諸特徴
- 3 対外政策へのインプリケーション: 日中関係を参照して
- おわりに
- 終章 現代中国における社会ガバナンスと中国型の国民国家建設の行方
- 1 社会ガバナンスへの転換の試みと基層社会の政治統合
- 2 中国型の国民国家建設の試みと権威主義体制の構築への示唆
- 第7章 現代中国の国家建設と「公民社会」のガバナンス: 市民社会・ボトムアップ型国家コーポラティズム・人民社会をめぐって
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- あとがき
- 参考文献
- 初出一覧
- 索引
- 著者紹介
江口 伸吾(EGUCHI Shingo)
- 1968年 神奈川県生まれ。
- 1992年 成蹊大学法学部政治学科卒業。
- 2000年 成蹊大学大学院法学政治学研究科政治学専攻博士後期課程満期退学。
- 同年より島根県立大学総合政策学部助手。2004年成蹊大学より博士号(政治学)取得。2007年より島根県立大学総合政策学部・同大学院北東アジア研究科(2009年に北東アジア開発研究科に改組)准教授をへて、現在、同教授、同大学北東アジア地域研究センター研究員。専門は、現代中国政治、政治社会論。
【主要著書】
『中国農村における社会変動と統治構造―改革・開放期の市場経済化を契機として』(単著、国際書院、2006年)、『日中関係史 1972~2012 I 政治』(共著、東京大学出版会、2012年)、『Minervaグローバル・スタディーズ3/中国がつくる国際秩序』(共著、ミネルヴァ書房、2013年)、『中国式発展の独自性と普遍性―「中国模式」の提起をめぐって』(共編著、国際書院、2016年)、『変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国―外交・内政・歴史』(共編著、国際書院、2018年)、『よくわかる現代中国政治』(共著、ミネルヴァ書房、2020年)など。
序章 現代中国の社会ガバナンスと政治統合
1 問題の位相
現代中国の国内社会は、改革開放期、とくに1992年から始まる社会主義市場経済体制におけるグローバリゼーションと連動する市場経済化により、経済、社会活動を中心とした急速な発展がもたらされた一方、流動化、多元化も一挙に進み、それに伴う格差の拡大、腐敗問題などの社会問題も深刻化し、政治社会の不安定化が懸念されるようになった*1。この結果、社会の安定を維持すること(「維穏」)を第一の目的とする社会管理が強く求められるようになった*2。
この一連の過程は、現代中国における新たな政治統合の課題が生じたことを示す。すなわち、市場経済化に代表される改革開放政策は、社会のエネルギーを解き放った一方、その変化は、これまで自覚化する必要性が少なかった政治社会の構成員の考え方、意見、利益の相違をもたらし、それらの相違を自覚的に調整して、「同意」の形成と「強制」を駆使しながら一つの社会としてまとめる「統合の機能」が求められるようになったと捉えられる(有賀ほか、1994: 6-15)*3。しかも、この変化は1980年代以降の新自由主義の世界的な席巻に起因するグローバリゼーションと連動するがゆえに、国内の社会変動ばかりでなく、国境を越えた構造変動の過程にも組み込まれ、根源的な変化を伴うという意味において、「同意」の形成と「強制」の上に成立する政治統合はより難解な課題を背負った*4。
これらの政治統合の諸課題を踏まえると、現代中国の政治統合は、党・国家が社会を一方向的にコントロールし、社会的な安定を維持することに力点が置かれた社会管理だけではなく、むしろ両者が双方向的にとりくむ政治手法としてのガバナンス(「治理」)をとりいれることによって、社会の変化に機能的、効率的に対処することが強く求められていることが明らかとなる。とくに2013年11月12日、党第18期中央委員会第22回全体会議(以下、党第18期三中全会)において、「中共中央による改革の全面的な深化に関する若干の重大問題の決定」がなされ、「改革の全面的な深化の総目標は、中国の特色ある社会主義制度を完全に発展させ、国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化を推進する」*5ことが強調されるとともに、この決定の13章において、「社会ガバナンス体制の革新」と題する項目が新たに設けられ、その重要性が強調された*6。また、2017年10月18日、党第19期全国代表大会における習近平による「小康社会の全面的完成の決戦に勝利し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取ろう」と題する政治報告のなかで、2020~35年の第一段階において、「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」を基本的に実現し、且つ2035年~今世紀中葉、すなわち建国100周年を迎えるまでの第二段階において、その実現を完成し、社会主義現代化強国を築くことが明示され、この動向を決定づけた(習、2017a: 28-29)。
本章では、以上の問題関心を踏まえて、現代中国、とりわけ社会主義市場経済体制における社会ガバナンスと政治統合をめぐる諸論点、並びにそれに関する研究動向を整理し、本書の各事例研究に通底する課題を明らかにする。また、社会ガバナンスという視点から、グローバリゼーションの国内化の過程で変化を強いられ続ける現代中国の政治統合をその社会的基盤の形成過程に焦点を当てて考察することにより、今後の中国の政治統合の行方を分析するための一つの視座を提示することを試みる。
2 現代中国の社会ガバナンスと政治統合をめぐる諸考察
(1) 社会ガバナンス: グローバリゼーションと新たな政治統合の模索
2013年11月の党第18期三中全会において「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」が改革の全面的な深化の総目標として掲げられたことにより、「ガバナンス(「治理」)」は中国政治の最も注目される概念の一つとなった*7。また、「ガバナンス」は、従来から用いられてきた「統治」とは異なる意味をもち、中国の代表的な政治学者である兪可平(北京大学政府管理学院院長、同大学城市治理研究院院長、元中央編訳局副局長) は、(1)権威主体、(2)権威の性質、(3)権威の起源、(4)権力行使の方向性、(5)影響範囲から両者の違いを考察し、「統治」において、政府が単一的な主体として強制性を伴いながらトップダウンで権力行使する一方、「ガバナンス」において、政府を含めた各種の社会組織が多元的な主体として、強制性ばかりでなく協議性を重視しながら平行的な意思決定を進め、民衆の要求をとりいれた社会公共秩序を維持することに特徴があることを指摘した(表0-1)*8。さらに、この両者の関係性をみると、ガバナンスは、「より少ない統治とより多くのガバナンス(「少一些統治、多一些治理(less government and more governance)」)」というグローバリゼーションの過程で顕在化した21世紀の世界の主要国家に共通する政治的変化の特徴としてもあげられ、中国の政治改革が、国際社会の変化と連動して進められている側面があることも示唆される(兪、2018b: 2-3)。
