刑事手続における検察の権限: 日本と中国
一橋大学法学研究科と中国人民大学刑事法律科学研究中心、中国刑事訴訟法研究会は、日中刑事訴訟法国際シンポジウムを毎年開催し、本書は2022年度開催の「刑事手続における検察の権限」を土台にしており、刑事司法実務の改革に一石を投ずる。(2024.3.10)
定価 (本体6,000円 + 税)
ISBN978-4-87791-328-1 C3032 331頁
- まえがき王雲海
- 第1章 検察官の役割: 日本の検察制度川崎英明
- コメント: 王敏遠(方海日訳)
- 第2章 中国憲法における検察機関陳衛東(方海日訳)
- コメント: 笹倉香奈
- 第3章 人民検察院と公安機関の関係の発展と展望劉計画(何琳訳)
- コメント: 本庄武
- 第4章 検察官と警察官の関係: 指示権・指揮権を中心に白井諭
- コメント: 顧永忠(何琳訳)
- 第5章 捜査構造論: 検察官の権限に着目して田淵浩二
- コメント: 卞建林(何琳訳)
- 第6章 検察一体と検察官独立の関係について熊秋紅(方海日訳)
- コメント: 緑大輔
- 第7章 公判中心主義と起訴基準葛野尋之
- コメント: 龍宗智(方海日訳)
- 第8章 中国の起訴前の身柄拘束の実証分析: 被疑者の逮捕を中心に孫長永(劉文雯訳)
- コメント: 酒井智之
- 第9章 中国の未成年者事件の捜査、公訴における検察機関の権限と役割宋英輝(何琳訳)
- コメント: 本庄武
- 第10章 検察審査会の意義と課題新屋達之
- コメント: 姚莉(何琳訳)
- 第11章 検察官の異なる検察院間の配転についての障害と対応龍宗智(何琳訳)
- コメント: 渕野貴生
- 第12章 刑事事件に係る財物の追徴における検察権閔春雷(劉文雯訳)
- コメント: 緑大輔
- 第13章 検察官の権限はどうあるべきか: 実務の変化と構造転換の可能性高平奇恵
- 第14章 中国の「認罪認罰従寛制度」の研究: 「超行政的訴追側職権糾問式刑事司法時代」の到来か王雲海
- 執筆者一覧
- 索引
執筆者一覧(掲載順)
- 川崎英明 関西学院大学名誉教授
- 王敏遠 浙江大学教授
- 方海日 河南財経政法大学講師
- 陳衛東 中国人民大学教授
- 笹倉香奈 甲南大学教授
- 劉計画 中国人民大学教授
- 何琳 北京師範大学講師
- 本庄武 一橋大学教授
- 白井諭 岡山商科大学教授
- 顧永忠 中国政法大学教授
- 田淵浩二 九州大学教授
- 卞建林 深圳大学教授
- 熊秋紅 中国政法大学教授
- 緑大輔 一橋大学教授
- 葛野尋之 青山学院大学教授
- 龍宗智 四川大学教授
- 孫長永 上海交通大学教授
- 劉文雯 一橋大学博士後期課程・中国弁護士
- 酒井智之 一橋大学専任講師
- 宋英輝 北京師範大学教授
- 新屋達之 福岡大学教授
- 姚莉 中南財経政法大学教授
- 渕野貴生 立命館大学教授
- 閔春雷 吉林大学教授
- 高平奇恵 一橋大学准教授
- 王雲海 一橋大学教授
まえがき
2018年以来、一橋大学法学研究科は、中国人民大学刑事法律科学研究中心、中国刑事訴訟法研究会とともに、一橋大学中国交流センターの後援も得て、1年1度「日中刑事訴訟法国際シンポジウム」を開催している。初回のテーマは「刑事司法の改革」(2018年度)で、それ以後は「誤判の発見と救済」(2019年度)、「刑事訴訟における公判中心主義」(2020年度)、「刑事訴訟における訴追と公判」(2021年度)、「刑事手続における検察の権限」(2022年度)であった。本書は、2022年度のシンポジウムである「刑事手続における検察の権限」での報告、コメントを主な内容に、新たに書き下ろした2つの章をつけ加えて、書籍化したものである。
現代の世界は波乱万丈の時代である。国際関係も混沌多変の状態にある。このような不安定で不確定の時代と状況のなかで、異国の刑事法研究者同士が「刑事司法・刑事手続・刑事訴訟」という極めて重要な問題をめぐって、長期にわたって、地味でありながらも検討と交流を続けていることは、刑事訴訟法などの理論研究だけでなく、刑事司法実務の改革にとっても深い意義があると思われる。ここでは、これまでご報告、コメントなどの形でシンポジウムの開催を支え続けて下さった日本側の先生方々、中国側の先生方々、通訳・翻訳をして下さった方々、事務を担当して下さった方々に対して、改めてお礼を申し上げる。また、併せて、今後とも引き続き宜しくお願い申し上げる次第である。
近年、いわゆる電子書籍が大変流行っているが、私のような世代の人間にとっては「出版物」、「本」というと、あくまでも紙媒体のようなものであって、紙媒体こそ本当の本であると思う。紙媒体が永遠に消えないように祈る日々である。このような時代の流れのなかで、あえて紙媒体の本の出版を支持、支援して下さった屋敷二郎一橋大学法学研究科長をはじめとする法学研究科の皆様に感謝申し上げる。何より、いつもご配慮を賜り、今回も本の出版をご快諾下さった国際書院の石井彰社長に対して深い感謝の意を表したい次第である。
2023年11月22日
王雲海
- あ行
- 意見徴集 275
- 一号検察提案 165
- 一般監督 25
- 一般的指揮権 60
- 一般的指示権 60
- イノセンス・プロジェクト 39
- 入口支援 220
- か行
- 階級闘争論 241, 243, 304, 319
- 核心司法 214, 215
- 過渡型拘留 130
- 寛厳相済 19, 245, 248, 249, 295, 296, 297, 300, 306
- 監察拘留 129, 130, 131, 136
- 監察留置 129, 130, 131, 136