他方、このガバナンスへの高まる注目は、現代中国における政治改革が中国に固有な文脈のなかで展開していることも示す。たとえば、兪が指摘するように、ガバナンスは国家の目的合理性を体現するものと明言し、党・国家が果たす役割、機能を重視するという点において、党第18期三中全会で決定された「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」の理論化をはかったと言える(兪、2014: 2-3、2018b: 3-4)。また、ガバナンスの現代化の試みを民主的ガバナンス(「民主治理」)の過程として捉えることにより、中国の実情に則した政治改革を進める意図もある。すなわち、政治改革を評価する基準は、一般的に(1)多党による競争が存在するか否か、(2)政治的指導者が民主的な自由選挙によって選出されているか否か、(3)三権分立がなされているか否かといった視点から判断されるが、それを「西欧政治モデル」として位置づけるとともに、それに代わって政府管理体制を重点とした国家ガバナンス改革を中国の政治改革を評価する基準に据えた(兪、2018b: 6-8)。国家ガバナンス改革の具体的な内容はさまざまな観点があるが、兪の研究では、(1)党の建設、(2)根本制度としての人民代表大会、(3)基層民主、(4)協商民主、(5)政治監督、(6)行政改革、(7)政府責任、(8)公共サービス、(9)公共政策、(10)社会ガバナンスがあげられた(兪、2018b: 9-19)*9。
このなかでも、社会ガバナンスは、党第18期三中全会でとくに注目された。すなわち、「中共中央による改革の全面的な深化に関する若干の重大問題の決定」の13章において「社会ガバナンス体制の革新」というテーマが設けられ、「最も広大な人民の根本利益を守り、最大限度に調和要素を増加し、社会発展の活力を増強し、社会ガバナンスの水準を高め、平穏な中国の建設を全面的に推進し、国家安全を守り、人民の安定した生活・就業環境と社会安定の秩序を確保しなければならない」としてとりあげられたとともに、(47)~(50)の4項目にわたってその課題が具体的に示された(表0-2)。また、2017年10月の党第19期全国代表大会においても、「共同建設・共同ガバナンス・共有を旨とする社会ガバナンスの枠組み(「共建共治共享的社会治理格局」)」として継承、発展し、より一層重視されるようになった(習、2017: 49)。
このように提示された社会ガバナンスは、従来から用いられてきた社会管理と比較した場合、社会秩序を維持するために公共利益の実現をはかる公共管理の実践の構成要素であることが共通する一方、両者には重要な違いがあることが指摘された。すなわち、社会管理は、政府が主体となって、一方向的な上位下達の過程を通して、社会公共事務を管理する特徴があるのに対して、社会ガバナンスは、国家ガバナンスに対応するように、政府と社会が主体となって、多方向的な話し合いと協力を通して、公民による社会公共事務の自己管理と自治を進めることが強調された(表0-3)。この結果、前者が管理する主体と客体が二元的な関係性を有するのに対して、後者が主体の多元化とそれぞれが積極的に参加することによって社会公共事務にとりくむこととなり、多元的、動態的な関係性を軸にして構成されることとなった*10。
また、このような多元的、動態的な社会ガバナンスへの移行は、グローバリゼーションを背景にした市場経済化の過程で複雑化する中国の政治社会の変化に対応する必要性が高まったことに大きく起因する。すなわち、社会主義計画経済期から改革開放初期における政治社会は、主として「政府・社会」関係のみで捉えることができた一方、市場経済が本格的に導入された社会主義市場経済体制において、その政治社会は、「政府・社会」関係に加えて「政府・市場」「市場・社会」関係からも構成されるようになり、それらの相互関係を調整することにより社会秩序を維持することが求められるようになった*11。この結果、複雑化する政治社会を統合するための手法としての社会ガバナンスの必要性が強く認識されるとともに、その統合の理念として、上述の「共同建設・共同ガバナンス・共有を旨とする社会ガバナンスの枠組み」(2017年)が据えられた(図0-1)。
社会ガバナンスに関する研究は、政治社会の多方面にわたる領域、すなわち、(1)社会保障体制、(2)事業単位体制、(3)公共安全体制、(4)社会組織管理体制、(5)社会工作体制、(6)社区ガバナンス体制などの諸領域において進められた(周、2018: 347-353)。本書では、主として都市、農村の基層社会の社区ガバナンス体制の動向を考察するが、中国国内の社会ガバナンス研究は、最も関心の高い研究領域の一つとなっている。たとえば、(1)中国の社会学研究における理論的考察を進めた丁(2016)、張(2019)、(2)制度とその実践を考察した?(2014a)、国務院発展研究院中心公共管理与人力資源研究所“我国社会治理創新発展研究"課題組(2018)、(3)都市の社区ガバナンスに焦点を当てた李友梅等(2014)、周・曹(2019)、(4)全国の事例を紹介した于・李(2017)、王(2019)、(5)社会リスクや信訪・上訪(陳情)に焦点を当てた樊(2016)、童(2018)などの先行研究があげられ、多様な観点から研究が進められた*12。
日本においては、主として政治学・政治社会学、および社会学のそれぞれのアプローチから社会ガバナンスの問題がとりあげられた。たとえば、前者の政治学・政治社会学のアプローチに関しては、ガバナンスの視点から基層社会の諸問題を考察した菱田(2010)、「圧力政治体系」から基層社会における信訪・上訪(陳情)のメカニズムを実証的に検証した毛里・松戸(2012)などの先駆的な研究がある。また、2013年の「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」の提起以降、菱田・鈴木(2016)、小嶋・島田(2017)などにおいて、党・国家・社会にわたる重層的な国家・社会ガバナンスに関する考察が進められた。他方、後者の社会学のアプローチでは、李妍?(2018)、南・閻(2019)、田原(2019)などが、フィールド調査に基づきながら、都市、農村の基層社会における人々の生活の営みの実態を実証的に明らかにした。
本書では、以上の先行研究を踏まえ、主として政治学・政治社会学の方法論を援用し、社会学のフィールド調査もとりいれながら、市場経済化に伴う社会変動による政治社会の流動化、多元化とそれをコントロールする政治手法としての社会ガバナンスとの関連性を問い、政治統合の可能性と限界性を検証する。とくに胡錦濤政権から習近平政権の時期を中心にして、都市、農村の基層社会の変化に関する事例研究を通して考察し、社会管理から社会ガバナンスへ移行する過程を実証的に検討する。
(2) 政治統合の分析枠組み
現代中国における政治統合の考察は、党・国家が主導する政治体制における制度的側面だけでなく、むしろそれが依拠する政治社会の変化を視野に収める必要がある。とくにグローバリゼーションを背景にした市場経済化は、中国の政治社会の流動化、多元化を促し、その構成員が自覚的に「同意」の形成と「強制」を駆使することによって一つの社会としてまとめる政治統合の必要性を高め、それを実現する政治手法として「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」「社会ガバナンス体制の革新」が強調されるようになった。すなわち、政治統合の考察は、統合と分離の相反するベクトルが交錯する政治社会の動的な変化の過程に焦点を当てることにより、制度的考察だけではみえにくい政治社会のさまざまな変化とそれと関連する国内政治の諸動向が相互連関的に展開する政治過程を明らかにすることを課題とする*13。
本書は、現代中国の政治社会、とりわけ都市、農村の基層社会のガバナンスを主たる分析対象とする。中国では、その建国以来、都市と農村を分けた社会管理体制が敷かれ、それぞれの基層政権、すなわち都市における市区政府の派出機構である街道弁事処、農村における郷鎮政府による行政管理が実施され、それぞれに居民委員会、村民委員会の住民自治組織が作られ、独自の国家・社会関係に基づく政治社会を築いてきた(図0-2)。また、各レベルの行政機関だけでなく、住民自治が実施される社会組織においても党委員会が設置され、党・国家体制は、末端の政治社会にまで浸透した。他方、社会主義市場経済体制への移行は、基層社会にさまざまな問題、すなわち国有企業改革と失業者の発生、単位の解体と社区建設、権利意識の高まりと維権運動、流動人口の管理、土地収用問題、社会治安の維持などの諸問題をもたらし、基層社会における党・国家体制を動揺させ、政治統合の再編が進められた*14。
また、本書では、基層社会における政治統合の過程について、それを構成する主として4つの領域とそれに属する7つの要因に留意して考察する。すなわち、(1) 党・国家体制((1)共産党・国家組織)、(2) 党・国家と社会をつなぐ回路としての政策フィードバック過程((2)政策・イデオロギー、(3)民主制度)、(3) 自治組織・各種社会組織((4)基層社会の自治組織・各種社会組織)、(4) 構成員と社会的属性((5)公民(市民)・人民・大衆(中国型国民国家の諸アクター)、(6)血縁・地縁・差序関係ネットワーク(政治文化・社会関係資本)、(7)個人)のそれぞれに留意して、それらが多元的、多層的に相互影響を与えながら政治統合を進める実態を考察する(図0-3)。
(3) 現代中国の政治統合の独自性と普遍性: 北東アジア学創成の試みの文脈において
本書は、社会ガバナンスという視点から現代中国の政治統合を考察する試みであるとともに、北東アジア学創成の試みの一環としても位置付けられる。北東アジア学について、本書もその一冊として含まれる北東アジア学創成シリーズの第1巻を執筆した宇野重昭は、「地域研究としては北東アジアの現実から出発し、北東アジアの現場の中から世界史的課題を抽出し、その北東アジアから見た世界史的課題を世界全体の歴史的動向の中において比較考察し、さらには世界化された北東アジアの原理において、再び北東アジアの現場研究を体現化していこうというのである」(宇野、2012: 10)、また「北東アジア学はアジア地域研究から出発し、北東アジアの現実を通し、世界史的観点から、その課題を考え直そうとするもの」(宇野、2012: 25)として捉え、その試みの意図を提示した。すなわち、宇野は、地域研究として北東アジアの独自性を明らかにするとともに、世界史的観点からその普遍性を検討し、さらには両者の相互往還的な考察を進めることを通して、学問的な方法論としての北東アジア学に意義が見出されることを強調した*15。
この点について、政治学・政治社会学のアプローチから現代中国の政治統合の考察を進める本書の問題関心に照らすと、19世紀のアジアにおける「西欧の衝撃」から今日に至るまで課題であり続けている国民国家建設(nation-state building)が避けることのできない論点として立ちあらわれる。すなわち、17世紀に端を発する理性・科学の発展を背景にした市民革命と産業革命の二重革命を経て、西欧では近代国民国家が誕生する一方、19世紀半ばのアヘン戦争は、中国に王朝支配の帝国的政治秩序から近代国民国家形成への転換を迫り、その後革命運動を伴いながら、現在の中華人民共和国が生まれ、これらの一連の過程を経て、その内に西欧を組み込まざるをえなかった一つの中国型国民国家に収斂した。この過程について、宇野の言葉を借りるならば、世界史的観点から普遍性として「人類の共通課題である国家、その“支配"の正当性を担保する民主主義的制度、そして制度を支える『公』の意識の変遷過程分析」が焦点に当てられる一方、北東アジア最大の存在である中国を例にとると、その独自性として「国家論としては、いわゆる新型国家(国民国家の枠を超える巨大な超国家)の可能性、民主主義論としては欧米と異なる上からの指導を不可避とする“民主集中型の人民民主主義"の実情、そして思想的には『伝統的天下意識』から欧米的(マルクス主義を含む)『公』優先の意識への転換」という論点が次々と露わになる(宇野、2012: 32)。この視点は、グローバリゼーションに巻き込まれる現代中国の政治統合を考察する際にも同様に当てはまり、たとえば、その普遍性として、本書でもとりあげられる「governance(「治理」)/ガバナンス」「civil society(「公民社会」)/市民社会」「deliberative democracy(「協商民主」)/討議デモクラシー(熟議民主主義)」といった概念が提起される一方、その実践は固有の論理に基づく側面が強く、しばしば元来の意味とは相反するほど大きく歪められて運用される実態が観察される*16。
また、このような独自性と普遍性の相互往還的な考察を前提とした上で、宇野は、新しい学問分野を開拓するという目的から、あえて「情念(passion)」という概念を提示することにより、理性では捉えられない人々の感情的、無自覚的な行動様式に着目し、いわば地域研究の独自性が形成される過程を明らかにしようとした(宇野、2012: 17-22)*17。日本において、情念論は、主として政治的言説を考察する政治思想の研究領域で問題提起され、「『情念』という視角が、『利益』や『理性』には還元しがたい政治社会の複合的な諸様相に光を当てることができるのではないか」「情念を、制御されるべき非理性的なもの(反知性的なもの、病理的なもの等々)とみなすのではなく、それが人々のどのような規範的判断/期待を表しているか」に注目して論議された(齋藤、2010: 12)。他方、その言説はそれを受けいれる諸社会集団との相互作用が前提とされており、従来、政治社会学、政治文化論が対象としてきた政治社会における非合理的、非理性的と捉えられる行動様式の分析と大きく重なる*18。本書が分析対象とする現代中国の基層社会は、市井の人々が活動する領域であることもあり、「情念」が政治社会に果たす社会的機能は少なくなく、本書では、政治統合の非制度的側面、とりわけ図0-3の要因(6)「血縁・地縁・差序関係ネットワーク(政治文化・社会関係資本)」、並びに(2)「政策・イデオロギー」、(5)「公民(市民)、人民、大衆(中国型国民国家の諸アクター)」におけるイデオロギーと大衆動員による国民統合の問題との関連でこの点を検討する。
さらに言うならば、以上の中国型国民国家の独自性と普遍性の相互往還的な考察の試みは、世界史的課題としての近代国民国家建設に関する比較考察ばかりでなく、現代国際社会で急速に存在感を増しつつある権威主義体制に関する比較考察を進めるための一つの参照軸を提供するであろう。たとえば、Diamondほか(2016)では、20世紀後半以降の世界的潮流として、(1)1970年代の「民主化の第3の波」?2005年頃の「民主化のうねり」、(2)2005年以降の権威主義の反動期、(3)近年の中国、ロシア、イラン、サウジアラビア、ベネズエラの権威主義「5大国」の興隆に代表される「権威主義のうねり」があげられており、その象徴的な存在となる、一党支配の党・国家体制を堅持する中国の動向は、今後の権威主義の行方を占う試金石になるものとして注目されている。とくに、中国の国民国家形成の過程を顧みるならば、その淵源には、皇帝支配による王朝システムの伝統、マルクス・レーニン主義の伝播などに加えて、半植民地化、冷戦といった中国をめぐる厳しい国際環境の下、何よりも国家建設が優先され、下からの国民国家形成を犠牲にしてきた政治状況が存在した*19。また、改革開放以降の中国は、党・国家体制を維持しながら、近代化政策によって政治社会の流動化、多元化が促進し、「限定された多元主義」を特徴とする「非全体主義、非民主主義的な政治システム」としての権威主義体制の特徴を備えた独自の政治体制が構築された(リンス、1995: 141-156)。本書では、現代中国の政治社会の動向を分析対象として政治統合の過程を考察することにより、中国における権威主義体制の社会的基盤の一端を明らかにすることを試みる。
3 本書の構成
本書は、序章、第1部「グローバリゼーションの制度化」(第1章)、第2部「都市ガバナンス」(第2?4章)、第3部「農村ガバナンス」(第5?6章)、第4部「中国型『国民』統合の試みと対外政策へのインプリケーション」(第7?9章)、終章から構成される。