- 疑似当事者主義 74, 223
- 起訴基準 111-121, 179, 226
- 起訴審査権 29, 36
- 起訴独占主義 74
- 起訴便宜主義 74, 79, 108, 222, 223, 225
- 起訴法定主義 225
- 起訴率 101, 113
- 客観義務 9, 11, 19, 63, 107, 126, 221
- 求刑権 262
- 糺問主義的検察官司法 173
- 糺問的捜査観 75, 224
- 糺問的訴追構造 173, 179
- 供述証拠 228, 288, 289
- 強制起訴 171, 175, 176, 177, 186, 187
- 具体的指揮権 53, 60
- 繰り上げ介入 43, 44, 45
- 経済中国 240, 243
- 警察司法 61
- 刑事拘留 46, 129, 130, 131, 134, 148, 149, 150, 151
- 刑訊逼供罪 287
- 検察・警察同一体 49, 50, 51, 52, 53
- 検察委員会 85, 97, 102, 104
- 検察院間の配転 189
- 検察官先議 169
- 検察官適格審査会 211
- 検察官同一体原則 106, 196, 197
- 検察官統一調達使用制度 105
- 検察官独立原則 106
- 検察審査会 16, 171, 172, 175, 176, 177, 179, 180, 181, 186, 187
- 検察長責任制 85
- 検察の在り方検討会議 12, 14, 217
- 検察の民主化 8, 218
- 検察の理念 62
- 検察ファッショ 15, 173
- 言辞証拠 289, 290
- 権力社会 239, 310
- 公安派出所 46
- 公益訴訟 30, 33, 35, 93, 94, 165, 167, 168, 191
- 公益の代表者 12, 54, 62
- 抗拒従厳 241, 242, 245, 281, 283, 299, 300, 301, 302, 303
- 公訴部門 205
- 公判専従論 9, 55
- 公判中心主義 112, 115, 125, 179, 219, 224
- 勾留・公訴一体化 94, 105
- 勾留率 101, 231
- 国家訴追主義 38
- さ行
- 裁判員裁判 214, 215, 216, 217, 219, 220, 229, 230
- 財物の支配可能性 201
- 三極的構図 315
- 三三制 44
- 三性説 288
- 自訴事件 42
- 自白の誘引 284
- 司法解釈権 87
- 司法責任制 85, 97, 102, 104
- 社会体制 240
- 社会特質 239
- 従簡従快 244
- 従重従快 242
- 準司法審査権 203
- 証拠力 287
- 少年審判 169
- 証明力 287, 288
- 初期拘留 129
- 人大常務委員会 189, 191, 192, 193, 194
- 審判中心主義 246
- 人民監督員制度 186, 187
- 政治中国 240, 241
- 精密司法 111, 112, 114, 116, 117, 121, 173, 214, 215, 223
- 専案組 242
- 全件送致主義 168
- 先定後審 242
- 捜査監督部門 205
- 捜査構造論 73, 75, 77, 81, 224
- 捜査拘留 130, 131, 135
- 捜査指揮権 29
- 捜査中心主義 70, 78, 112, 125, 126, 180
- 捜査モデル 42, 82, 149, 153
- 即時執行死刑 309
- 訴訟的構造論(訴訟的捜査構造) 77, 107, 224
- ソビエト国家 31
- た行
- 大陪審(起訴陪審) 172, 174, 181, 211
- 多価値論理 27
- 弾劾的捜査観 74, 75, 76, 115, 125, 179, 180, 219, 221, 222, 223
- 弾劾的訴追構造 179-180
- 坦白従寛 241, 242, 245, 281, 283, 299, 300, 301, 302, 303
- 中国海警局 42
- 懲弁与寛大相結合 242, 283, 300
- 追徴 206
- デュー・プロセス 10, 11, 63, 107,
- 転化型拘留 130, 131, 135
- 独自捜査権 87
- 取調べの高度化 227
- 取引協商 275
- な行
- 二極的構図 315
- 二重指導の法制論 30
- 二性説 288
- 二年猶予付き死刑 309
- は行
- 被疑者国選弁護 212, 214, 217, 218
- 被疑者取調べの適正化 118, 119
- 非刑罰化 316, 318
- 非犯罪化 316, 318
- 不起訴率 161
- 付審判制度 174
- 法治中国 240, 244
- 法務大臣の指揮監督権 15
- 法律監督権 22, 23, 25, 31, 86, 87
- 法律監督権 38-39
- 法律諮問 273, 274, 275, 276
- 法律道具論 243, 305, 319
- 補充捜査 142, 267
- 没収 206, 207, 208
- 没収保全措置 207
- ま行
- 身柄拘束率 154
- 未検専項報告 161, 162, 164
- 未成年者事件 157
- 未成年被害者保護 162
- 無罪判決率 161
- ら行
- レーニン 23, 30, 31, 38
- 連合国軍総司令部(GHQ) 59, 114, 174, 175, 211
- 連合弁公 241
- 六号検察提案 167