第1部「グローバリゼーションの制度化」では、1992年の社会主義計画経済体制への移行により本格化するグローバリゼーションの国内社会への浸透、制度化の過程を考察した。
第1章「社会主義市場経済体制における所有権改革と基層社会の変容:物権法と転形期の政治社会」では、2007年3月に制定された「中華人民共和国物権法」の制定過程に焦点を当て、個人の私有財産の保護に代表される所有権改革、それが政治社会に与えた影響について考察した。物権法は、自由主義経済を構成する中核的な権利となる個人の私有財産の保護を謳っており、その制定は中国がグローバル経済に組み込まれつつあることを象徴し、グローバリゼーションの国内化、制度化の一つと位置付けられる。また、この結果、「社会主義の空洞化」をもたらしているのではないかという論議も国内外で巻き起こった。このような意味を帯びる物権法は、国内の政治社会にもさまざまな影響をおよぼし、とくに都市の社区における所有権問題としての業主委員会、農村の土地所有権問題としての土地収用とそれに伴う「上訪(陳情)」、集団的抗議行動の多発化の問題を検討した。
第2部「都市ガバナンス」では、都市部の基層社会を構成する社区に焦点を当てて、党・国家と政治社会の関係性の変化を考察した。
第2章「基層社会の再編と党の役割:都市の社区建設と政治・社会統合の試み」では、都市の社区建設の過程に関して、共産党の指導の役割と基層社会における政治・社会統合の試みを考察した。中国政府によるグローバリゼーションに対応した国内政策としての「小政府、大社会」への転換の試みは、都市の基層社会における多様な社区建設を促す一方、それに応じた党のリーダーシップのあり方を問うこととなった。とくに政治文化論の視点から、権威主義体制における「民意」を反映させる中国の伝統的な社会的資源、並びに共産党の統治の正統性とそこに内在する問題性を考察するとともに、社区建設過程において、民意を反映させながら党の指導を貫徹する試みを検討した。また、山東省青島市の事例をとりあげ、「一社区一党支部」の原則の遵守と社区内のネットワーク化に基づく双方向的な統治の実態を考察した。
第3章「都市の社区建設と社会管理:山東省の事例を中心に」では、胡錦濤政権期に再強調された社会管理に着目し、都市の社区建設の過程における社会管理の実態を考察した。2010年12月にチュニジアで起こった「ジャスミン革命」、それに続く「アラブの春」が中東諸国に広がるさなか、胡錦濤は、2011年2月に中央党校で行った指導幹部向けのセミナーにおいて、社会秩序の安定化を目的として、従来から実践されてきた社会管理の重要性を再強調し、その重点の一つとして、都市の社区建設の強化を掲げた。本章では、とくに、山東省青島市、煙台市の事例をとりあげて、社区工作ステーションによる公共サービスの提供、社区価格監督センターによるインフレに伴う社会不満の抑制、「区政府―街道弁事処―社区居民委員会―民間社会」の重層的な連携に基づく社会管理の効率化、「議行分設」による党・国家による管理権限の強化と住民自治の形骸化などの諸論点を考察した。
第4章「都市における流動人口問題と社会ガバナンスのとりくみ:北京市の事例を中心に」では、北京市の事例をとりあげ、都市における流動人口問題と社会ガバナンスのとりくみを考察した。とくに北京市で提起された「北京市“十三五"時期社会治理規劃」(2016~2020)のとりくみにより「一核多元」の社会ガバナンスが目指されたとともに、流動人口問題に関して、「党・政府―社区居民委員会―社区住民」の多元的なアクターによる対処が効果を発揮した一方、流動人口を社区の「新しい住民(新居民)」として受けいれる農民工の市民化は部分的にとどまり、「整治(整頓)」から「善治(良いガバナンス)」への転換による課題の解決が求められたことを指摘した。この結果、党・国家主導の社会ガバナンスは、国家建設を革新する一方、農民工の市民化の課題にみられる基層の政治社会の未成熟性は解決されず、国民国家建設の脆弱性は残されたままであることを明らかにした。
第3部「農村ガバナンス」では、農村部の基層社会のガバナンスの根幹をなす村民自治制度やアクターの問題をとりあげ、党・国家と政治社会の関係性の変化を考察した。
第5章「広西チワン族自治区における村民自治の制度化:周縁地域における国民国家の再編」では、広西チワン族自治区の事例をとりあげながら、1980年代以降の村民自治制度の導入の過程にみられる国民国家の再編の特徴を考察した。とくに「村規民約」、「村民自治章程」に焦点を当て、住民の生活習慣、規範意識に基づく非制度的な社会的資源の活用、法治システムの導入などの村民自治の多層性を検討した。また、「両委聯席会議制度」をとりあげ、村党支部と村民委員会の一体化が進み、党・国家体制が農村社会に浸透した側面を明らかにした。さらに、調査村は、(1)農村工業化が進まない農村社会、(2)人口の約95%がチワン族で構成された少数民族社会、(3)ベトナムと国境を接する辺境地帯に属するという点において、中国という国民国家の周縁地域としての特徴を有し、辺境地帯における多民族国家としてガバナンスのあり方にも示唆を与えた。
第6章「農村地域におけるアクターと統治の再編:『村官』政策の動向をめぐって」では、大学生を「村官」に任用する政策に焦点を当て、農村基層政権が多元化する政治社会を如何にして統合しようとしたのかを考察した。この政策は、2005年に、深刻化する「三農」問題に対峙して提起された「社会主義新農村建設」の一環として、「大学生村官計画」が全国に広まったことに始まり、本章では、2008年に江蘇省で決定された「一村一社区一名大学生」計画の事例をとりあげ、農村社会の統治構造の変化を検討した。大学生村官は、その専門的知識を活かして農民へのさまざまなサービスを向上させ、農村社会における中層レベルの非政治的・半政治的な新たなエリートとして、分化する傾向にある党・国家と農民との関係を仲介する役割を果たす一方、「村官」が広域行政システムにおける「郷官」へと転化する問題も生まれ、村民自治の行政化も進んだことを明らかにした。
第4部「中国型『国民』統合の試みと対外政策へのインプリケーション」では、ガバナンスの観点から現代中国の「公民社会(市民社会)」、民主制度、党の大衆路線などの動向をとりあげ、中国型の「国民」統合の試みと対外政策への示唆を考察した。
第7章「現代中国の国家建設と『公民社会』のガバナンス:市民社会・ボトムアップ型国家コーポラティズム・人民社会をめぐって」では、中国の国家建設の特徴、およびその過程で課題となった「公民社会(civil society)」の特徴を考察した。とくに、中国の国家建設の特徴を歴史的パースペクティヴの文脈に位置づける一方、基層社会における社区建設や党・国家主導の大衆路線(「群衆路線」)の動向をとりあげ、国家と社会を媒介する公共空間としての「公民社会」の形成を3つの径路、すなわち(1)市民社会、(2) ボトムアップ型国家コーポラティズム(国家/リベラル・コーポラティズム)、(3)人民社会として捉えて、複雑に混在する「公民社会」を論じた。また、これらは、中国の国家建設は社会との関係性から新たな方向性を模索する歴史的段階に入ったことを示し、国家建設だけに終始するのではなく、むしろ国民国家(nation-state building)建設へとその重点を移したことを論じた。
第8章「『協商民主』の展開と国家ガバナンスの再構築:基層社会の『民主懇談』、『郷賢参事会』を事例にして」では、胡錦濤政権において提起された「協商民主(deliberative democracy)」をとりあげ、「選挙民主(electoral democracy)」とともに構成される中国型民主主義が中国の政治社会に与えた影響を考察した。とくに2013年11月の党第18期三中全会において提起された「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」を契機として、ガバナンスの手段としての「協商民主」が中国社会に広まりつつあることを検討するとともに、その政治的、社会的な機能が国家ガバナンスにどのような影響を与えたのかを考察した。また、浙江省温嶺市の「民主懇談」、並びに同省徳清県の「郷賢参事会」の異なるパターンの事例をとりあげ、「協商民主」の多様な実践、およびその比較考察から垣間みえる民主とガバナンスの相関関係の特質を論じた。
第9章「習近平政権における国内政治の諸動向と対外政策へのインプリケーション:『人民』統合の過程を中心にして」では、リンケージ・ポリティックスの視点から、習近平政権における国内政治の諸動向とそれが対外政策に与えた影響を考察した。とくに習近平政権における大衆路線の政治過程をとりあげ、「人民」を権力の源泉に再定位して国民統合をはかり、それを梃にして党指導者層を引き締め、権力の一元化を推進する政治手法が、ポピュリスト的な権威主義体制を生み出した一方、「民心」を重視する政治手法により、民衆レベルのナショナリズムが対外政策に与える影響力を増す可能性を高めたことを検討した。その結果、グローバル・パワーとしての道程を歩む中国において、それとは対照的な政治社会の脆弱性に対峙しながら進める権威主義体制の再編の強化は、それが対外政策にも波及した場合、国際社会の共通ルールの形成との齟齬が構造的に深まることを示唆した。
終章「現代中国における社会ガバナンスと中国型の国民国家建設の行方」では、本書で明らかにした基層社会における社会ガバナンスの特徴を整理するとともに、中国型の国民国家の行方、並びにそれと表裏を成して構築される権威主義体制への示唆を考察した。具体的には、社会ガバナンスの特徴として、(1)アクターの多元化とネットワーク化、(2)アクター間の系統化、(3)「多元共治」から「一核多元」への転換、(4)公共サービスの充実化と自治組織の行政化、(5)社会関係資本の役割の高まり、(6)「網格化(グリッド化)」と情報科学技術の結合によるガバナンスの革新、(7)「善治」「善政」のスキームとガバナンスの正統性を提示した。また、社会ガバナンスの政治過程は、現代中国の政治課題が国家建設から国民国家建設へと重点を移したことを示唆する一方、党・国家体制に従属する政治社会の関係性に本質的な変化はみられず、その上に構築される権威主義体制の特徴と問題性を指摘した。
〈注〉
*1: 市場経済化は、愛国主義教育、国有企業改革、税・金融制度改革、政府機構改革、軍ビジネスの問題化、メディアの市場化、法輪功問題、単位社会の崩壊と社区建設、江沢民による「三つの代表」の提起、西部大開発などの多岐の領域にわたって影響を与え、中国の政治社会を根底から変容させた。川島・小嶋(2020: 127-149)。
*2: 「社会管理」の概念は、1993年11月に開催された党第14期中央委員会第22回全体会議(党第14期三中全会)の「社会主義市場経済体制を建立する若干の問題に関する決定」において、最初に用いられた。周(2018: 331)。また、Fewsmith(2016: 102-104)は、国内政治社会の安定性と正統性の追求という視点から「維穏(preserving stability)」の動向を位置づけた。
*3: ここでは、統合の方式の二つの相対立する理念的な形態として、構成員の自発的服従を求める「自治」、個々人の利害に犠牲と譲歩を要求する「統治」をあげ、現実の政治はたえずこの両極への指向を含みながら、ともにそれ自体における完結性をもたず、むしろ協調と妥協を繰り返して進行していると指摘する。有賀ほか(1994: 14-15)。
*4: 社会主義市場経済体制は、国家のマクロ・コントロールの下、市場が資源配分に対して基礎的作用を発揮することを可能とさせ、この目標を実現するため、公有制を主体とした多種経済要素の共同発展、国有企業の経営メカニズムの転換、市場経済の要求への適応、現代企業制度(明確な財産権と権限・責任、政府・企業の分離、管理科学に基づく制度)、全国統一の開放的な市場体系、都市・農村における市場の結合、国内市場と国際市場の相互連関などのさまざまな改革が進められた。「中共中央関于建立社会主義市場経済体制若干問題的決定(中国共産党第十四届中央委員会第三次全体会議一九九三年十一月十四日通過)」中共中央文献研究室(1996: 519-521)。デヴィッド・ハーヴェイは、このような中国の改革は、イギリスとアメリカが新自由主義的解決へと転換したのと同じ時に起こり、中国において、権威主義的な中央集権的統制と絡み合いながら新自由主義的な要素が組み込まれていく独特の市場経済が構築されたとして、「『中国の特色ある』新自由主義」と特徴付けた。これにより、郷鎮企業に代表される国有企業部門以外の外部のイニシアチブの高まり、「経済開放区」「沿海開放都市」を主とした外資導入による経済発展、不動産開発などが進む一方、それと表裏をなして、一部の特権層における富の蓄積、汚職の深刻化、労働者の超過搾取、農村部の土地収用などの社会的不平等が拡大したと指摘する。ハーベイ(2007: 169-211)。
*5: 「中共中央関于全面深化改革若干重大問題的決定(2013年11月12日中国共産党第十八届中央委員会第三次全体会議通過)」中共中央文献研究室(2014: 512)。
*6: 同上、中共中央文献研究室(2014: 539-540)。
*7: 胡鞍鋼(清華大学)らが参加した人民論壇(2014: 11-26)、並びに虞・唐(2015)は、「国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化」について、工業、農業、国防、科学技術に続く「第5の現代化」と位置付けた。
*8: 対外宣伝活動を担う党中央直属の中国外文出版発行事業局などが刊行する『中国関鍵詞』では、「国家治理体系和治理能力現代化」が「国家統治体系・統治能力の現代化」(104頁)、「共建共治共享的社会治理格局」が「共同建設・共同統治・共有を旨とする社会統治の枠組み」(293頁)とし、「ガバナンス」を意味する中国語の「治理」は、日本語で「統治」と訳出された。中国外文出版発行事業局ほか(2019)。しかし、これは「治理」と「統治」の意味の違いを不明確にし、同一視する危険性があるため、本書では、「治理」を「ガバナンス」として訳出した。他方、「ガバナンス」は、「統治」に含意される国家によるトップダウンの強制性を排除しておらず、「ガバナンス」は「統治」だけでは対処できない社会的領域の問題を扱う概念として捉えられる。その意味では、政治思想史の観点から、20世紀の終わりに、国家統治に限定された「統治」では対処できない社会領域の活動の活発化に伴い、国家の外にある「統治」の作用をあらわす概念として「ガバナンス」が注目されたことと同様に、中国においても、グローバル化を背景にした社会主義市場経済化の過程において、同様の問題が生じたと言える。政治思想史の観点からガバナンスを考察した研究として、宇野(2016: 21-40)を参照。
*9: 管見する限り、兪可平以外の国家ガバナンスに対する多様なアプローチを示す研究として、以下があげられる。(1) 清華大学国情研究院・胡(2014)は、政府・市場関係、国民経済・民営経済関係、中央・地方関係、ガバナンスに関する中国と米国の比較考察といった観点から国家ガバナンスの現代化を考察した。なお、本書は、清華大学国情研究院・胡ほか(2019)として、日本でも翻訳、出版された。(2) 北京大学国家ガバナンス研究院が中心となって公表した王(2016)、北京大学国家治理研究院(2017)は、兪可平が行った制度的考察に加えて、思想・理論、国際比較の視点が加わった。(3) 楊(2017)は、グローバリゼーションの契機を重視しながら、国家ガバナンス改革の国内政治社会に与える諸影響を考察した。(4) 燕継栄(2015)、孟・姚(2016)、許(2016)、張森(2017)は、国家ガバナンスの現代化において、社会関係資本、文化、徳治などの非制度的要因が与える影響や役割が考察された。(5) 楊・程(2017)は、国家ガバナンスの現代化に対して政治学が果たす役割を論じた。
*10: この点について、?(2014b: 5)では、社会ガバナンスは、社会管理をアップグレードしたものとして位置付けられた。
*11: 「政府・社会・市場」関係の相互調整がはかられた理由として、グローバリゼーションを背景にした市場経済化に内在する問題性があることは認識されなくてはならない。カール・ポラニーは、19世紀に入って出現した自己調整的市場が、財、サービス、労働、土地、貨幣を商品化し、社会を解体する「悪魔のひき臼(satanic mill)」の社会的機能を本質的に備えており、「市場」の上に「社会」を建設するための政策的対応の必要性を指摘した。ポラニー(2009: 58-231)。この点に関して、中国の社会主義市場経済化の過程における同様の問題に対処するための社会管理、社会ガバナンスの役割の重要性を指摘する中国の研究者も多い。たとえば、楊(2017: 222-223)は、ポラニーを参照しながら、現在の中国において社会を保護する社会管理の重要性を強調するとともに、現在の市場化がグローバルに席巻し、身体、土地、環境などのあらゆるものが商品化され、労働者の権利や社会権利が脅威に晒され、国家の社会を防衛する力が弱まることに対して、社会主導の社会管理への転換が必要であることを指摘した。なお、格差問題をはじめとして現代中国が抱える深刻な社会問題を批判的に検討したものとして、陳・春(2004)、阿古(2014)などがある。
*12: 社会ガバナンスの実践に伴い、法制度、情報通信手段、社会政策などの関連分野の動向にも関心が高まった。柴(2014)、陳(2016)、岳・鄧(2017)。
*13: 政治統合の概念を用いた中国政治に関する研究として、田中(2010)があげられる。ここでは、清末民国初期の近代的国家建設の過程における立憲制の導入、地方自治の実施、地域エリートの動向をとりあげ、それらの複合的な相互連関と相互作用を跡付けることによって歴史がある方向に展開するダイナミズムを明らかにした。
*14: 都市の基層社会における単位の解体と社区建設の紹介として、川島・小嶋(2020: 144-145)を参照。
*15: 北東アジアの地理的範囲について、宇野は、中国、日本、韓国、北朝鮮、ロシア、モンゴル、台湾とともに、この地域にプレゼンスが極度に大きい米国をあげる一方、歴史、政治、経済、社会、文化のいずれをとっても多様な局面が並存するこの地域において、従来の地域研究の発想に立って、統一的な「学」を打ち立てることは難しく、むしろ普遍的な観点に立ちながら、北東アジアの特徴を明らかにする必要性を指摘した(宇野、2012: 26-27、354-356)。なお、平野健一郎は、グローバル化時代の北東アジア学、そしてアジア地域研究の課題として、複数のレベルにわたって存在する人々が生活を営む地域の重層性、且つ国境や地域の境界を超える越境性をどう統合的に理解するかという論点を提示した。平野(2014: 259-260)。
*16: この論点に関して、宇野は、「西欧の衝撃」観を現代まで拡大させ、中国、米国、日本の比較考察を進めた(宇野、2012: 57-88)。
*17: 情念論については、ウォルツァー(2006)を参照。
*18: この点に関して、宇野は、ルシアン・パイの政治文化についての言及、すなわち「政治文化の観念は、その社会の伝統とか、その公的制度の精神とか、その市民層の熱情とか、みんなが納得する論理とか、指導者のスタイルや工作要領といったようなものが、たんなるバラバラの歴史的経験の産物ではなく、互いに意味のある全体の一部分として適合し、理解可能な諸関係の網を構成しているものではないか」という指摘をとりあげ、「これを先進国の発展途上国に対する見方の1つと過小評価し、広く情念論を中心に再整理することを怠ってきた」と述懐している(宇野、2012: 52)。宇野のルシアン・パイの政治文化論を用いた中国政治分析として、宇野(1980)がある。また、この論点を深めた政治学の先駆的な研究として、「基底構造論アプローチ」を提起した天児(1992、2018)がある。なお、この論点に関しては、他にも社会学、経済学、政治思想史などのアプローチによる考察が進められ、それぞれの代表的な研究として、首藤(2003)、加藤(2013)、李暁東(2018)などがあげられる。
*19: 厳しい国際環境の中で国家建設が優先されたという政治状況は、中国ばかりでなく、北東アジア全域に共通して顕著にみられる特徴である。Diamondほか(2016)において、中国、ロシアが「権威主義5大国」の構成国として位置づけられるとともに、北朝鮮が独裁的な政治体制を堅持し続けている状況をみると、北東アジアは、権威主義の影響が世界的に最も強い地域の一つとして捉えられる。なお、アジア諸国の国家建設の過程を比較考察した研究として、岩崎(2014)がある。
- あ行
- アクター 49, 129, 227
- ―の系統化 266
- ―の水平的ネットワーク化 202, 266
- ―の多元化 67-68, 121, 137, 163-164, 177, 265-266
- グローバル・― 233, 239, 259
- 社会的― 271
- アジア
- 東南― 141-142
- 北東― 34-35
- 北東―学 21-23
- 新しい住民(「新居民」) 127, 130
- 新しい中世 277
- 天児慧 35, 231
- 維穏(preserving stability) 11, 31
- 維権 195-199
- ―核多元 123, 129, 133, 267, 271
- ―社区一党支部 84, 86
- ―村一社区一名大学生計画 171, 177
- ―帯一路 234, 239, 255-256
- ―党多元主義 89
- 以党代政 160
- 烏坎村 53, 186
- 宇野重昭 21-24, 69, 191, 220
- 王紹光 206
- アクター 49, 129, 227
- か行
- 外交
- 自己主張的(assertive)― 235
- 周辺― 239, 255
- 大国― 239
- 街道弁事処 94, 100, 196
- 下崗 65, 92
- ガバナンス(「治理」) 12-13, 32-33, 218, 229
- 合作型国家―による実質的公共性 223
- 管理型国家―による形式的公共性 223
- 協商―(「協商―」、deliberative governance) 278
- 共同建設・共同―・共有を旨とする社会―の枠組み(「共建―共享的社会―格局」) 15, 18
- 共同の話し合い・共同―(「共商―」) 120-121
- 国家― 214, 218, 223, 228
- 国家―体系と―能力の現代化 12, 14, 129, 214, 217-219, 234
- 社会― 14-18, 113, 116, 118, 120, 129-130, 265-269, 271, 276
- 熟人(顔見知り)― 227
- 党の社会― 123
- 微視的な社会―(「社会微―」) 123, 270
- 法治、徳治、自治の三位一体による社会― 225, 268
- 民主的― 14
- 面子(メンツ)― 227
- より少ない統治とより多くの―(「少一些統治、多一些―(less government and more governance)」) 13
- 川島真 234, 277
- 官民パートナーシップ 95
- 官僚制 187-191
- 官僚政治の競合 236
- 議行分設 105, 107, 268
- 基層群衆性自治組織 94
- 基層社会 22, 159, 265
- 郷官 177-178
- 郷賢 224-226, 229, 268
- ―参事会 224-225, 227, 229, 266, 268-269
- ―文化 226
- 共産主義革命 191
- 業主委員会 49-50, 75, 101, 104-105, 196-197, 199-201, 266
- 居住の政治 198
- 居民委員会 47, 94
- 勤倹・節約を厳格に実行し、派手な浪費に反対する 241
- 近代化 111, 187
- グローバリゼーション(グローバル化) 11, 13, 17, 20, 23, 33, 42, 67, 86, 97, 248, 265, 271, 277
- ―の国内化 12
- 権威主義 35, 74, 238, 278
- カスケード型― 277
- 協商型―体制(consultative authoritarianism) 223-224, 228-229, 231
- ―体制 25, 235, 270, 274-276
- 断片的―(fragmented authoritarianism) 277-278
- ポピュリスト―体制(populist authoritarianism) 252, 256, 259, 278
- 民意に呼応する―(responsive authoritarianism) 277
- 江蘇省 168, 170-171, 173, 175, 220
- ―北部(蘇北) 173-174
- ―揚州市 174, 176
- ―連雲港市 173
- 江沢民 70-71, 93, 229, 237, 251, 262
- 公のために立党し、民のために執政を行うことを堅持する(「立党為公、執政為民」) 72, 193
- 公民社会(civil society) 50, 95, 186, 194-195, 208, 272
- 胡錦濤 55, 72, 89, 92, 96, 108, 117, 214, 237, 241
- 五険一金 116, 125
- 国家
- ―建設(state building) 185-187, 207
- ―資本主義 185
- ―・社会関係(state-society relations) 69, 190
- ―と社会の共棲関係(symbiosis) 69, 209
- 「強い―・弱い社会」「強い―・強い社会」 273
- 半―/半社会 69, 88, 209
- ボトムアップ型―コーポラティズム 202, 207-208, 272
- 国分良成 108, 237, 262
- 国民
- 欧米諸国の―統合 249
- ―国家 158, 159-160, 277
- ―国家建設(nation-state building) 23, 113, 130, 186, 271, 273
- ―統合 258
- 中国型―国家 23, 248, 265, 271, 273-274
- 外交
- さ行
- 最後の1キロメートル(「最後的一公里」) 245, 268
- サルトーリ, ジョヴァンニ 89
- 産業革命 111, 131
- 三厳三実(厳以修身、厳以用権、厳以律己、謀事要実、創業要実、做人要実) 250
- 山東省 77-78, 98
- ―煙台市 98, 104-106
- ―青島市 79, 84-85, 98, 100, 106, 199-200, 269
- 三農(農村、農業、農民) 166, 170, 174, 179
- 三乱(乱収費、乱罰款、乱攤派) 246
- 市場経済化 31
- 七不講(七つの語ってはいけないこと) 252, 255
- 失地農民 51-55
- ―社会保障条例 54
- 四風 243, 247
- 市民社会 198-199, 202, 207, 210, 223, 272
- 社会関係資本(social capital) 220, 225-227, 252, 268-269
- 社会管理 11, 17, 20, 31, 92-93, 96-97, 107-108, 113, 129
- 社会主義 241
- ―核心価値観の育成と実践に関する意見 226, 255
- ―現代化強国 12, 248, 255, 259
- ―現代化建設 247
- ―市場経済体制 39
- ―新農村建設 169
- ―の空洞化 41
- ―路線 248
- 新時代の中国の特色ある― 248, 255, 259
- 社会治安 145-146
- 社区 50, 116
- ―価格監督センター 102-103, 107
- ―協調理事会 199-200, 202, 266
- ―居民委員会 50, 75, 81, 97, 100-102, 104, 106, 196, 199-201
- ―居民委員会主任97, 100, 105-107
- ―居民委員会選挙 85, 89
- ―居民委員会の教育・宣伝活動 125
- ―居民代表会議 126
- ―建設 65-66, 75-78, 91-93, 195, 266
- ―工作ステーション 105, 268
- ―工作ステーション主任 106-107
- ―党委員会 79, 81
- ―党委員会書記 97, 100, 105, 107
- ―党務公開制度 85
- ―の治安 126
- ―の「三位一体」のガバナンス・メカニズム 119, 267
- ジャスミン革命 97
- 上海市 195-197
- シャンボー, デイビッド 211
- 私有財産 40, 49-50, 56
- ―保護 43, 197
- 周縁 141-142, 159
- 習近平 188, 193, 202-203, 205-206, 208, 211, 214, 217, 224, 226, 233, 235, 239-240, 242, 244, 250-251, 253-256, 278
- ―による新時代の中国の特色ある社会主義思想 240
- 集団的抗議活動(「群体性事件」) 53
- 儒教 188-189
- 情感 89
- 小康社会 47
- 小政府、大社会 49, 67
- 城中村 112, 116
- 情念(passion) 24
- 上訪(陳情) 52, 78, 230
- 所有権(property) 75, 198
- ―改革 197
- ―問題 40, 48-49
- 人口管理 112
- 新左派 59
- 新自由主義
- ―者 59
- 「中国の特色ある」― 32
- 新常態 208, 229
- 人治 40, 45, 57, 196, 276
- 人民 240, 247-249, 253, 256, 258-259
- ―社会 206, 208, 272, 275
- 「―」統合 235, 240
- 「―」に根差した国民統合 240, 249
- 「枢軸型」社会組織工作体系 119, 267
- 政治
- ―エリート間の権力闘争 237
- ―エリートの認識 238
- ―統合 11, 19-20, 34, 265, 271
- ―と道徳の未分離 205
- ―文化 74, 89, 191, 220, 253
- 非―的・半―的なエリート 165, 174-175
- 政府管理 112
- 「政府・社会・市場」関係 18, 33
- 浙江省
- ―温嶺市 217, 221, 273
- ―湖州市徳清県 224, 227
- 全国人口センサス 46
- 善政(good government) 73, 192-193, 270-
- 271, 275
- 全体主義 70, 189, 192, 253
- 全体的な政治(totalist politics) 253
- 善治(good governance) 73, 128, 192-193, 270-271, 275
- 孫歌 210
- 村官 168-169, 266
- 大学生― 171-179
- 村規民約 145, 147-148, 158, 269
- 村党委員会 155, 157
- 村民委員会 47, 94, 144, 149, 155, 157, 161
- 合寨村― 144-145, 269
- 江蘇省―選挙弁法 157
- ―組織法 148, 153
- ―直接選挙 48, 150-152
- ―直接選挙の海選選挙 152
- 村民自治 138, 148, 159
- ―章程 148-149
- ―制度 142-143, 147, 167
- ―と五戸連保 147
- 村民代表大会 153
- 村務公開 153
- た行
- 大一統 189, 226
- 第5の近代化 32
- 高原明生 88, 191, 260
- 多元共治 121, 129, 267
- 田原史起 19, 165
- 単位 76, 92
- 非―人 115
- 地方政府の財政収入 52
- 中華人民共和国民法総則 58
- 中国共産党 68-70, 191
- ―員 97
- ―員に対する綱紀粛正 204, 206, 250
- ―員の大衆への奉仕 204, 245, 267
- ―員の道徳意識 203
- ―第11期中央委員会第5回全体会議(党第11期五中全会) 243
- ―第14期中央委員会第3回全体会議(党第14期三中全会) 31
- ―第14期中央委員会第6回全体会議(党第14期六中全会) 93
- ―第16期中央委員会第4回全体会議(党第16期四中全会) 77, 95, 167
- ―第16期中央委員会第5回全体会議(党第16期五中全会) 169
- ―第17期中央委員会第3回全体会議(党第17期三中全会) 170-171
- ―第18期中央委員会第3回全体会議(党第18期三中全会) 12-14, 117-118, 129, 214, 217-219, 230, 254, 261
- ―第18期中央委員会第5回全体会議(党第18期五中全会) 211
- ―第19期中央委員会第5回全体会議(党第19期五中全会) 276
- ―中央委員会(中共中央)による改革の全面的な深化に関する若干の重大問題の決定 12, 214, 217
- ―中央委員会(中共中央)による人民政治協商の工作を強化する意見 214-215
- ―中央委員会(中共中央)による党の執政能力建設を強化する決定 77, 167
- ―中央社会治安綜合治理(ガバナンス)委員会 115
- ―と大衆関係 202, 205, 234, 241, 249, 261
- ―の指導(「領導」) 191, 193, 202
- ―の指導(「領導」)の核心 69-71, 191-192
- ―の大衆路線 204-205, 208, 234, 250, 258-259, 274
- ―の大衆路線教育実践活動 203, 241-247
- 中国の夢 234, 248-249, 253, 255, 258
- 中国模式 185, 253
- 頂層設計 254
- 朝陽東、夕陽紅、巾幗文明(子供の成長、お年寄りの活躍、女性の貢献) 79
- 張廖年仲 236
- チワン族 140, 158
- 広西―自治区 138-139, 141-142, 158-159
- 陳家鋼 215
- デジタル・レーニン主義 270
- 「同意」の形成と「強制」 11, 20
- 討議デモクラシー 216-217, 224
- 党企分離 157
- 党・国家体制 20-21, 25, 74, 193, 202, 205, 265, 271, 274, 276-277
- 党政分離 157
- 統治 13-14, 32-33, 41, 186, 218
- ―原理 56
- ―構造 142, 168, 173, 177
- ―能力 77, 158, 164, 166-168, 173-174, 178, 234
- ―の正統性 42, 68, 70-71, 74-75, 86, 192-193, 205, 208, 237, 247, 275
- ―の脆弱性 234
- 徳治 80, 227
- 都市化 131
- 土地収用 51-53
- 土地使用権の売買 60
- な行
- ナショナリズム 234, 237, 253
- 民衆― 257-258
- 日中関係 254, 256
- ―の歴史問題 256-257
- ネポティズム 227, 269
- 農村企業執行官 172-174, 178
- 農民工 104, 112-115, 165
- ―の市民化 117-118, 128-130, 132
- ―の社会保障 116
- 農民負担問題 153, 164
- ナショナリズム 234, 237, 253
- は行
- パイ, ルシアン 34, 220, 230
- 薄熙来 212
- 八項規程 241
- ハーバーマス, ユルゲン 216
- バラーシュ, エチアヌ 187-189
- 潘維 185, 253
- 費孝通 54, 220
- 菱田雅晴 19, 69
- 人をもって基本とする(「以人為本」) 89
- 平野健一郎 34
- フィッシュキン, ジェイムス 217, 223, 230-231
- 物権法 39-42, 44, 49, 55-58, 197-198
- ―草案 43, 45, 59
- 腐敗
- 反―運動 188, 204, 234, 250
- ―問題 53, 251
- 文人官僚 188
- 北京市 118, 133
- ―“十三五"時期社会治理規劃 119, 266, 269
- ―朝陽区和平街街道 112, 122
- ―の義務教育 127
- ―の大衆性の団体組織 132
- ―の都市と農村の接合部 124
- 法治 40, 45, 57, 196, 227
- ―の脆弱性 276
- 法を以って抗争する(以法抗争) 196
- ポラニー, カール 33
- ま行
- マンション管理会社(「物業管理公司」) 50, 199-201
- 三つの代表 41, 43, 56, 71, 192
- 民意 70-73, 271
- ―箱 85, 87
- 民主 215
- 価値としての―主義 217
- 協商―(deliberative democracy) 213-221, 224, 228-229, 272-273
- コンセンス型― 218
- 社会主義協商―の建設の強化に関する意見 219
- 社会主義― 215, 272
- 手段としての―主義 217
- 選挙―(electoral democracy) 213, 215-217, 224, 228-229, 272
- 多数決― 218
- 中国型― 216
- ―懇談 217, 221-224, 228
- ―生活会 242
- ―制度 213, 271
- 民情室 85, 87
- 民心 192, 205, 249, 251, 256
- 民法典 40, 42
- ムーアJr. , バリントン 190-191
- 網格(グリッド) 82, 86
- 北京市東城区の「万米単元―城市管理新模式」 269
- ―化 122, 269, 277
- ―化管理計画 84
- ―化+行動計画 122, 133, 270
- 毛里和子 19, 69, 277
- 盲流 112
- や行
- 兪可平 13, 73, 216, 218
- 四つの合意 254
- 四つの自信 226, 255
- 四つの全面 206, 234, 247
- ―の「全面的な厳しい党内統治」 251-252, 255
- ら行
- 李君如 249
- 離土離郷 54
- 流動人口 104, 111-113, 121, 123-124
- ―の子女 127
- 両委聯席会議制度 156, 158, 160
- 両学一做(学党章党規、学系列講話、做合格党員) 250
- リンケージ・ポリティックス 234-235
- リンス, ホアン 25, 274
- 隣里(隣近所) 82-84
- ―協会(―協会) 100
- ―中心(―センター) 79, 82, 100, 106, 267
- 楼組党建 84, 86
- ロック, ジョン 198
- わ行
- 和諧社会(調和社会) 55, 167